その135
今回はちょっと……、R15と言うか、GL要素が?
苦手な方はお気をつけてください。
「今日はキャロルさんのお話、聞かせてほしいなー」
キャロルさんの個人的なお話ってあんまり聞いたこと無いんだよね。リズさんはあの反応が可愛かった、この仕草がが可愛かった、としか話してくれなかったし、一体どんな生活を送ってきたのかちょっと疑問に思ったら興味が膨れ上がってしまったのだ。
幸いな事と言うか、シアさんはメアさんとおやつを作りに行ってるし、今がチャンスだね。キャロルさんは話してる間についつい昔のシアさんの事をポロッと言っちゃいそうだからね。それが狙いでもある。
「私の話、ですか? 前にも言いましたが、冒険者の話なんて聞いていて面白いものじゃありませんよ? まあ、雑務依頼の方ならそれなりに変わった話もいくつかありますが」
「それでいいんじゃないの? 私もそっちの話なら興味あるよ。レンに聞いたけどホントに色んな依頼があって面白そうじゃない、冒険者の仕事って」
「ああ、配達やら収穫の手伝いやら、魔物退治に一晩の相手、他にも色々あるよな。キャロルは受けた事あるのか? 一晩のお相手募集」
フランさんと兄様は雑務依頼に興味があるようだね。私の聞きたい事のメインは、冒険者としてでのキャロルさんじゃなくて、個人的な趣味とか好きな物とかのお話だったんだけど……。今兄様失礼な事聞いたな……。セクハラだよ、パワハラだよ! まったくもう!
ちなみに私は今兄様の膝の上にいるので実際に文句は言わない。降ろされたくないしね。
「ありませんよ……。私のこんな子供みたいな体で誰が満足するんですか。それに、私が体を許すのはシア姉様だけです!」
おお、軽く流した。さすがはキャロルさん大人だ。
何か変な事も口走っちゃってるけど気にしないでおこう。
「うんとね、そういうのじゃなくて……。キャロルさんの趣味とか、好きな食べ物とか、そういうのが聞きたかったの。子供の頃……、あ、シアさんとどうやって出会ったー、とかね?」
確か子供の頃に岩を投げて遊んでるところをシアさんに見つかってスカウトされたんだったかな? でもキャロルさんの両親とか、家族の人は反対はしなかったのかな……。こんなに可愛いキャロルさんの子供時代、もっともっと可愛かった筈だよね。
「ああ、なるほど、私個人についてですね。それじゃ、話せる範囲でお話しますから、何か気になる事がありましたらどんどんどうぞ」
キャロルさんは少し嬉しそうに、任せてと言った感じに自分の胸に手を当てて話す。
「女性同士ってどうヤるの?」
「フランさん!? い、今のは無しで!!」
「俺もちょっと興味あるな……」
「兄様まで!! そういうのは私のいない所で話してー!!」
「あはは……。シラユキ様、落ち着いてください。フランとルーディン様には後でお話しましょうか」
あ、ホントに後でするのね……。私も興味が無いといえば嘘になるけど、やっぱりまだ恥ずかしさが強いよ……。もしそれを聞いてしまったら、その後にシアさんとキャロルさんが恥ずかしさでまともに見れなくなってしまいそうだ。
最初からいきなり躓いてしまったけど、気を取り直して質問していこうかな。
「それじゃ、簡単なところから。好きな料理ってある? リクエストしてくれれば大抵のものは作ってあげれると思うよ。辛いのが好きなんだよね、確か」
料理担当のフランさんの興味はやっぱりそこになるね。辛い物の好きっていうのは前にチラッと聞いたことあったかな。
「うん、何でも赤コショウかけて食べてた時期があったね。シア姉様に、頭だけじゃなくて舌まで馬鹿にするつもりかこの阿呆、って言われてからはやめてるけど。でもこれが好きっていう料理は無いねー。辛い物全般なんでも来いよ」
「シアさん何気にひどい! 私は辛いのは全然駄目だなー。兄様も辛いのは好きだよね? やっぱりお酒に合うから?」
兄様はお酒大好きなんだよね。私には分からないけど辛い料理はお酒に合う、とか言われてたような?
