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その142

「キャロ、今日は冒険者ギルドへ行きますよ、あなたも付き合いなさい。姫様、当日いきなりで申し訳ありませんが、今日はお休みを頂きたいのです。宜しいでしょうか?」


「へ? 行きますよって……。普通はシラユキ様に許可を取るのが先じゃ……」


「ああ、うん、いいよ? ふふ、気にしないでキャロルさん、私がシアさんのお願いを断る訳無いからね。シアさんもそれは分かってるけど、一応念のため聞いてみただけだから」


「つ、通じ合っているんですね……。シア姉様も、シラユキ様に対しても……、羨ましい!!」


 朝食を食べ終わった後、シアさんが急に休暇の願いを申し出てきた。シアさんがお休みを欲しがる事なんて本当に滅多に無い事なのと、許可を出さない理由もある訳が無いので二つ返事で了承する。

 たまには纏まった、一週間くらいお休みを取って貰って、ゆっくりと体を休めて貰いたいところなのだけど、シアさんはお仕事が無いと何をしたらいいのか逆に悩んでしまうらしい。メイドさんの鑑だね。

 私のお世話が一週間もできなくなるのはまさに死と同等の苦痛だ云々言い出したので、諦めることにしたのだ。私としてもシアさんが一週間も側にいないのは正直耐えられそうに無いので、内心ほっとしていたのは勿論内緒にしている。が、あの後やけに嬉しそうにニヤニヤしてた気がする、多分バレているだろう。


 しかし、シアさんがお休みを取ってまで冒険者ギルドに何の用事が……? 気になるところではあるね。多分数日中に着くと言っていた何かが届いたんだろうとは思うけど、なんで冒険者ギルドに? まあ、多分普通の商品じゃないんだろう。

 ん? カイナさんは着くとしか言ってなかったね確か。商品や荷物が、とは一言も言っていなかった筈。となると、冒険者ギルドに着く、と言ったら……、それは冒険者の人になるのではないだろうか? ふむふむ。


 なるほどね、シアさんのお知り合いかお友達が訪ねに来るのか……、ふむふむふむ。


「シーアさん?」


「駄目です」


「やはり駄目だった!! やっぱり誰かに会いに行くんだ?」


 予想通り! かはまだ分からないけど、少なくとも私には会わせたくない、見せたくない何かが到着したんだろうね。むう、気になるわー。


「ああ、カイナさんがちょっと前に言っていた……。誰が来るんです? シア姉様」


「会えば分かりますよ、あなたも面識がある筈ですからね」


 シアさんはキャロルさんの質問には答えないが、誰かが来る、という事は否定はしなかった。やっぱり誰かが冒険者ギルドへとやって来るようだ。


「私とシア姉様の共通の友人、ですか? 誰だろ……。まあ、確かに会えば分かりますよね。あ、服は着替えてもいいんですよね?」


「そのままに決まっているでしょう。あなたはもっと、最早自分は冒険者では無く王家に仕えるメイド、の見習いであることを自覚しなさい」


「そ、そうですよね……。あれ? 私服くらいは自由にさせてもらっ、えっ? 私ってもう冒険者じゃないんですか!?」


「? 何を今更……、既に登録は抹消済みですよ」


「ちょっ、え、ええ!? さ、さすがにそれは……。え、ええー……」


 シアさんのいきなりな冷たい一言にがっくりと肩を落とすキャロルさん。


 まさか冒険者登録まで抹消されていたとは……。冒険者を続けたい場合は再登録になるのかな? 折角Aランクの最上位にまで上り詰めたのに、またCランクから出直しになるんだろうか?

 これはもう諦めて、リーフエンドに骨を埋めるつもりでメイドさんをやっていくしかないね! うんうん。


 冗談はこのくらいにしておいて、と。


「シアさん、それはちょっと、どころじゃなくかなり酷いんじゃないかな? いくらキャロルさんの師匠だからってそんな勝手に……、? あ、ユー姉様がやったの!?」


 キャロルさんから冒険者の権利を剥奪したのは姉様だった!


