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その132

注意!!

長いです。いつも以上にイミフです。

 キャロルさんは真剣な顔つきで、私を真っ直ぐ正面から見つめている。どうやら悩みを、自分の心の中を話す決心がついたようだ。だが……



 なんで私!?



 え? 私の事について悩んでたの? 意外すぎるんですけど……。てっきりシアさんか他のメイドさんズか、今日の反応からしてリズさんかも? とは思っていたのだけれど、まさか私だとは……

 無意識のうちにキャロルさんを悩ませるような何かをしちゃってたってことかな? ううう、何したんだろう私……。やっぱり私は悪いお姫様だね、大切な家族をずっと悩ませていたなんてね。それを不満に思っちゃうとか最低すぎるよ!


 しかし、どんな悩みなんだろう? しっかりと聞かなくちゃね! まあ、お姫様らしくなさ過ぎる私に我慢の限界が来たんだろうけど……。お、お説教か!?


 うん? それとも、わ、私の事が……!? な、無いわー。……無いよね!? シアさんのお弟子さんだからきっぱりと否定できない!! わ、私はノーマルなのよ!!

 どどどどどうしよう! もしキャロルさんに告白なんてされちゃったら……? はっ!? シアさんがそれを見て黙っている筈が無い!!

 もしそうだとしたら、シアさんとキャロルさんとで私を取り合う、いや、奪い合う壮絶な戦いが始まっちゃうんじゃないだろうか!?



 ま、ま、町が滅んじゃう!!?






「あのー……、シラユキ様? お、お話してもいいんでしょうか?」


「ちょっと待ってキャロル。シラユキー? どうしちゃったのかしらこの子……」


「か、可愛らしいです……。ええ、どうしてしまわれた、のでしょう?」


「なんか慌ててるな……。何があった? まあ、いい。バレンシア、頼む」


「はい。何やらまた勘違いをして混乱されてしまった様子ですね。どんな勘違いか見当はつきますが……。姫様……、姫様! こちらに戻って来てください」


「ご、ごめんなさいキャロルさん!?」


 お、女の人とお付き合いはできません!!


「ええ!? な、何を謝ってるんですか!? ちょ、と、とにかく落ち着いてください!」


 おおお落ち着けって言われても! あわわわわ……。シアさんとキャロルさんが私の目の前に……

 ご、ごめんなさいリーフサイドの町の人たち……。私のせいで今日この町は……、? 勘違い?


 !?


 お、落ち着いた!! だいじょうぶだ…わたしはしょうきにもどった!


「あ、う、ううん? ななな、何でもないよ? だい、大丈夫、落ち着いてるよ!」


 あー、危ない危ない。つい考えが変な方向に飛んじゃってたよ。キャロルさんはシアさん一筋、シアさんの事を愛しているって前に言ってたじゃないか。思い返すとなんて恥ずかしいセリフだ……


「今の勘違いで思考が飛んでしまったことについては後で皆でからかうとして……。姫様、まずは落ち着いてキャロの話を聞いてあげてください。大丈夫ですよ、それに対して姫様に何かをして頂く、といった様な話ではありませんから。ただ、姫様も真剣に聞いてあげてください。お願いします」


 シアさんは深くお辞儀をして私にお願いすると少し後へ下がり、キャロルさんの言葉を待つ。


「シア姉様、ありがとうございます。でも、からかっちゃ駄目ですよ……、と、すみません。では、お話します」


「そう言ってくれるのはキャロルさんだけだよ……。それじゃ、キャロルさん、お願い」




 みんな静かに、黙ってキャロルさんが話し出すのを待つ。キャロルさんは最初の言葉が出て来ないみたいだ。

 幸いここは個室だし、時間はまだまだ充分にある。さすがに料理に手を付けて待つなんて事はしないが、ゆっくりと話し出すのを待つことができる。


 キャロルさんはまた大きく深呼吸を一つし、ついに口を開く。


「ま、まずは私が今悩んでいる事、それをはっきりとお伝えします。た、旅に出ていいものか、悩んでいるんです。……いえ、違いますね。すみません、言葉が見つかりません……。旅に出る事ができない、出る決心がつかない、でしょうか? すみません、纏まらない言葉で……」


 旅に出る決心がつかない? という事は、もっと前に冒険者に戻る予定だったのかな?


