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その133

「ふわああぁ……。あ、キャロルさんおはよー」


「おはようございます。シラユキ様? はしたないですよ?」


 人前で大欠伸してしまった事をキャロルさんに注意されてしまった。


「あ、そうだね、気をつけなくちゃ……。ごめんなさい、キャロルさん。でも今日はまだ眠くて……」


「昨日は少し遅くまで起きていられましたからね。無理をせず、いつもの時間に館に戻ってもよかったんですよ? ふむ……、もう一度顔を洗いに戻りましょうか。それと、キャロ。姫様の可愛らしい仕草を咎めるとはどういうつもりです。それでも私の弟子、王族の方々住まう館のメイドですか。まったく、嘆かわしい」


「え? ご、ごめんなさい!! ? あっれー? 何で私が怒られてるんだろう……」


 シアさんに怒られ反射的に謝るが、キャロルさんは納得がいかないようだ。


「キャロルさんは悪く無いよー……。安心しにゃふぁ……」


 むう、また欠伸が、しかも変な声まで出てしまった。恥ずかしい!


「見ましたか? 聞きましたか? なんという……、なんという可愛らしさ!! あなたの無思慮な一言で、今の最高に可愛らしい姫様の欠伸を今後一切拝見する事ができなくなってしまうところだったのですよ? 猛省なさい!」


「は……、わ、私はなんて愚かしい行為を……。申し訳、申し訳ありません……!!」


「朝からテンション高いね二人とも。ふわ……、はふぅ……。うーん、眠いや……」






 眠い、眠すぎる。ちょっと目を瞑れば夢の世界へ旅立てそうだ。どこよそれ。夢の中だよ! あまりの眠さに意味不明な考えが浮かんでしまう。


 朝食後もう一度顔を洗い、そのついでにシアさんにほっぺをグニグニとされたのだが、眠気が消えない。頬グニでさらに眠くなった気もするが……


 昨日はキャロルさんの歓迎会だった。いや、歓迎のお祭りだった。キャロルさん歓迎祭だね。

 今日から森の住人、家族が増えるぞとみんなで大騒ぎ。多分私の誕生日のお祭りくらい人が集まったんじゃないだろうかあれは。ミランさんの番が今からとても楽しみだ。

 演説台に立たされて、みんなの前で挨拶と軽い自己紹介を、まったく緊張することも無く軽くこなしていたキャロルさんがカッコよかったね。まあ、他のみんなから見たら、フリフリメイド服のおかげで子供が頑張って大人ぶっているようにしか見えなかったんだろうけど……。父様と一緒に挨拶して回ってた先々で、可愛い可愛いと撫で回されてたのが見てて面白かった。


 お昼に始まったお祭りは夕方を過ぎても全く終わる気配を見せず、夜になって宴会へと移り変わる。中には朝から既にお酒を飲んでた人もいたけどね。兄様とか。

 みんな家族が増えることがとても嬉しそうで、お祭り、宴会の間中キャロルさんの周りは大賑わいだった。


 私もそんなキャロルさんのすぐ側にいたので、つい来る人来る人と話し込んじゃったり、キャロルさんと一緒になってみんなに撫でられまくったり、からかわれるキャロルさんをシアさんとニヤニヤしながら眺めていたり、と。夜遅くまで、私にとって夜遅くまで起きていてしまったのだ。

 最後の方はもう全然記憶に無い。途中眠くなって、でもまだここにいたくてうつらうつらしながらも眠気に耐えていたのは覚えているのだが、限界が来て眠ってしまったみたいでシアさんに家まで運んでもらったらしい。寝ている私の着替えはもちろん、お風呂、歯磨き、その他寝るまでの準備をシアさんが全部一人でやってくれたみたいだね。まったく、凄いメイドさんだよ。途中で全く起きなかった私もある意味凄いのかもしれない……


 シアさんはお世話ができて嬉しそうだが、次からはまだ自分で動けるうちに帰らないといけないね。寝ている間にお風呂とか着替えとか、ちょっと不安になってしま、はっ!? 信じてる! 信じてるよ!! 迷惑を掛けたくないだけだよ! うん!




「うん、それはキャロルが悪いわ。ま、欠伸は気をつけても出ちゃうものだからね、今後見れなくなるなんて事は無いだろうと思うけど……」


「姫はあんまり夜更かしもしない、と言うかできないんだけど、早寝早起きの良い子だからね。欠伸自体夜中トイレに起きた時くらいにしか見れないレアな動作なんだよ? それを見れて喜ぶならともかく、注意しちゃうなんてさ、そんなことじゃここのメイドは務まらないよ」


