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その144

今回はちょっと変わった試み、と言うか何と言うか……

いつもとはちょっと違う書き方です。

 さて、シアさんグループの捜索開始だね。まずはいつもの野菜と果物のお店、八百屋さんだね。

 苺とオレンジジュースの在庫は決して切らさない、が家の決まりになっているらしいとても素晴らしい青果店だ。苺って年中収穫できるのかな……? 多分ハウス栽培に近いものがあるんだろう。お値段は結構高めだけれど、お店の看板商品になっているみたい。いつの間にか王家御用達にされちゃってて大変だね。

 そういえば少し前に代替わりをしていた。今では息子さんが店主として毎日大きな声で元気よくお客さんの対応をしている。私が十歳の頃から通っているお店なのでかれこれ十年以上のお付き合いだ。

 店を継がせたいご両親と、冒険者になりたい息子さん、三人ともから散々愚痴を聞かされていたね……、主にシアさんが。多分美人さんを引き止めてお話したかったんだろうと思う。

 結局息子さんはこの町で好きな女性が出来て結婚してしまって、冒険者を目指す事はすっぱりと諦めてしまったんだけどね。ふふふ、いい事だと思う。



「いらっしゃ、おお! シラユキ様にルーディン様!! いらっしゃい!! 相変わらずちっちゃくて可愛いなあ……、俺も早くこんな可愛い孫が欲しいんだが……なあ!?」


「うるせえよクソ親父が!! 店の経営覚え切るまで子作りはするなっつったのはてめえだろが!!」


「だから早く覚えろってんだ! いやあ、まったく、出来の悪い息子で困りますわ! はっははは!!」


「ったく、とっとと引退しやがれ……。ああ、すんません。え? あのメイドさん? ええ、確かに来ましたよ。野菜やら果物やら色々買って行って貰いました、ありがとうございます。……は? えーっと、オイ親父、どこに行ったか聞いてないか?」


「ん? おお、あー、聞いたは聞いた筈なんだが……、どこだったかな?」


「ボケんのは早えぞおい」


「未だに勘定間違う奴にゃあ言われたくないわ。まったく、憎たらしい口だけは一人前で……、おお? そうだ! 肉だよ肉!! 確かあのでっけえ兄ちゃんが肉だのなんだの言ってた気がするわ。多分エイハブんとこに行ったんじゃないですかね?」


「あー、あの人でかかったよなあ。もう一人の女の人も、ああ、そっちの綺麗なメイドさんくらいの高さで……、? うお!? こ、この人って祭ん時エネフェア様の隣にいる……」


「今更気付いたんかよオイオイ……。ボケてんのはどっちだ?」


「うるせえ! うおー、近くで見るとすっげ美人……」


「あの子に言うぞ?」


「おいやめろ!! 輪切りにされちまう!」


「くっくくっ、確かにあの子ならそんくらいやれそうだなあ? カボチャをバターみてえに、ん? ああ、コイツの嫁さん元冒険者でね、うん? 使っている包丁に興味が? おお、やっぱメイドさんだねえ、やっぱそういうのには興味が……」


「そうだそうだ! シラユキ様、これ持ってってくださいよ。ほら、これこれ! 俺が作ったオレンジジュース、やっと店に出せるまでになったんスよ。まあ、親父の味には敵いませんがね、混ぜる分量でどうしてそんなに差がでるんだか……。ああ、これは自分では中々の……」



 むう、また入れ違いだったか。ああ、多分クレアさんはカボチャをバターみたいに切るっていう刃物に興味があるんだと思うよ……

 ガトーさんらしき人の情報は、クレアさんと同じくらいの身長、と。ふむふむ。背、高いんだね、羨ましいなー、憧れちゃうなー。

 しかし、でっかい兄ちゃん? 誰だろう? 荷物持ちに誰か冒険者の人を拉致したのかもしれないね、うんうん。シアさんなら充分にありえる話だ。

 まあ、いい。次は精肉店だね。私はあんまり、というか殆ど行った事無いんだよね。兄様はよくお肉を買いに行っているらしいから任せてしまおう。




 お肉屋さんの店主さんは普通の人間の人だが、奥さんは綺麗な犬族の獣人お姉さん。お姉さんって言ってももう四十は過ぎてる筈なんだけど、全然そうは見えない。垂れたイヌミミが可愛らしいお姉さんだ。

 この人もさっきのお話に出て来た奥さんと同じで元冒険者。いつもお腹を空かせてフラフラしてたところを、旦那さんが毎回見つけては家に連れ帰って売れ残りのお肉とかを食べさせていたのが馴れ初めらしい。野良犬にエサを与えていたら懐かれました、っていう感じだね。し、失礼な考え方だったかも……

 この人は胸が普通より少し小さめかな? 兄様のターゲットにはならなさそうで安心だ。さすがに人妻には手は出さないと思うし……、あれ? フランさんも人妻だよね、たまに食い入るように見つめてるよね。……信じてるよ兄様!