「ええと、何て言ったらいいのか……。その、この国は本当に居心地がよく、毎日楽しく、本当に充実した毎日で……。シア姉様と一緒にいられて、フランとメアリーに料理や掃除の仕方を教わって……。そして、シラユキ様たち王族の方々に本当によくして頂いて……」


「ならこの国にずっといりゃいいじゃねえか。回りくどい言い方しやがって……、それでも年上か? なあ? 今のお前、ホントに弟子の前でする顔じゃねえぞ」


「違うわよ、お兄様。キャロルはSランクの冒険者を目指したいの。キャロルもまずそっちを言わなきゃね。後、お兄様? シラユキが怖がってるわ、落ち着いて」


「しまっ!? シラユキ? お兄ちゃんは怖くないぞー? ちょっとイラッと来ただけだからな? 怒ってないからなー?」


「うん、だ、大丈夫。でもちょっとビックリしちゃった……」


「うおお……、俺は可愛い妹の前でなんて事を……。ああ、キャロル、スマン。続けてくれ」


「は、はい。本当にすみません。自分でも上手く言葉にできなくて……」


「キャロル先生、頑張って……」


 今の兄様はちょっと怖かった……。兄様はたまに言葉遣いがかなり悪くなる時があるんだよね。普段が優しくてカッコいいだけに凄く怖く感じちゃうよ。



 うーん? キャロルさんは、ええと、迷ってるのかな?

 Sランクの冒険者を目指して、町々で依頼をこなして回る旅にも出たいが、この居心地のいい、大好きな人のいる場所でずっと暮らしていきたいとも思ってる、と。


 ふむ……、これは違うね。確かにこれも悩みの一つだとは思うけど、私のみに絞った言い方をしようとした理由にはならない。まあ、私が大好きだから離れたくないって言うならそうなのかもだけど、それを言うならどう考えても私よりシアさんに、だよね?

 多分本当に上手く言葉にならないんだろうね。ゆっくり一つ一つ段階を踏んで、最終的に一番の悩みである、私に対しての何かに辿り着こうとしているんだと思う。シアさんはそれを分かっている筈なんだし、もうちょっと手助けというか、そこまで導いてあげてほしいんだけどな。



「ユーネ様の仰るとおり、私はSランクの冒険者に、シア姉様と肩を並べられるほどの実力者になりたい。なれるかどうか試してみたい。シア姉様のように最強の冒険者と呼ばれるのは難しいと言うか、無理だろうとは思いますけど、背中に手が届く、いえ、せめて背中の見える位置までは辿り着きたい。そのためにはまた、この国だけではなく、大陸中を旅して回る必要があります。強さだけならシア姉様に、森の実力者の方々に鍛えて頂ければ済む事。ですが、強さだけではSランクに届く事など絶対にありえません。特に私は強さのみでAランクに上がったとも言えますし、ギルドからの依頼もことごとく無視してきています。本当に大陸中で依頼をこなしていかなければ、Sランクに上がる事など到底叶わぬ夢でしょう」


 う、うーん。落ち着いて言葉に出せるようにはなったみたいだけど、またちょっと回りくどくなっちゃってきてるかな? 兄様が怒り出さないといいんだけど……


 それも確かに気になる事ではあるのだけれど、今、もっと気になる発言があったね。シアさんが、最強の冒険者?

 元Sランクの冒険者で、今は何でもできる凄いメイドさん。凄い凄いとは思っていたけど、まさかSランクの人の中でも最強のお人だったとは……。シアさん怖い!! でもカッコいい!!


 おっといけない。こんな大事なお話の途中で変な考え事をしてしまった。この事についてはまた後で、シアさんに何となく探りを入れてみよう。

 そのシアさんと言えば……。うん、怒ってるね。自分の事は何一つ話すなっていう約束を軽く破っちゃったしね……。今はシアさんも空気を呼んで黙っているけど、後で叱りつける筈だ。キャロルさんのご冥福を祈ろう。


「はあ……。キャロ、その調子では日が暮れてしまいますよ? 結論から言いなさい」


 ここでシアさんがやっと手助けに、と言うより、ただこれ以上変な事を話されては敵わないとでも思ったんだろう。キャロルさんに最終的な結論をまず言うように進める。


「ごめんなさいシア姉様! け、結論ですか? え、ええと……」


 私のほうをちらちらと見ながら言いよどんでしまうキャロルさん。


「本当に情け無い弟子ですね。はっきりと言ったらどうです、姫様を悲しませたくはないと」


「シア姉様!?」


「え……? 私、を?」


 私を悲しませたくないから、悩んでた? 旅に出る決心がつかなかった? 私の……、せいで?




