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その140

 うーん……、あの人は一体何を……、本当に何をしてるんだか……。そんなにちょこちょこと出て来ていい人じゃない筈だよね……

 ん? そういえば特に決まりとかは無いって言ってたような? でも、それにしたってフリーダムすぎるよ。普通あんな人があんな事で人を呼び出す?

 まあ、実害は無いどころか私としては嬉しいからいいんだけど……、複雑な気分だなー……


 !? 実害!?


 まさか、シアさん作のクッキー他おやつがたまに無くなるのはあの人のせいなのか!? そういえばおやつが美味しいとか楽しみとか言っていたような……? ありえる!!

 し、しまったな……、兄様とメアさんとキャロルさんを疑っちゃったよ。でも、まあ、私が真っ先に疑われたし、それはいいよね。よくないか……、今度さりげなく謝ろう。

 今度出て来たときはしっかりと問いただして、もしそうだったのなら三人の代わりに私が怒っておかないとね!! 後……、感想も聞かなきゃ!






「フラン、今朝は姫様のご気分が少々優れない様なのですが、何か知りませんか? お着替えをさせて頂いてる間も何やら考え事をされていた様子でしたし……。まさか、お眠りになられている姫様に何か悪戯でもしたのではないでしょうね」


「ないない、レンじゃあるまいし。いつもみたいに揉まれたり吸われたりで幸せだったよ、キスはしてるけど舌を入れたりはまだしてないし。ええとね、今日は、ん? 昨日? どっちでもいいか……。ちょっと夢見が悪かったみたいなのよね。目が覚めた後何か不機嫌そうにブツブツ言ってたし」


「夢? 珍しいね。姫って夢を見る事自体少ないみたいなんだよね。見ても内容を覚えて無いだけなんだろうけどさ……、まだ!? 駄目だよフラン!」


「私もシラユキ様と一緒に寝てみたいなあ……。是非私の胸も揉んで大きくして貰いたい!!」




 む? なにやらメイドさんズが騒がしいな……。あ、心配させちゃったかな? そんなに不機嫌そうな顔してたかなあ……?


「な、何でもないよー? 機嫌が悪い訳じゃないから安心してね。ちょっと、ね、こう、何と言うか……、そうだ、納得だ! ちょっと納得がいかなかっただけだから」


 本当に色々な意味で、多方面から見て納得できない夢だったんだよ……


「まあ、そういうのを機嫌が悪いって言うんだけど、シラユキがこう言ってることだし、いいかな?」


「そう、ですね。少し気になるところではありますが……。姫様、無理に、とは言いません。姫様さえ宜しければ、お聞かせして頂いても構いませんか?」


 フランさんはそうでもなさそうだが、他の三人は私がどんな夢を見たのか気になっている様だ。


 でもなー、さすがにあの夢の内容は話せないなー……。話したところで、信じてはくれるだろうけど、理解はできないと思うし。うん、内緒にしておこうかな。


「うーん、ごめんね。ちょっと話せない、かな? 悪い夢じゃなかった事は確かだから気にしないでいいよ」


「そう言われると逆に気になっちゃうんだけどなあ……。ねえねえ、姫、教えてよー」


「うにゅにゅ……」


「ちょ、やめなよメアリー。悪い夢じゃなかったってシラユキ様も仰ってるんだから、それで納得しときなさいって」


 私の頬をグニグニとしながらせがんでくるメアさんを、キャロルさんが呆れながら窘める。


「キャロの言う通りですよ、メア。私もかなり気になってきてしまいましたが、今は、諦めましょう」


「う、うん。ごめんね姫。今は、諦めるね」


「今、を強調して言わないで! 話さないよ! 話せないんだからね!」


 もう! 諦める気ゼロだよこの二人は!




 さてさて、今日の予定はーっと……。うん、今日も特に何も無いね。いくらお姫様で、さらに子供とは言え、毎日読書ばかりで遊んで暮らしていてもいいのかな。

 毎日頑張ってるキャロルさんを見ていると、お仕事は無理としても、何かお勉強くらいはするべきなんじゃないかなと最近思ってしまう。別に夢で言われたからじゃないよ? ホントダヨ?