「おっと、冗談です、ご安心ください。どちらにしてもユーフェネリア様のお許しが無ければ冒険者に戻る事は叶いませんよ? まあ、特に何かギルドへ通達を入れた訳では無いので普通に依頼も受けられるのですが……、まさかユーフェネリア様のお言葉を無視する様な真似は」


「しません! ありえません!! あー、焦ったわ……。シア姉様、ちょっと人が悪いですよ今のは」


「確かに少し冗談が過ぎましたか。ユーフェネリア様に有らぬ疑いを掛けてしまうところでしたし、反省しなければ。姫様、申し訳ありませんでした」


 シアさんもさすがにやり過ぎたと思ったのか、深々と頭を下げて私に謝る。


 そこはキャロルさんに謝ろうよ……






「なるほどな、それで拗ねてるのかコイツは。まったく、可愛いやつめ、ほれほれ」


「うにゅにゅにゅ……」


 別に拗ねてなんかないもーんだ! ちょっと寂しいだけだもーん……


 あの後何度かお願いしてはみたのだけれど、最後までシアさんが聞き入れてくれることは無かった。キャロルさんも加勢してはくれてはいたが、シアさんのあなたも置いて行きますよ、の一言であっさり掌を返し、あちらへと付いてしまった。ぐぬぬ、裏切り者め……

 あまり我侭を言って困らせるのも嫌だったし、しつこ過ぎるくらいお願いした訳じゃないんだけどね、ちょっと残念だ。


 あそこまで私のお願いを断るところを見ると、多分本当に私には会わせ難い人なのかもしれないね。……でも、危険です、とかは一切言ってなかったな……。ソフィーさんの様な別の意味で危険な人なんだろうか? それなら納得だ。


「ま、いつも一緒にいるお姉ちゃんに置いて行かれちゃった気分なのかもね、今日は私たちとルーディン様に甘えるといいよ」


「レンも何か考えがあって連れて行かなかったんだと思うし……、あ、自分の冒険者時代の話を聞かれたくないだけなんじゃないの? なんで隠すんだか……」


「うん、色々とお話聞きたいのになー。シアさんのお友達ならきっといい人だよね? 誰なんだろ」


 シアさんとキャロルさんの共通のお知り合い、お友達の筈。どう考えても悪い人? 怖い人には思えないね。


「誰って、『閃光』とかいう冒険者だろ? 俺もどんな奴かまでは知らんが……」


「へー、『閃光』、さん? 最近よく聞く気がするね、その名前。あれ? 二つ名? どこで聞いたんだったかな……」


 うーん、どこでだっけ……? つい最近も聞いたような……


「二つ名なのそれ。何? 光るの? 冒険者の二つ名って見た目とか戦い方から付くのよね確か。それで閃光ねえ……」


「やっぱ光るんじゃないの? ちょっと見てみたいねそれ……。まさか、禿げてるとか? ふふっ」


 フランさんとメアさんも興味津々の様だね。メアさんはちょっと失礼な事を考えちゃってるけど、私もそれをまず考え付いてしまったので文句は言えない。

 うーん、確か女性だったっていう記憶が、あ! キャロルさんに聞いたんだった! あー、そうだったそうだった……、え?


「せ、『閃光』さんって、現在最強の冒険者の人じゃなかった? シアさんはそんな凄い人と……、あ」


 シアさんがその前の最強の人だった!! うわあ、す、凄い人には凄いお友達がいるんだね……


 確かキャロルさんから聞いたのは、現在最強の冒険者。竜人の女の人で、ライナーさんのお師匠さん。後は、シアさんと一時期一緒に行動していた、くらいだね。そういえばシアさんが戻って来ちゃって話が途切れてしまったんだった。

