表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/338

その138

「シア姉様! シラユキ様! 匿ってください!!」


 談話室で読書をしていたらキャロルさんが部屋に飛び込んできた。どうやら誰かに追われているようだ。


「先に姫様でなく私の名を出す辺りが許せませんね。即座に引き渡しましょう」


「シア細かいよ……。私たちは名前すら呼ばれなかったんだけどね。よし、捕まえておこうか」


「まあ、そんな事気にしないし、しなくてもいいんだけど……、とりあえず面白そうだから見物しよう。シラユキが本読んでる間は結構暇だからね」


 三人とも冷たい! フランさんに至ってはいい暇つぶしが来たぞと嬉しそうだ。


「味方が誰一人いない!? はっ!? シラユキ様は……?」


「あ、うん、いいよいいよ。とりあえずテーブルの下にでも隠れててね。三人とも教えちゃ駄目だよ?」


 ありがとうございますと一言、キャロルさんはテーブルの下、私の座っているすぐ前にしゃがみ込んで隠れた。

 テーブルクロスで多少見えにくくはなるけど、さすがに完全にとはいかない。私の体と椅子の影に入る感じだね。


 窓を開けるシアさんを横目に、キャロルさん小さくてよかったねと少し失礼な事を考えていたら……


「失礼します。……あら? ええと……、姫様? こ、こちらにキャロルが来ませんでした? 確か四階に上がって行ったと思うんですけど……、ああ、すみません、いないのでしたらそれでいいんです、お騒がせしました」


 続いてカイナさんが部屋に入って来た。キャロルさんとは違い、落ち着いて、ゆったりと歩いてだけど。


 カイナさんの手には薄いピンクの布が……、? 服? ワンピースかなあれ。ああ、なるほど!






 どうやらキャロルさんは、カイナさんに可愛らしい服を着せられそうになったから逃げて来たみたいだね。でもそれがどうして逃げる理由になるのかは私には分からない。

 カイナさんは純粋にキャロルさんに可愛い服を着て貰いたいだけだ。シアさんみたいに、着替えさせられる事に恥ずかしがる私を見てニヤニヤする、といった変な趣味は持っていない筈。持ってないよね?

 私ももう、下着から何から何まで着替えさせられる事には既に慣れてしまった。シアさんはちょっと残念そうだけど、それでも毎回楽しそうに、嬉しそうに私を着替えさせてくれている。

 最近はそれが普通の事になりすぎてしまって、私は一人で着替えができないんじゃないか? とちょっと不安になっている。お姫様だからいいよね? ……駄目だよ……


「入れ違いでしたね、一足遅かったです。キャロならついさっき、窓から飛び出して行きましたよ。随分と慌てていたようでしたが、なるほど、貴女のせいでしたか」


 私がどう答えたものかと悩むよりも早く、シアさんが自然に答えてくれる。


「え? あ、申し訳ありません姫様、私がキャロルを追い立ててしまったみたいですね。そんなに必死になって逃げなくても……」


 おお、さすがシアさんだ、窓を開けたのもそのためだったんだね。何だかんだ文句を言いながらもきちんとフォローを


「入れ違いになってしまったものは仕方ありません。まあ、キャロもほとぼりが冷めたと感じたら姫様に謝りに戻って来るでしょうから、カイナもここで待ってみてはどうですか?」


「そう、ですね。お邪魔でなければ……。ふふふふ」


 入れる訳がなかった!! やはりシアさんだった!!


 シアさんは何食わぬ顔でカイナさんを引き止めてしまった。引き止められたカイナさんも何故か嬉しそうだからいいか……



 なるほど、キャロルさんがテーブルの下にいるという事を、必死に隠そうとして慌てる私を見て楽しもうという魂胆だね。キャロルさんもいつバレるか見つかるかとハラハラドキドキしている筈だ。私たち二人はシアさんにこうやって遊ばれる運命なんだね……。だがしかし!!