「あー……、いきなり核心を突きやがったな。だが、俺もまたちょっとイラッと来てたところだ、いいだろう。まあ、確かにキャロルが旅に出ればコイツは寂しがって泣くよな。だからって自分の目標なんだろう? Sランクの冒険者は。それにな、二度と会えなくなる訳じゃない。シラユキだってそれは理解してるさ。気にすんなよ」


「そうよキャロル。どんな悩みかと思ったらそんな事だったの? またちょくちょく顔出しに、遊びに来たらいいじゃない。大丈夫! シラユキを悲しませるなんて私達がする訳が無いでしょ? 安心して行って来なさいって。ね?」


 私を悲しませたくないから旅に出ない? そんな、そんな理由で悩んでいた? 私のせいで旅に出ることができなかった? 私のせいで目標に向けて歩き出すのが遅れてしまった?


「お二人とも、それに、姫様、違うのです。キャロル、早速姫様を悲しませてどうするんですか、まったく……。あなたの悩み、悩むに至った理由、原因があるでしょう。まずは原因を、それから自分はそれに対してどう思ったか、そして今こうして悩んでいる、と順序立てて話してみなさい。これ以上の手助けはしませんよ? 皆様、申し訳ありません。本当に情け無い弟子で、困ってしまいますね」


 苦笑気味に話すシアさん。


 情け無くも可愛い弟子だから放っておけない感じかな? ふふふ、シアさんは優しいね。私も変に考え込まないで、気になったらどんどん、積極的に聞いていかなきゃ!


 キャロルさんは黙ったままだ。しかし、シアさんの助けはもう期待できない。それなら……


「キャロルさん、聞かせて? 日が暮れちゃってもいいから、ゆっくりとキャロルさんの言葉で、お話してほしいな?」


「ははっ。また命令してやろうか? できたらその前に話してくれるといいんだがな」


「駄目よお兄様、今度こそシラユキに嫌われちゃうわよ? だから今度は私ね。キャロル、話しなさい。命令よ、ふふふ」


「キャロル先生? シラユキ様のお願いに、ユーネ様からの、ご命令ですよ? ふふふ。皆さん、なんてお優しい……」


 私たちが無理矢理にでも聞いちゃえばいいね!



「分かりました! ああ、まったく、なんて情け無いんだろ私って。そうですよね、話には順序ってのがありましたよね。ふふふ、すみませんでした。何をするにもまずは最初から、スタートがありましたよね。ふう……。そうですね、最初の原因と言えば、ウルギス様からのお言葉ですね」


「父様の!? あ、っと、ごめんなさい。続けていいよ」


 くう、キャロルさんがいつのも調子に戻ってくれたから、ついついこっちもいつもの様に反応しちゃったよ。

 父様のせいだったのか……。キャロルさんをここまで悩ませるなんて、父様は一体なんて言ったんだろう?


「今でもはっきり、一字一句違わず覚えています。あの日、私がシラユキ様を泣かせてしまったあの日です。ウルギス様とエネフェア様にお叱りを頂こうとしたのですが、そんな事を気にするなとお二人には笑い飛ばされてしまいまして……」


 おお、やっぱりあの日が原因の日だったのか。私の予想は当たっていたようだね。

 私が勝手に泣いちゃっただけだし、キャロルさんには何の責任も無い。それは父様も母様も分かっていた筈だからね。笑い飛ばされるのも当たり前だ。


「ですが、その後こんなお言葉を頂いたのです。不可抗力やからかい過ぎて泣かせてしまったのは、程度にも寄るが笑って許してやる。だが、あの子を悲しませて泣かすことは絶対に許さん。と……」


 へ……? え? そ、それってさ……


「ね、ねえ、キャロルさん。それって考えすぎなんじゃないのかな? キャロルさんがまた旅に出ちゃうのは、寂しくなって泣いちゃうだろうと思うけど……。また会えるんだよね? 会いに来てくれるし、ずっと先のことだと思うけど、旅が終わったら森に落ち着くんだよね? それなら、うん、悲しくは無いよ?」