 一体どんな人なんだろう……? ライナーさんみたいに筋骨隆々の女の人だったら……、ちょっと怖いかも。


「どうした? 不安か? 大丈夫だって、昔の友達に会いに行っただけなんだろ? んー……、よし、シラユキ」


 考え込んだ私が不安がっている様に見えたのか、兄様は私を横抱きに座らせ直し、顔を近付け、私の名前を呼ぶ。


「うん? 何? ルー兄様。あ、キスしたいの?」


「違うわっ。まあ、キスもするか。なあシラユキ、バレンシアは連れて行ってくれなかっただけだろ?」


「うん。理由も、誰に会いに行くかも教えてくれなかったけど、今日は連れて行けませんよーって」


「そう、連れて行けないだけで……、来るなとは言って無い、という訳だ。どうだ、行きたいか? 連れてってやるぞ?」


 ニカッと素敵な笑顔で言う兄様。


 え? だから行っちゃ駄目なんじゃ……、ああ! 確かに連れて行けないって言ってただけで、私が自分から行っちゃ駄目、来るなとは言われて無いね。

 さ、さすが兄様! 人の揚げ足取りとか、そういうズル賢い事は得意なんだね!! 全然褒めてる様に聞こえないね、不思議!!


「うん!! 行きたい! ありがとうルー兄様! だーい好き!!」


「はははっ。シラユキはもっと我侭言っていいんだぜ? もっと強く言えばバレンシアだって連れてってくれたろ、多分だけどな。うーん、やっぱシラユキの笑顔はいつ見ても、何回見ても飽きない可愛さだな……。よーし、キスしてやろう」


「わっ、んっ、ちょっ、もう! 恥ずかしいよルー兄様! ふふふ」


 頬に額に唇に、顔中キスされてしまった。

 恥ずかしいけどとっても嬉しいね。兄様は男の人だけど、やっぱり兄様だからキスも普通にできちゃうね。ふふふ、兄様大好きすぎる!




「ホント姫ってルーディン様には素直に甘えるよね。私も飛びついて抱きつかれたりしてみたいよ」


「ま、三人、っと、今は四人か。四人もいるんだし、誰か一人に甘えすぎるっていうのも悪い気がするんじゃない? でも、二人っきりになったら凄く甘えてくるでしょこの子」


「あ、そうかも。二人きりになるとすぐに擦り寄ってくるよね。あ、それはアレかな。でも、無意識だよね多分」


「私らとしては嬉しいんだけどね、ちょっと不安でもあるかな。子供のうちだけだとは思うけど……、気をつけてあげなくちゃね」



「フラニーとメアリーはどうする、俺たちと一緒に行くか? 抱えて飛べる奴呼んでやるぞ?」


「フランさんもメアさんも一緒に行こー?」


「うわ、嬉しさのあまりふにゃけちゃってるわ、可愛い……。あ、っと、私はいいよ、町に行くのはちょっとメンドクサイし、レンの友達には興味あるけど冒険者ギルドにはあんまり行きたく無いかな。ありがと、ルーディン様」


「ふふふ、姫可愛いなあ……。あ、私も遠慮しておきますね。姫とルーディン様だけで……、はちょっと問題ありません? できたら護衛を誰か一人……」


「そうか? んじゃクレアでも引っ張って来るか。二人はシラユキの着替えを頼む」


「シラユキの着替え!? 分かりました! 任せて!!」


「あ、ちょっ、フランずるい!! 私も手伝うからね! あー! 何着せよう! あ、ルーディン様、すみません。少し長めにお時間を頂いても……?」


「おいおい……。はあ、分かった、昼から行くか。入れ違いになっても知らないからな俺は」


「なんか嬉しすぎて、今日は別に会えなくてもいいかな? って思えちゃうからそれでもいいよ。ふふふ、可愛い服選んでね?」


「ななな、何この子可愛すぎ!! ルーディン様シラユキ貸して、……んふふ、キスさせてシラユキー」


「私も私も! シアのいない間に思いっきり可愛がっちゃおっと」



「おお……、素晴らしい胸の二人に挟まれる最高に可愛い妹……。ふむ……、これは中々……」







やっぱり0時投稿はできませんでした……、すみません。

でも一応一日一話は続けていけそうです。



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