 何故かキャロルさんが、フランさんとメアさんに怒られている。本当に何故だ……


「うん、ホントにごめん。シア姉様に言われて気付いて大反省してたところ。ああ……、さっきのシラユキ様、本当に可愛かったなー……」


「むう、思い出してニヤニヤしないで! みんな私より遅くに寝て早く起きてるのに何で平気なふわぁ……、うん、ごめんなさい……」


 駄目だ眠すぎるー! また喋りながら欠伸が出ちゃったよ。


「可愛い……。あ、シラユキ、そんなに眠いならまた寝ちゃう? 一緒に寝てあげるよ?」


「ちょっと、フラン? 今日は私の当番の日だよ。ねね、姫、無理しないでいいからさ、私と一緒に寝ようよ」


「いいえ、当番制は夜だけのことでしょう。姫様、是非私と一緒に……」


 うーん、三人の言うとおりまた寝ちゃおうかな? 今日は特に何かする予定がある訳でも無いし、この眠気は正直耐えられそうに無い。でも食べてすぐ横になっちゃうのはいけないと思うなー。


「し、シラユキ様凄い。欠伸一つで三人ともメロメロになっちゃってるよ……。んー、私も一緒に寝てみたいな。シラユキ様、私もたまには」


「見習いが何を言いますか!! そんな事を考えている暇があったら姫様に冷たいお飲み物でもお持ちしなさい!」


「ははははい! 行って来ますー!!」


 キャロルさんはシアさんの一喝に、まさに飛び上がるほど驚き、部屋の外へ駆け出して行ってしまった。



「シアさん、今のはちょっと言いすぎじゃないかな? 私もキャロルさんと一緒に寝てみたいと思うよ?」


 今のはシアさんらしくない過剰な反応だったね。私もビックリして眠気が少し飛んじゃったよ。

 キャロルさんならこの三人みたいに変な事はしてこないだろうし、その、私に揉まれる胸も無いだろうし、お互い安心できると思うんだけどな。


「え、ええ。私も今反省しているところです。あの子はこれくらいの事を気にするような細い神経の持ち主ではないのでいいのですが……。はぁ、少し自己嫌悪してしまいますね。ですが、姫様? ご自分の可愛らしさをきちんと把握してくださいね? キャロが姫様の寝姿に欲情し、襲われでもしたらどうするのです。いいえ、確実に襲われますね」


「言い切っちゃうんだ……。でも、うん、私もちょっと心配かな。シラユキは自分の可愛さ、ホントに分かって無いでしょ? キャロルはレン一筋って言ったって、シラユキの可愛さをベッドの中目の前で見ちゃったら、辛抱堪らなくなって襲っちゃうわよね。私もキスは我慢できなくてしまくってるし」


「シアならいいけど、キャロルはまだ姫のお相手には認められないなー。シア一筋なんだよね? 好き合ってるならともかく、一時の感情の爆発で姫と……、なんて許せる訳が無いよ。もしそんな事にでもなったりしたら……、生かしてはおけないね」


 きゃ、キャロルさん信用無いなあ……。そんな事ある訳無いってば。むしろフランさんが寝てる私にキスしまくってる方が問題だよ。


 そんなありえない事より、みんなして可愛い可愛い言いすぎ! まあ、そう言われるのは素直に嬉しいんだけどさ、小さな子供でさらに身内贔屓の目で見てるからそう感じるだけだって。今私は子供だからいいけど、大きくなってからも綺麗だの可愛いだのなんて言われてたら勘違いしちゃうよ。

 でも、母様の娘で姉様の妹の私、ある程度の美人になれる素質は……? ふう……、夢は見ないでおこう。容姿云々の前に、身長と胸だ!


「お待たせしました!!!」


「はやっ。ぜ、全然待って無いよキャロルさん! あ、シアさんには注意しておいたからね。キャロルさんは悪く無いんだから、気にしないでね」


「シア姉様を注意? さ、さすがはシラユキ様、誰にもできませんよそんな事……。あ、オレンジジュースでよかったですよね?」


「うん、ありがと。いただきまーす」


 シアさんって結構注意されまくってると思うんだけど……。うわ冷たいなこれ、目が覚めるー!!

 物の数分で厨房とここを往復したのか……、キャロルさんも凄いメイドさんだね。まあ、メイドさんは四階の高さを数分で往復できる必要は無いんだけど。


「まあ、先ほどは私も言いすぎてしまいました、が、姫様はリーフエンドのお姫様なのです。いくら姫様がお優しい方と言っても、最低限それだけは忘れないようにするんですよ」


「は、はい……。シラユキ様は本当にお優しい気さくな方で、つい友人かシア姉様の妹の様に思ってしまうんですよね」


「私も自分がお姫様だっていう事をよく忘れちゃうんだよね。でもそれは毎日私をからかってるシアさんが言っていいことじゃないと思います! ふふふ」


 私をからかう事を生きがいにしてるシアさんこそが言われるセリフだよ! まったくもう! シアさんの妹かー……。ふふ、よく分からないけど嬉しいね。


「今はそこまで気にしなくてもいいって。シラユキはお姫様でもまだまだ子供だし、成人するまでは全力で甘やかしてればいいと思うよ。私は成人してからでも甘やかすつもりだけどね」