 ちょっとは悲しくなっちゃうとは思うけどさ。それは父様の言葉とは意味合いが全然違うよね。


「いえ、違うんです。シア姉様もさっき言っていましたが、違うんです……」


「どう違うってんだよ? っと、まだ話の途中だったか……。シラユキ、黙って聞け。まだ原因の段階だ」


「う、うん……。ごめんね、キャロルさん」


 まだ原因が分かっただけ。次はその原因に、父様の言葉に対してキャロルさんがどう思ったか、だよね。



「シラユキ様を悲しませてはいけない。それは誰にだって、この世界中の誰にとっても当たり前のことです。私はその時二つ返事で答えました。勿論です、と。しかし、私は軽く考えすぎていたんです。そのウルギス様のお言葉の本当の意味を理解していなかったんです。シア姉様に言われて初めて気付きました、いえ、改めて思い出しました。私は冒険者、Sランクの冒険者を目指し、大陸中、世界中を旅して回ろうとしていた事を」


「キャロル先生……。ああ……、私にも、やっと分かりました。それは、本当に怖いですよね」


 どうやらリズさんは全て理解してしまったみたいだね。シアさんが、リズさんなら答えに辿り着けるって言ってたとおりだ。

 でも、私にはまだ全然分からない。キャロルさんが冒険者を続ける事と、私が悲しむ事。どんな繋がりがあるって言うんだろう……。リズさんが言うには、怖い事?


「なるほどなあ、やっと分かったぜ。そりゃ誰だって悩むよな……。でも、まあ、さっきのシラユキの言った意味とは違うが、考えすぎじゃないのか? キャロルはAランクでも最上位の実力なんだろ?」


「うん……。絶対とは誰にだって言えないけど、ね。あんまりこういう事は言いたく無いんだけど、言っちゃいけない事なんだけど、冒険者を辞めちゃうのもありよ? それならこの子は悲しむどころか嬉しさで泣いちゃうかもしれないわよ?」


「え、ええ、それが悩みなんですよね……。もうこのまま旅にも出ず、シア姉様と皆さんをお守りして生きていこうかなとも考えてしまって……。はい、情け無い悩みですみませんでした」


 !?


「よく分かんないけど私もそれがいいな!! もう冒険者なんて辞めちゃおうよ! ……ごめんなさい!!」


 しまったあああああ!!! ついあまりの嬉しさに一番言ってはいけない事を言ってしまったよ!!

 私ったら、もう! 人の気持ちを考えずに、自分が嬉しいからってとんでもない事を勧めてしまった!! これは大反省しなきゃね……。後で母様に叱られに行こう……


「あ、謝らないでくださいシラユキ様!! 心の弱い、迷いを振り切れない私が悪いんです! 今、こんな心境のまま旅に出れば、絶対にシラユキ様を悲しませる事になってしまうと思うんです。そんな考えが堂々巡りしてしまっていて……。本当にすみません!!」


「キャロ、姫様もその辺りで……。キャロ? 姫様はまだあなたの悩みの答えを理解しきっていませんよ? 確かにそんな心持では、間違いなく姫様を悲しませる事になってしまうでしょうね。本当にもう辞めてしまいなさい、私も心配です。姫様、はっきりしない情け無い弟子に代わりに、私がまずは説明してしまいますね」


「あああああ……。ごめんなさいシア姉様……。でも心配してくれて嬉しいいい……。辞めちゃおうかなあ……」


 私も心配です、の一言に感動し、シアさんにじわじわと擦り寄っていくキャロルさん。


 よし! キャロルさんはもう置いておこう! シアさんの説明を聞こっと。説明と言えばこの人、シアさんだよね。うん? 分かって無いのは私だけなのか!? 私こそ情け無いよ……




 シアさんは、縋り付こうとするキャロルさんの頭を片手で押さえながら話し出す。


 キャロルさん面白いな……。緊張が途切れて甘えモードに入ってしまったのか? 確かに猫みたいで可愛いね。


「これ以上長引かせると本当に日が暮れてしまいます。リズィーさんにも色々と準備する事があるというのに……。ではまずは、いえ、簡潔にこの子の悩みの結論から。キャロは、死ぬことが怖いのです」