「あら? ルーディン様、いらっしゃいませ。今日はクレアさんがお供ですか? それに、珍しい、シラユキ様まで! お祭りの予定でも? 主人を呼びましょうか? え? ええ……、娘が一緒に風呂に入ってくれないと拗ねてしまっていまして……、ふふふ。シラユキ様はそんな事とは無縁そうで……、はい? バレンシアさんですか? ええ、つい先ほどまでいらっしゃいましたけど……、はい、お連れの方にせがまれていくつか買って行かれましたよ。ふふ、まるで親子の様でしたね、あ、今のは内緒にしておいてくださいね? ……どこへ、ですか? すみません、そこまでは……。でも、休憩をして行こう、と話されていましたよ。竜人族の女性の方がケーキが……、とか呟かれていましたね。ふふ、キリッとした顔立ちの方でしたけど、やっぱり女性ですね、甘い物はお好きなんでしょうね。ああ! 甘い物と言えば……、シラユキ様、これをどうぞ。ええ、娘の焼いたクッキーなんです! え? あ、いえいえ、お菓子作りが趣味なだけで別段大切な物という訳ではありませんから。毎日作りすぎて困ってしまっているくらいで、お店に並べようかととも思って……」



 またしても入れ違い! ぐぬぬ……、私の歩く早さが遅すぎるのか!? こうなったら次は走って行くか! はしたない、やめておこう……

 しかし娘さん手作りのクッキー、貰ってしまってもよかったんだろうか? まあ、毎日作りすぎてるって言ってたし、余って捨てられちゃうよりはいいよね。今度味の感想を伝えに来なきゃね。ふふふ、純粋に嬉しいね。


 ここで手に入ったガトーさん情報は、キリッとした顔立ちで甘い物好き、と。ふむ、甘い物好きに悪い人はいない、安心だ? いるよ……、甘い物好きな悪い人もきっといるよ……

 後、お連れの方にせがまれて? キャロルさんがお肉を買ってー! ってせがんでいた? う、うーん……? せがんでいる姿は簡単に想像が付くけど……、何故お肉?

 まあ、これもいいや、会えば分かる事だろう。次に向かったのはどこかな? まあ、多分いつものケーキ屋さんだと思うけどね。




 喫茶、軽食のお店、『転ぶ猫』。可愛いのか可哀相なのかよく分からない店名だね……

 この世界はお店に名前が付いている事の方が珍しいんだよね、なんでだろう? 例えばさっきのお肉屋さんはオーティの精肉店、八百屋さんの方はカスケンの青果店、みたいに店主の人の苗字がお店の名前になるのが普通なのだ。

 でも、その方が代々続いてるっていう感じがしていいと思うけどね。あ、まさかそれが答えか!? ……ラルフさんの実家の宿屋さんにも名前が付いてたな……、違いそうだ。

 考えてもしょうがないか、そこまで気になるって事でも無いし、明日には忘れているだろうと思うしね。


 このお店も十歳の頃から通い続けているね。もう完全に常連客の一人になっている。

 苺好きの私のおかげで、メニューの半分近くが苺関係になってしまっている最高に素晴らしいケーキ屋さんだ! シアさんがレシピを提供している商品もいくつかあるらしい。まあ、苺とオレンジが入ってるのは大体そうなんだろうと思うよ。

 マスターさんはエルフの男性の人。なので、代替わりもせずにずっとお付き合いしていけるので安心だ。年々増えていくメニュー、上がっていくお菓子作りの腕が楽しみでしょうがない。



「いらっしゃいませー! 『転ぶ猫』へようこ、そ? あれ? シラユキちゃんじゃない。うん? 私はお仕事よ、雑務依頼。ふふふー、どう? 似合うでしょ、これ。私くらい胸があると見栄えよくなるよねこの制服。まあ、ちょっと胸が開いちゃってて恥ずかしくはあるんだけど……、あ! ルーディン様!? やばっ、馴れ馴れしくしてるところ見られちゃった!? あー、そのー、ええと……、揉みます? ちょっ、冗談だから! 怒らないでシラユキちゃ、様! え? あ、はい、私の胸くらいでしたらいつでもいくらでも! でも……、シラユキちゃん怒ってますよ? ってまた様忘れた! すみま、え? いいんですか? はー、よかった……。私の胸は今度じっくりゆっくりと……、ふふふ、玉の輿……。あ、今マスター呼んで来ますね! ちょっと待っててくださー、あ、マスター……、いつの間に」


