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130/338

その130

 最近キャロルさんの様子がおかしい、そんな気がする。

 普段は特に変わりも無く、シアさんに甘えようとして軽くあしらわれたり、フランさんとメアさんに楽しそうに料理を教わったり、高い所の掃除ができなくて嘆いていたり。

 でも、最近、ため息をついていることが多い。考え事をしているのか、窓の外を眺めてぼーっとしている事もあるね。本当にどうしちゃったんだろう?


 いつから? 多分調薬ギルドへ行った日くらいからだと思う。では、どうして? その原因が分からない。

 初めは父様と母様に強く怒られてしまったのかと思っていたんだけど、本人たちに確認してみたらそんな事実は無かった。やはり気にするなと笑い飛ばされて終わったらしい。

 他に原因になりそうな事は……。思い付くのは、私を泣かせてしまった事、フランさんに許す気は無いと言われた事。後は、メイドさんズの脱ぐところが見られなかった事とシアさんの胸を触る許可を貰えなかった事くらいか。シアさんのお弟子さんだけに後半二つも充分ありえてしまう気がする……


 よし、前半二つに絞ってみよう。

 私を泣かせた事で確かに落ち込んでたね。でもそれは、何度も謝って来る度に気にしないでいいよと返していた筈だ。今では謝ってくることも無くなって、また私を可愛がってくれている。これは違いそうだね。

 という事はフランさんに許されていない事なのか? フランさんはもう怒ってはいないようだけど、この事に関しては一生許す気は無いみたいだ。怒ってないけど許さない? 私にはよく分からないね。しかしこちらも、普通に笑いながらお話してるし、料理も普通に教えて貰えてるみたいだから違うんじゃないかなと思う。ぱっと見仲の良い親……、姉妹に見えるくらいだ。


 むう、振り出しに戻ってしまった。いや、消去法で二つは消えたんだ、前進している事は確かだね。

 消去法で残った二つ……、? やっぱりメイドさんズの生着替えが見たかったのか!? 無いわ!! ならばシアさんの胸をそこまで触りたかったのか!? 無い……、とも言い切れない!!




 恥ずかしい結論が出てしまった……






「む、どうやら考え事の答えが出たようですね。しかし何やらあまりいい答えではなかったようで……。姫様、お悩みでしたら私たちに遠慮なくご相談くださいね。全力を尽くし姫様を悩ます問題を解決してご覧に入れますよ」


「あ、終わった? ねえ、シア? 揉まれなかったんだけど……、やっぱりシアだからなのかな? っと、それは置いておいて……、シラユキ? シアの言う通りよ。一人で抱え込まないで、悩み事があるなら私たちに相談しなさい。ま、まあ、私じゃあんまり頼りにならないと思うんだけどね。私はお姉ちゃんなんだから、可愛い妹のために何かしてあげたいと思うのは当然のことなのよ!」


 うん? あ、忘れてた。そういえば今私、姉様の膝の上にいるんだった。むう、いけないいけない。姉様に可愛がられているというのに考え事をしてしまうとは……

 姉様の膝の上は、母様とも、メイドさんズともまた違った良さがあるね。今日はされなかったけど、座らせてもらっている時にくすぐられるのは姉様だけだ。そのくすぐりが私は大好きなんだよね。最高に楽しく幸せな気分になって、ついさらに甘えてしまうのだ。でも恥ずかしいのでおねだりはしない。


「うん。ありがとうシアさん、ユー姉様もありがとう! ……揉む?」


「あ、うん。シアからね、シラユキが膝の上に座ってるときに考え事を始めると胸を揉んできますよ、って教えてくれてね? ちょっと揉まれてみたいなと思ったのよ。一緒に寝るときは絶対揉まれるらしいんだけど、シアは聞くまでも無く絶対代わってくれる訳もないし、メアもフランもこればっかりは譲れないって言って代わってくれないのよ。それでちょっと、今日は試しにずっと膝の上に乗せてたの。でも揉んでくれなかったわね……。やっぱりシアだから? それとも、大きさ? シラユキは大きな胸が大好きだもんね……。お姉ちゃん悲しいわ……」


「そんな理由だったの? 今日はずっと甘えさせてくれて嬉しかったのに……。ユー姉様も充分大きいよ? 母様とメイドさんみんなが大きすぎるだけだよ……」


 よく分からないが、どうやら姉様は私に胸を揉まれたかったらしい。多分シアさんたちが、特にフランさんが嬉しそうに話しているのを聞いて、羨ましく思ったんだろうね。

 胸を揉むくらいはいくらでもしてあげてもいいとは思うんだけど、ちょっと今、改めて揉むのは恥ずかしいね。一緒に寝てるときとか、考え事してるときに無意識に揉まれるのがいいのかもしれないね。


 なんか私、自然にいやらしいこと考えて無いか……!? くっ! この考えは振り切らなくては!!