 その挑戦……、受け取った!!


 カイナさんが部屋を出て行くまで……、いつ? とにかくその時までキャロルさんを隠し通して見せようじゃないか!!


 部屋を出て行くようにやんわりと言ってみてもいいが、カイナさんは私に邪魔だと思われたと思って本気で泣いて落ち込みそうなのでやめた方がいいだろう。やはりタイムオーバーを待つしかないね。



「キャロルは見た目あんなでもカイナと同じくらいの年だよ? 可愛い服ならシラユキに着て貰えばいいじゃない。私も見てみたいし」


 見た目あんなって……。まあ、キャロルさん見た目は子供だよね。でも中身はれっきとした大人なんだから、あんまり可愛らしい服ばかり着ていたくないんじゃないのかな? あのフリフリメイド服にはすっかり慣れちゃったみたいなんだけどね。選んだ姉様も大喜びだ。


「うん、カイナさんの選んでくれた服なら喜んで着るよ。いつでも言ってね?」


「あ、ありがとうございます! ああ、姫様はなんて可愛らしくてお優しい……。あ、すみません、これは少し、姫様にはサイズが大きめで……。そのー……、元は姫様に着て頂く予定だった物なのですが……」


 うん? 元は私に? それって前にも聞いたような覚えが……


「ああ、また少し大きめの買っちゃってたんだ? 姫って全然背伸びないからまた無駄にするところだったよね。そう考えると、キャロルが来てくれてホントによかったね。ねえシア、もうメイド服以外の私服は全部それに換えておいたら?」


 ああ! 前にキャロルさんが家に遊びに来たときにそんな事あったね。あの時も確か、私が着る予定だった服を着替えとして渡したんだっけ。懐かしいな……


 どうせ私は全然成長してないですよーだ……、!?


「ひゃっ」


「姫様?」


「ど、どうされました? 姫様?」


「な、なんでもないよ! ちょっとくすぐっ、じゃなくて、ええと……」


「ん? ……ああ、なるほどね。ふふふ」


「あはは。姫、どうしたのかなー?」


 もう! くすぐったくて変な声が出ちゃったじゃない!


 キャロルさんが私の足を、ひざの辺りをツンツンと突付いてきている。多分私にメアさんの発言を注意してくれと言いたいんだろう。

 乗りかかった船だ、今日はとことんキャロルさんの援護をしようじゃないか。


「あ、メアさんシアさん、人の服を勝手に交換しちゃ駄目だよ? カイナさんも、ええと……、キャロルさんは大人の人なんだから、多分もっと落ち着いた服が着たいんだと思うよわひゃあ!」


 なんで足撫でるの!? お礼のつもりなの!? また変な声出しちゃったよ……


「ふふっ。あ、失礼しました。あの子ももう三百五十ですからね、私から見たらまだまだ子供なのですが……、? 誰の目から見ても子供でしたか」


「ふふふ。え、ええ、そうですよね。あんなに可愛いんですから、服装にももっと気を使うべきですよね。私なんてこの背のせいで可愛らしい服なんて絶対に似合わないのに……」


「確かにカイナは可愛い服って似合わなさそうだよね。でも、そんな事言ってると姫に怒られるよ?」


 パルパル。

 ちょっといじけた真似をしてみる。


「す、すみません! そんなつもりでは……。ああ! 姫様に嫌われてしまう!? どどど、どうしたら……!!」


「ふふふ、怒ってないから大丈夫。羨ましい悩みではあるけどね」



 私やキャロルさんが、背が低い、胸が小さいと悩んでいるように、背の高い、胸の大きな人にもその人なりの悩みがあるものだ。

 私たちから見れば本当に羨ましい悩みでしかないのだけれど、向こうからしてみれば私たちの悩みが羨ましい悩みに見えているのかもしれな……、それは無いか。なんか不公平だな……