 ん? うん? え? それは誰だって……


「自分が死ぬことにより姫様を悲しませることが怖いのです。この子の本当の悩みの原因、お分かり頂けましたか?」


「ええ!?」




「シア姉様、ちょっとストレートすぎますよ? シラユキ様はまだ子供なんですから、もっと遠まわしに言って差し上げないと……。シラユキ様にはまだ分かりませんよね。冒険者というものは、いつ死ぬとも知れず、明日さえ確実ではないんですよ。それは私もリズも、現役時代のシア姉様だって例外では無かったんです。これが、その、情け無い情け無いと言っていた本当の理由ですね」


「ホント情け無いよな。これでよくAランクの最上位になんて登り上がれたもんだよな、まったく」


「シアのせいじゃない? だって音沙汰が無くなってから百年以上ぶりの再会よ? もう完全に気が抜けちゃったんじゃないかしら。ああ、うん、これは駄目ね。絶対にこんな状態で旅に出るなんて許せない。キャロル、貴女の冒険者としての権限全てを一時的に剥奪するわ」


「え? ちょっ、ユーネ様!? この年でいきなり無職になるのはちょっと……」


「キャロル先生? ご自分の今の服装を」


「はっ!? 正式にメイドとして雇って頂けるのですか!?」


「まだ見習のままですが、ね。申し訳ありません、ユーフェネリア様のお手を煩わせてしまう事になるとは思わず……」


「いいのいいの。シアも止めるつもりだったんでしょ? リズ、キャロルの事は私達に任せてくれて大丈夫よ。リズならこんな腑抜けにはならないと思うから安心して送り出せるわ。貴女も安心して行ってらっしゃい。でも、たまにでいいから遊びにーは難しいかな。たまには連絡くらい寄越しなさいね?」


「ふふ、ふふふ。は、はい! 本当に、本当に安心です。ユーネ様、ありがとうございます……」


「あん、もう。友達に頭を下げないの! ほらほら、泣かないで? 元気でね、リズ。暫く先になっちゃうと思うけど、また会いましょう?」


「ええ、絶対に。ルーディン様、バレンシアさん、それに、シラユキ様。また、変わり無い姿をお見せすると、約束します。キャロル先生のこと、よろしくお願いします」


「ああ、任せとけ。お、そうだ、発つ前に一揉みだけでも餞別に……、冗談だ! 室内で炎はやめろ!!」


「ルーディン様でもリズに手を出したら許しませんよ? 同意の上でなら問題ないですが……。まあ、リズ? 一揉みくらいはさせて差し上げたら?」


「ユーネ様のお許しがあれば、一揉みでも、ニ揉みでも、いくらでも。ふふふ、その先でも、私は構いませんよ? ルーディン様は、素敵なお方ですし……。ですが、ユーネ様を悲しませる、結果となるなら、話は別、なのです」


「だーめ!! お兄様に一度でも抱かれたらもう離れられなくなっちゃうわよ? でも、一揉み、一挟みくらいなら……」


「はいそこまでです。リズィーさん、お気をつけて、お元気で、などは元冒険者の私としましては中々言えぬ言葉なのですが、どうかお元気で。もし何か、どうしようもできない事態に遭遇した場合は、『閃光』と『鋼爪』の馬鹿二人組をこき使ってやってください」


「現最強の『閃光』を馬鹿扱い、ですか。ふふ、ありがとうございます。その時は、遠慮なく。キャロル先生、次にお会いする時は、お互い立派な冒険者と、メイドさんになって、いましょうね?」


「はいはい。開き直って一流のメイドを目指そうか、多分冒険者にはそう簡単に戻れないと思うよ……。ま、寂しくなったらいつでも会いに来なさい。この情け無い先生でよければ、ね? あははは」


「そんな事を言われると、すぐに戻って来て、しまいますよ? ふふふふ」




「ビックリしてる間にお別れのお話が終わろうとしてる……。悲しくて泣いちゃうよ?」


「そうなるとキャロは、ウルギス様に絶対許されなくなりますね。ふむ……、極刑もありえるのでは?」


「シアさん怖い!! もう! リズさんへの贈り物とかまだ色々あるのに!!」







8000文字以上に……、長い。

途中で二つに分けるか? とも思いましたが、いい区切りが見つからずこんな長さになってしまいました。

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