「そうそう。姫は成人しても多分キャロルより小さいだろうと思うし……。私も成人したくらいじゃ可愛がるのはやめれないと思うなー」


「伸びますー! 伸びるもん!! キャロルさんより大きくなって見せるもんだ!!」


「伸びませんよ?」


「言い切らないで!! シアさんに言われると本当にそうなりそうで不安になっちゃう!!」


「三人とも全然お姫様扱いしてないよね……。私はまだ見習いだからしょうがないか、はぁ……。早く私もシラユキ様をからかえるくらいのメイドになりたいな。胸も揉んで大きくしてもらいたいし、吸われるのにも興味があるし……、はっ!?」


 メイドさんズ三人と、プラス私の視線が自分に集中している事にキャロルさんはやっと気付いたようだ。

 キャロルさんは結構独り言が多いね。考えが筒抜けというか、素直な人なんだね、きっと。そのせいか言ってはいけない事をついつい口に出しちゃう事も多そうなんだけど。


「やっぱり胸の大きさはまだ気になるんだ? 姫とは一緒に寝させられないから……、シアに毎晩揉んで貰ったら? 相手がシアの場合は揉む側がいいかな? あはは」


「今でもそれくらいはしてるんじゃないの? レンと同じ部屋なんだし、あ、まさか、Hもしてるとか? 好きな人と毎晩同じ部屋、同じベッドで我慢できる訳無いよね。うふふふふ」


「してません! まだ言いますか貴女は……。精々抱きつかれて眠るくらいですよ」


「私は毎晩でも甘えさせて欲しいんだけどね。でも、抱き枕にさせて貰ってるだけでも満足だよ。シア姉様のいい匂いにムラムラしちゃうんだけどさ、その時は、まあ、シア姉様が寝静まってから自分で」


「黙りなさい。……姫様?」


 じ、自分で!? 自分で何!? シアさんって確かにすっごくいい匂いなんだけど、え? む、ムラムラ来ちゃうの? ほ、ホントにキャロルさんって女の人が好きなんだ……

 フランさんも、メアさんも、あれ? 姉様だって母様だっていい匂いだよね? キャロルさんはこんな素敵過ぎる女の人たちに囲まれて我慢できるのかな……。おおお、襲われちゃうんじゃ……? はっ!? わ、私も気をつけなきゃ!? ……私は無いか。私はシアさんだけに気をつけておけばいいよね。




「うわあ、真っ赤。姫ももうちょっとこの手の話に免疫付けてくれないかなー」


「なんで二十歳くらいでそこまで理解しちゃうんですか……。メアリーとフランが色々教えすぎてるんじゃないの? お姫様にそんな事教えちゃっていいの?」


「ん……、そんなとこかな。あー、うん、シア、さすがに言っちゃ駄目だよね」


「当然でしょう。姫様もキャロにはまだ話さないようお願いしますね。見習いを卒業後、エネフェア様の許可を得てから、という事にしておきましょう」


「何の事です? って、聞いちゃ駄目か。頑張って見習い卒業しなきゃなあ……。くう、いいな、家族の内緒話かー」


「何の話だっけ? ああ! 私自身もう完全に忘れちゃってたよ。そんな事もあったねー」


「か、軽い……。普通はもっと、結構重要な、重大な秘密の筈なのにね。ふふふ、頑張んなさい」


「ふむ……、丁度いですね。今日は姫様も特にご予定は入っていませんし、メイドとしてではなく、姫様のお側に立つための心構えを私たち三人で教えてあげましょうか」


「え? あの……、まだメイドとしても半人前どころかそれ以前の問題ですよ? 私。いきなり姫様のお側仕えになるための修行はちょっと、荷が重過ぎるのでは……」


「ああ、勘違いしない様に。姫様のお側仕えはあなたが一人前になろうとも、私は勿論、メアもフランも譲る訳が無いでしょう? 人の話はしっかりと聞きなさい、心構え、ですよ?」


「う? そんなのあるの? 私も一緒に聞いてもいい?」


「それじゃ、姫にはお姫様としての勉強を教えようか」


「しまった!! 普通のお勉強はいいけど礼儀作法とかはちゃんとできる気がしなーい!!」




 なんだかよく分からないうちに始まった、私の側に立つための心構え? の勉強会。

 どうせ三人とも今日は暇そうだし、私とキャロルさんをからかって遊びたいだけだろうとは思うけど、どんな内容か気になるのは確か。いつでも逃げられるようにだけはしておいて、成り行きを見守ろうと思う。


 まあ、私も今日は暇なんだよね。ふふふ。




また暫くこんな、ゆるゆるだらだらとしたお話が続きます。


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