「ん? ああ、麦酒の事か。それはあるな、うん。キャロルは酒はどうだ? この前の祭りの時それなりに飲んでただろ」
「果実酒ならそれなりにですが飲めますね。特に好きという訳でもないです。麦酒は付き合いで飲むくらいですね。どちらも特に好きと言える程じゃありませんね」
「ほー。んじゃ、今度付き合え。ユーネもシラユキも全然飲めないからな」
「はい、いつでもお呼びください。フラン、その時は辛い料理よろしく」
「はいはい、楽しみにしてなさい」
私も甘ーいのなら少しは飲めるね。グラス一杯も飲めば真っ赤になって寝ちゃうんだけど。
兄様も父様もどこに入るんだっていうくらい飲むんだよね。兄様は飲みすぎて酔っ払うと厄介な人に変貌するので、二人には気をつけてもらいたい。
ふふふ。やっぱりシアさんの事が出てきたね、シアさんの昔の口調をちょっとだけ知れて嬉しい。冒険者の頃は荒めの口調だったって言ってたもんね。
この調子で次々行こう! キャロルさんの事に加え、シアさんの過去をもっと探るのだ!!
「趣味って呼べるものはあるの? 冒険者の人ってそんな余裕は無さそうだよね?」
毎日必死に生きていってる人達だもんね。趣味に回すお金とか、そういう余裕は中々無さそうな気がする。
「レンは料理が趣味だって言ってたし、そうでもないんじゃないの?」
「趣味なんてモン別に余裕が無くても持てるだろう。ラルフの場合はあれだな、女性観察。いい趣味してる奴だったぜ、ははは」
「女性観察って言うか……、女の人の胸見てたんでしょそれ。やっぱりルー兄様の親友だね」
「趣味ですかー……。んー、無いかな。シア姉様と一緒にいる間は、修行ばかりでしたし。その分たまに甘やかしてくれるのが本当に嬉しかったな……。その後、独り立ちしてからも今度は一人でやって行く事に必死で、シア姉様が行方不明になってさらに余裕も無くなって……。リズを弟子にしてからもそうですね、教えた事をどんどん吸収していくリズを育てることが楽しくて……。言われてみれば無趣味ですね私」
あはは、と照れくさそうに言うキャロルさん。
なんか、改めて聞くとキャロルさんって苦労人だよね。
子供の頃にシアさんに捕まって冒険者にさせられて、飴と鞭を上手く使い分けられて育てられたのかな?
独り立ちしてからもシアさんが行方不明になっちゃったりで、あんまり余裕が無い生活をしてたのかもしれないね。シアさんはもっとキャロルさんを労わるべきだと思う! 私から進言しておこう。……甘やかすってそっちの意味じゃないよね?
「それじゃ、これからだね、ふふふ。今は料理、とか?」
「ああ! 料理って面白いですよね。それに、あんなに楽しいものだったとは思いもよらず。シア姉様も教えてくれないかな……」
「私も教えてもらいたーい!」
「何だコイツら、可愛いな……。キャロル、撫でてやろうか?」
「え? いえいえそんな! 私なんかよりシラユキ様をもっと可愛がってあげてください」
「やっぱ反応は大人だな……。違和感が凄え」
「あ! これは聞いておきたかったんだった。あー……、でも、シラユキの前だと話し難いかな?」
フランさんが思い出したように言う。何か気になっている事があったみたいだ。
私の前だと話し難い内容とか、嫌な予感しかしないよ……。兄様は既にニヤニヤして黙って聞く体勢だよ……
「言うだけ言ってみてよ、そんな言われ方したら気になっちゃうって。シラユキ様にお聞かせし辛い質問なら答えなければいいだけだしさ」
「そう? それじゃ聞くけど……。キャロルが女の人を好きになった理由ってあるの? やっぱりレンが原因だったりする?」
ほ、ほう……。それはちょっと私も気になる質問ではあるね。今聞いておけば私が女性趣味に転んでしまう事がもし、万が一あったとしても回避が可能になるかもしれない!!
「ちょいと恥ずかしいねそれ……。うん、シア姉様が原因かな。小さい頃からの憧れが恋愛感情に変わった瞬間は覚えて無いけど、あ、一目惚れだったのかも……。私が投げた岩をナイフ一本で粉々に砕くシア姉様、カッコよかったなぁ……。今でもあの凛々しい立ち姿は目に焼きついて離れないよ。その姿に一瞬で惹かれて、家族の反対を押し切って無理矢理弟子入りしたのよ私って。そんな小さな我侭な子供だった私を受け入れてくれた優しいシア姉様……。好きにならない訳が無いよね」
うん……、うん? い、イイハナシダナー。
キャロルさんが投げた岩をナイフ一本で粉々にしちゃうシアさんもシアさんだけど、人に向かって岩を投げちゃった子供の頃のキャロルさんもキャロルさんだよ! どっちもおかしいよ!!