 あれ? 読書はお勉強じゃね? 趣味も兼ねていると言うか、九割くらい趣味に寄ってはいるが、実はちゃんとお勉強になっているのではないだろうか? ううん、知らないけど絶対そう。


 前にも少し疑問に思ったことなんだけど、この世界で言う勉強とはどんな事を指すんだろう? やっぱり歴史と数学、と言うか算数かな? それくらいしか思い浮かばないね。道徳なんて親から教えてもらう事だろうし……、うん? 久しぶりに前世の考えをしちゃった気がする。この世界にはこの世界のお勉強がある筈だよね。



「ねえねえシアさん。学校、ってあるんだよね? 確か、えーっと、文字と簡単な計算を教えてるって前に言ってたような……」


「え? ええ。ああ、以前皆様に、庶民の生活についてのご質問に私がお答えしていた……。よく覚えていましたね、さすがは姫様です」


 シアさんにいい子いい子と撫でられる。


「ふふ、ありがとシアさん。ふふふ」


 シアさんに褒められると嬉しいなー。


 キャロルさんの気持ちが分かるね、これは。次も頑張ろう! って気にさせられちゃうよね。でも、今のは何を褒められたのかよく分からないんだけど……。記憶力? さ、さすがにこれは誰だって忘れないんじゃないかな……


「し、シラユキ様可愛いいぃ……。あ、私も撫でさせてください!」


「それじゃ私も。ほーら、姫、偉い偉い」


 キャロルさんとメアさんにも撫でられまくってしまった。あまりの嬉しさ心地よさに、さっき思った疑問が頭から飛んで出て行ってしまったね。


「ああ、ちょっと! 私が撫でるスペースが……。くう、いつも三人だったからこんな事は無かったのに……」


 フランさんが悔しそうにしている。どうしたんだろう? 私を撫でるのに人数制限なんて……、あ。


 私は今テーブルに着いてたね。私の右にはメアさんが、左にはシアさん、後にはキャロルさんがいて私を撫でてくれている。前は勿論テーブルだ、まさかこの上に乗ってまで私を撫でようとは誰も考えない。

 なるほど、いつもは三人だったから気付かなかったけど、この座り方だと人数制限ができてしまうのか。納得納得、面白いね。


「まあ、キャロルは小さいし、その上から手を出せばいいか……。ふふふ、やっぱりシラユキは可愛すぎるね。こんな簡単に誤魔化され……、あ」


「フラン! ふう……、まったく、どうして言ってしまうのですか。折角上手くお忘れして頂いていたところだったというのに……。もげなさい」


 う? 誤魔化され? 忘れて? 何が……?


「あはは、ごめんごめん、レンはちょっと気にしすぎだって。シラユキだってただ興味があるだけだと思うよ? だよね、シラユキ?」


「え? あ、うん!」


 何だっけ!?




「学校ねえ……、姫には必要ないよね。文字も五歳頃にあっさり覚えちゃったし、計算は誰に教わるでもなく自然にやってのけてたし……。うん、天才だよね」


 !?


「ああ、うん!! 学校、学校ね! 覚えてたよ!」


「完全に忘れてましたね? ふふふ、可愛らしい……。ええ、今メアの言った通り、姫様は学校などに通われる必要はありません!」


「言い切られた! もう、違うよ……。私はただ、文字と計算以外に何を教えてるのかな? って気になっただけだからね?」


 日本の学校で言う他の教科に当たる物が何かしらあるんじゃないかな、と思う。


「文字と数学以外、ですか? それは、専門的な教育についての事でしょうか? な、なるほど、失礼しました。姫様は何についてお知りになりたいので?」


「へ? 何かについて、じゃなくて……、他にどういう事を教えてるかを知りたかったんだけど……」


 何かシアさんと私とで、会話が食い違ってしまっているね。シアさんらしくないと言うか……、珍しいね。


「学校で教えてる事って、文字と計算だよね。姫はそれ以外にも何か教えてるんじゃないか、って聞いてるんだよね?」


 うんうん、そうそう。


 メアさんの言葉にコクコクと頷いて答える。


「学校で文字と計算以外に何を……? あ、魔法とか? さ、さすがに魔法は普通の学校じゃ教えて無いよ……」


「だよね。あの、シラユキ様? 普通の、って言うのもちょっとおかしいですけど、庶民の子供が通う学校では文字と、本当に簡単な、足し引き程度の計算のみしか教えてませんよ? フランが言った魔法を教えるような学校もあるにはあるんですが、裕福な家庭の子供や特別な家柄の生まれ、くらいしか通う事はできないと思います。学費も結構しますよね、多分。シラユキ様はどちらにも当て嵌まりますから問題無い、んですけど……。シラユキ様って別段改めて教わるような魔法って、もう無いんじゃないですか?」



 またちょっと話がずれちゃってきているような……。でも、今のも興味深いお話ではあったね。それに、そんなつもりではなかったんだろうとは思うけど、答えもちゃんと言ってくれたしね。

 確かに言い方はちょっと変だけど、普通の学校で教えているのは文字と計算のみ、みたいだね。勿論他にもあるにはあるんだと思う。でも多分、さっきも考えたように両親から教わる道徳的な物の延長と、一般常識くらいだろう。


 魔法は誰もが自由に教わる事ができる訳じゃないんだね。裕福な家庭や特別な家柄? 貴族とか? そういった人向けの、所謂名門進学校、或いはステータスか。うちの子はどこどこの学校の出身なんですよー、とかよくあるものだ。