「いらっしゃいませ、ルーディン様、シラユキ様。先ほどバレンシア様にお渡しした商品に何か不都合でも御座いましたでしょうか? 申し訳ありません、この馬鹿店員の首を差し出しますのでどうかお怒りをお静めください」


「マジで!? あ、いやっ、ちゃんと渡しましたって! うひゃー、数多かったし何か間違ってたかなー……。あのー、この胸でしたら好きにして貰っていいんですんで、どうか許してくださると……、え? 何シラユキちゃん? 違う? でもルーディン様揉む気満々だよ? うわ! 蹴っちゃ駄目! お姫様がはしたない!! え? お兄さんと仲悪いの? あ、大好き? よかった。ぬふふ、今の大好きだよ! っていう顔見ました? マスタ……、すんません、クビは勘弁してください……」



「バレンシア様でしたら冒険者ギルドに人を待たせてあると急ぎ出て行かれましたが……。はい、まだ何分も経っていませんね。ですが、あの方の足でしたら既に着いている頃かと思います」


「今から行けば充分間に合うと思うよ。はいこれお土産、苺のショートケーキとアップルパイ入れておいたよ。私の報酬から差し引かれる事になってるから味わって食べてね……。くすんくすん」


「今は人手が足りませんからクビにはできませんよ。それでは、次回のご来店を心よりお待ちしております」


「シラユキちゃんまたねー。ルーディンさんも、また、ですね、うふふ……。すみませんメイドさん、殺気飛ばさないでください……」



 また入れ違いだよ! でも苺のケーキ貰っちゃったー! ふふふ。ナタリーさんには今度何かお土産を持って行ってあげよっと。

 しかし、ナタリーさんくらいの胸になるとあの制服はやばいね、兄様は完全に釘付けだったし……。もげろ!


 ここにはシアさん一人で来てたみたいだね、多分キャロルさんとガトーさんともう一人の人は冒険者ギルドで待っているんだろう。ガトーさん情報を得ることはできなかった、残念。




「さっきから入れ違いになってばかりなのにご機嫌だな。そんなにジュースやら菓子やら貰ったのが嬉しいのか? 可愛いやつめ」


「ううん? それも勿論嬉しいんだけどね、ルー兄様とクレアさんと一緒にこうやって色々な所に行くのが楽しくって。ふふふ」


「……!!!」


「クレアが感動で言葉も出ない様だが……。ははは、本当に可愛いやつだなお前は。しっかし、あいつらは食い物屋ばっかだな……」


「はあ……、ふう……。申し訳ありません、落ち着きました。久しぶりに会った友人に手料理を振舞うのでは? バレンシアらしい考えだと思います」


「うんうん、シアさん優しいもんねー。お友達の為に張り切ってるのかも? ふふふ、いいなー、私も食べたいなー」


「おお、俺もだな。そんじゃ、冒険者ギルドに急ごうぜ? なんか楽しみになってきたな!」


「はい、私もバレンシアの作る料理には興味があります。世界中を旅して回っていただけあって、様々な食材や調理法を知っていますから。私も料理は得意な方ですが、教わる事はまだまだ多いです」


「ふふふ、それで恋人に作ってあげるんだね? !? 痛い!! ごめんなさい!! て、手がー!!」


「申し訳ありません!! つ、つい力が……。はっ!? 大丈夫ですか姫様!?」


「うん、ちょっと痛かっただけ。ごめんね? からかおうとした私が悪いよね……。だからルー兄様、睨まないであげて」


「む……、ああ、お互い気をつけろよ」


「はーい!」


「本当に申し訳ありませんでした……。ああ、私はなんという事を……」




 気を取り直して冒険者ギルドへ! 何かたらい回しにされてるような気もするけど……、すっごく楽しいね!

 わくわく気分が止まらない! ガトーさんはどんな人なんだろう? シアさんはどんな料理を? さあ! 冒険者ギルド……へ?


 冒険者ギルドで料理……? あれ?




「バレンシアさんたちでしたらほんの今さっき、調薬ギルドに向かわれましたよ?」


「またか!! 楽しみになってきてただけにイラつくな……」


「えー……、お腹空いちゃったよー」


「ちぃ、面倒な……」


「え? あの……、ご、ごめんなさい!!」






名前が出てないキャラが殆どですが、本編には絡んでこないと思うので、もし出て来るようならまたそのときにでも……

一応全キャラ名前とちょっとした設定はしてあります。勿体無いかも……


すみません、また続きます。

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