 ま、まあ、私はキャロルさんと違ってまだ今後の期待が残っているからね。……ごめんなさいキャロルさん。



 心の中でキャロルさんに謝ったところで、さらに追撃のフォローを入れようか。


「ピンクじゃなくて、もっと落ち着いた色合いの服にしてみたらどうかな? それならキャロルさんも着てくれるんじゃないかなーって私は思うよ。それでも駄目だったら、うん、諦めてね。嫌がってるのに無理に着せようとしちゃ駄目だよ? もしそんな事しちゃったら……、シアさんにお願いして、カイナさんのメイド服もフリフリにしちゃうからね? ふふふ。……ふふっ、ちょ、くすぐったいよ、ふふふふ」


 またお礼のつもりなのかキャロルさんに太腿の辺りを撫でられまくってしまった。


 ええい! キャロルさんは隠れる気はあるのか無いのかどっちなの!? 多分今ので完全にバレちゃってるよ……。バレてないにしても、怪しまれてるのは確実だよね。




「は、はい。うう、申し訳ありませんでした姫様……。そうですよね、年相応の落ち着いた色合いなら多少フリルが付いた物でも着てくれるかもしれませんね。わ、私のメイド服の改造は絶対に似合いませんからやめてくださいね?」


「落ち着いた色合いなら多少フリフリヒラヒラでもいいんじゃなかったの? まあ、確かにカイナにはそういうのは似合わないか……。あはは」


「私は似合うと思うんだけどなー。カイナさんは美人さんなんだから、きっと何を着ても似合うと思うよ!」


「あああ……、感激です……!! ありがとうございます!」


「大袈裟な……。早速今改造して差し上げましょうか? 脱ぎなさい」


「ええ!? せ、せめて部屋で!」


「はいはい、レン、嫉妬しないの。カイナもレンの言う事を一々真に受けない。ああ、落ち着いた色合いと言えば……、キャロルの下着って黒だよね。そこだけは年相応なんじゃない?」


「そういえば、前に干されているところを見ましたけど黒でしたね。キャロルには黒より……、姫様と同じ白か、水色辺りが似合うと思いません?」


「キャロルさんは大人なんだから黒でもうわあ!! めめめ捲らないでキャロルさん!! 隠れる気あるの!? 無いの!? まじまじと見ないでー!!」


「え? あ、すみません。つい白と言われて気になって見てみたくなってしまって……。か、可愛らしい下着ですね!」


「感想もやめて!! はっ!? この前の仕返しなんだね……!! ううう、恥ずかしいけど我慢しよう……、!? 顔を寄せないで!!」


「手を放しなさいキャロ!! 姫様、こちらへ! ああ、よかった……、もう少しで襲われてしまうところでした……。キャロが姫様の太腿と下着を見て発情しない訳がありませんからね、雷の魔法で撃退してもよかったのですよ?」


「しませんよ! 確かにちょっと、あまりにいい香りすぎてついフラッと、頬擦りをさせて貰おうと……、雷の魔法って即死魔法じゃなかったですか!? ごごごごごめんなさい! すみません!! 申し訳ありません!!!」


「お優しい姫様がそんな危険な魔法を人に向けて撃てる訳が無いでしょう……。あ、姫様、キャロルには罰として、私の着せ替え人形になる事を命じてくださいませんか?」


「ちょっと怖かった……。う? うん、いいよ。キャロルさんは今日一日カイナさんの選んだ服を全部着ること! ……? なんでカイナさんはキャロルさんが急に出てきたのにそんな自然体なの?」


「え? まさか本気で隠せているとお思いでした? す、すみません! 驚けばよかったですね……」


「最初からバレてましたよ? 私が出て行かなかったのは、カイナが気づいていないフリをしていてくれたのと、ちょっと楽しかったからであって……」


「!? が、頑張ってたのに! 私らしくなく精一杯頑張ってたのにー!!」






白と水色の縞模様なら……!!


もう暫くこんなお話を続けようかどうか悩みます。楽しすぎる……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