 そうなると、また別の疑問が出て来ちゃうね。


「冒険者の人も、もちろん町で普通に暮らしてる人達だって魔法は使ってるよね? あれはどうして?」


「あ、姫の好奇心に火を点けちゃったみたいだね。また面白く無さそうな話になりそうだし、うーん……、フラン、どうする?」


「うん? ああ、私らは役に立たなそうだね。それじゃ……、ちょっと早いけどお昼とおやつを作っちゃおうか? ふふ、手の込んだ物が作れそうだね。メア、手伝って」


「りょうかーい! ごめんね姫。シア、キャロル、後はお願いねー」


「え? あ……」


「ええ、分かりました」


「うん、任せて。楽しみにしてるよ」


 フランさんとメアさんは、そう言い残すと部屋から出て行ってしまった。


 あー、うー、ちょっと悪い事しちゃったかな……。いつもの読書の間も暇そうにしてることが多いし、もっとフランさんとメアさんも話に参加できるような話題にするべきだったか……

 毎日シアさんとキャロルさんをお相手に読書ばかりで、二人ともつまんないよね……。あれ? 何か、急に悲しくなって……


「ふえ……。ううぅ……」


「姫様!?」


「ええ!? ちょ、シラユキ様!? え? ええ!? いきなり何が……」


「ごめんなさ……、ううっ、……っすん。メアさぁん、フランさぁん……」


「キャロ! すぐに二人を!!」


「はい!!」






「うわ! ホントに泣いてる!! 姫、どうしたの? 姫?」


「シラユキ? シラユキー? な、何があったの? レン」


「恐らく、ですが、自分のせいで二人を追い出してしまったと思われたのではないかと……。ですが」


「うん、私らが途中でおやつ作りに行くなんてよくある事だよね? ねえ、シラユキ? ほらほら、私の膝においで?」


「フランさぁん……、ごめんっ、ね……、メアさ、ううぅ……」


「あああ、泣かないで! シア、これってやっぱ、私たちが泣かせちゃったのかな?」


「ええ……、あ、いえ、それは無い、と、思うのですが……。姫様……」


「あ、シア姉様、私には何となく分かりますよ。シラユキ様は、ふと悲しくなってしまっただけなんだと思います。私も子供の頃、その、シア姉様は実は私なんかに興味は無く、嫌々付き合ってくれているのではないか? とか、不出来な自分のせいでシア姉様に負担を掛けてしまっているのではないか? なんて悲しくなって泣いていましたからね」


「あ、ああ、言われてみれば……、キャロも理由も無く急に泣き出してしまったりしていましたね。そんな理由だったのですか」


「はい。子供の頃はなんでそんなに、泣くほど悲しくなるのかが自分でも分からなかったんですけどね。大人になった今、その時の事を思い返すとそうだったのではないかなー、と思うんですよ」


「それじゃ、シラユキは、うーん……? あ! 私とメアがが自分を置いて料理に行っちゃったって寂しく思って……、それで悲しくなっちゃったって事? シラユキ? そうなの?」


「わかん、ない……。でも、……っすん、急にっ、涙が……」


「あらら……、それっぽいね。どうしよっか? エネフェア様の所、行く?」


「ううん……。落ち、着くまで、このままがいい……」


「ふふふ。それじゃあ、落ち着くまで私に抱きついてなさい? ふふ、泣かれちゃったのはショックだけど、なんか……、嬉しいね」


「ちょっと、フラン? まあ、私もちょっと嬉しかったりするんだけどさ。裏を返せばそれだけ私たちのことが大好きだってことなんだよね。でもさ、やっぱり姫の泣き顔は見てて辛いなあ……。あ、もうちょっとしたら代わってよ?」


「はいはい、この子がもう少し落ち着いたらね。んー、シラユキ、急に出て行っちゃってごめんね? でもね、大丈夫! 私は、私もメアも、勿論他の皆も……、シラユキの事本当に大好きなんだから、ね?」


「そうだよ? 姫を置いてどこかへ行っちゃったりなんて絶対にしないからさ、安心していいんだよ? ほーら、キスしてあげるからね、ふふふ」




「キャロ、あなたは私の大切な弟子である前に、妹のような、娘のような、本当に大切な存在……、でしたよ」


「シア姉さ……過去形!? あ、照れ隠しですね? ふふ、ふふふふ」


「えっ?」


「シア姉様!?」







前半の夢の内容は『裏話』で書く予定です。遅い100話記念のような?

もう140話でしたね……。しかもいつになるか分かりません……


後半は今回こんな話になる予定はありませんでした。

実は、書いている自分でもシラユキの心境が今ひとつ理解できてません。


本当にどうしてこうなった!!


じ、次回に続きます。

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