しかし、シアさんがキャロルさんを捕まえたんじゃなくて、キャロルさんから弟子入りを志願したのか。ふむふむ。
なるほどね、シアさんの凄さを見せ付けられて、そこに痺れる憧れるぅしちゃった訳なんだね。
なんの参考にもならなかったけど、また一つシアさんの過去を知ることができた。良しとしようじゃないか。偉そうだな私……
「それでも女性同士っていうのは抵抗なかった? 私はちょっと考えられな……、シラユキなら考えるけど」
「考えないで!!」
「抵抗? 無い無い。毎日厳しく色々な事を叩き込まれて、できないとさらに厳しく叱られて。それでやっとできた時、もの凄く優しく笑顔で撫でながら褒めてくれるのよ? あの優しい笑顔に惚れないなんてありえないって。不出来な私に呆れてお説教をしながらも、きちんと毎日料理を作ってくれたり、武器や着る物から何から何まで用意してくれたり……。本当に、本当にシア姉様以上の人なんている訳無いよ……」
昔を、シアさんとの旅を思い出しながら、とても嬉しそうに話すキャロルさん。
キャロルさんはシアさんの事が大好きなんだなー。でも今のシアさんはキャロルさんに対してはそっけないよね……、ちょっと悲しくなっちゃう。私のせいなのかなと考えるともっと悲しくなっちゃうね……
「それで……、初めてを貰ってもらったんだっけ」
!? フランさん何を!? 兄様よくやった! って顔しない!! 今のキャロルさんにそれを聞いちゃったら……
「うん、初潮が来てすぐにね。もう大好きで大好きで堪らなくなっちゃってさ。シア姉様の下着をくすねて、その匂いを嗅ぎながら自分を慰めてるだけじゃ、全然満足なんてできなくて、どうしようもなく切なくなっちゃって……。あれは毎日辛かったなー、シア姉様って女の人どころか男の人にも全く興味ないみたいだったし。そんな頃に初潮が来て、お祝いに何でも一つ聞いてあげるって言われて……。結婚も恋人も無理なら、せめて処女を貰ってくださいってお願いしたんだ……。その晩、渋々、嫌々だったと思うんだけど、もの凄く優しく抱いてくれて……。ああ……、シア姉様……」
「あっちゃー、キャロルちょっとストップ。シラユキ大丈夫? ごめんね? 真っ赤になっちゃって可愛い……」
「俺も聞いてて恥ずかしくなったな……。シラユキは大丈夫か? こんなストレートに聞いちまったの初めてだろ。あー、耳塞いでてやればよかったか、失敗したな」
「フランさんもルー兄様もきらぁい……」
「ごごごごごめんシラユキ!! 許して!! シラユキに嫌われたら死んじゃう!!!」
「うおおおおお……。痛え、心が痛え……。半泣きでこのセリフは本気で辛いな……。シラユキごめんな? ほら、こっち向いて抱きついて来い」
「でも、その日からシア姉様、たまに甘えさせてくれるようになったのよ。もう幸せで幸せであいだっ!! いったー……、な、何が? あ、シア姉様。おやつの準備出来たんですか? あれ? 怒って……? はっ!?」
「着替えて、武器を持って表に出なさい。久しぶりに私が直々に、その腑抜けた面構えを叩き直し、鍛え直してあげましょう……」
「あらら、頑張ってねキャロル。フラン、姫とルーディン様のお世話、もう少しお願い。おやつはここに置いとくよ。私は包帯と傷薬出して来るから、あ、魔法薬もいるかな?」
「わ、私もここまでか……。あ、うん、よろしく。腕の一本くらい無くすかも。そうだ、ルーディン様、シラユキ様、今までお世話になりました。もうお会いできなくなるかもしれないので一応……」
「馬鹿な事を言ってないで早く用意なさい、この馬鹿弟子が……。明日に残るような怪我はさせませんよ。傷を残すのは、心に、です。もう二度とその軽い口が回らなくなるようにしてあげます。これであなたも安心でしょう? まあ、副作用で泣いたり笑ったりもできなくなりそうですが……、問題ありませんよね?」
「ひい! 許してください!!! 最高に怖いけど何故かちょっと嬉しい……。い、行ってきまーす!!」
もうちょっとこんなだらだらした話を続けたいと思います。