「そうそう、それなのよ! メイドのみんな大きいわよね? シラユキに胸を揉んでもらうと胸が大きくなるって噂なの! だからね、シラユキ? 揉みまくって欲しいのよ!!」


「無いよ!! みんな元から大きかったよ!! みんなもげ」


「お兄様が言うにはフランとメア、大きくなってるらしいわよ?」




 なん……だと……




「あら? シラユキ? シラユキー? しょ、ショックで固まっちゃったみたい……。無理も無いわね、私だってお兄様に聞かされたときは大ショックだったし……」


「あ、あの、ユーフェネリア様? ルーディン様は私については何か仰られていませんでしたか?」


「え? ああ、うん……。シアの胸は凝視すると睨まれそうだからあんまり注視しないようにしてるんですって。自分の胸の事なんだから、サイズ測り直してみたらいいじゃない。私から見たらシアだって充分すぎるほど大きいわよ?」


「い、いえ、胸のサイズは自分でも毎日……、なんでもありません。しかし、嬉しいですね。私の胸を大きいと言って頂けるのは姫様とユーフェネリア様のお二人だけですから。毎日仰って頂きたいくらいです。それよりもまさか、あの二人はまだ育っているというのですか……。羨ましいを通り超え、殺意さえ覚えてしまいますね」


「そうよねー。羨ましいったら無いわ! ……シラユキ? そろそろ戻って来なさーい? むう……、揉んじゃうわよ?」


 !?


「わにゃあ!! ユー姉様やめて!! ふふふふ……、くすぐったいよ! ふふ、ふふふふ……。ユー姉様大好きー!!」


 姉様に胸を揉まれてしまった!! 揉むほど無いからくすぐると言ったほうがいいんだけどね。 姉様のくすぐりは、笑いすぎて苦しくなったり涙が出たりもしない、絶妙な力加減。職人技だね。これは本当に、されてて楽しく嬉しく、大好きなのだ。


「か、かか、可愛い! シラユキ可愛すぎる!! ああ、もう! この子のためなら何だって出来ちゃうわ!! さあ、シラユキ! 遠慮なんてしないで、悩み事をこの優しいお姉ちゃんと綺麗なメイドさんに打ち明けなさい!!」


 全力で頬擦りをしてくる姉様。


 し、幸せすぎる……。もう悩みとかどうでも……、よくない! 危ない! 今完全に忘れてたよ! キャロルさんの様子がおかしいことを悩んでたんだったよ私は!!


「忘れてましたね? 姫様。さすがはユーフェネリア様ですね。一時的にとは言え姫様に悩みを忘れさせてしまえるとは……。では、改めまして、姫様? この、ええと、き、綺麗なメイドにお悩みを打ち明け願います」


 ちょっと照れながら言うシアさん。可愛い……


 確かに姉様に可愛がられて幸せだったからもあるけど、主な原因はメアさんとフランさんの胸がまだ大きくなっている、の方で……、っと、いけないいけない。また考えが他へ逸れるところだった。

 これ以上この優しくて綺麗な二人に心配を掛けちゃいけないよね。正直に話して相談に乗ってもらおう。姉様には難しいかもしれないけど、シアさんならきっとどうにかしてくれる筈だ。




「ええとね、キャロルさんのことなんだけどね? 最近ちょっと様子がおかしいと言うか、えーっと、何か悩んでるんじゃないかなって」


 キャロルさんが何か悩んでいるかもしれないと私が悩む。なんという悩み連鎖。


「キャロルが? うーん……? そうなの? シア」


 姉様は気付いていなかった様で、少し考えてシアさんに確認を取る。


「ええ、あの子は今ちょっとした悩み事を抱えていますね。しかし、姫様に、小さな子供に心配を掛けてしまうとは、大の大人が……、? 大の? ふむ……、小の大人が情け無い……」


 しょ、小の大人……? なんて的確な表現なんだ!

 おっと、そうじゃない、シアさんは何か知っているみたいだね、さすがだ。もしかしたら既にキャロルさん本人から相談を受けていたのかもしれないね。


「ねえシアさん、聞いちゃ駄目かな? 人の悩み事を聞いちゃうのはいけない事だと思うけど、どうしても気になっちゃって……。キャロルさんに元気になってほしいし……」


「姫様……、なんてお優しい……。姫様の心遣い、キャロも喜ぶことでしょう。しかし、申し訳ありません、お話しすることはできないのです。お許しください……」


 シアさんはそう言うと、本当に申し訳無さそうに深く頭を下げる。


「むう、シアさんが謝ること無いよ……。勝手に聞いちゃいけないのは当たり前の事だしね。でも、シアさんが知ってるならいいかな。ちょっと安心しちゃった」


「そうね、シアが知ってるなら安心よね。キャロルの悩み事は気になるし、心配だけれど、うん、シアならきっと何とかしてくれるわよね」


 ふふふ、と、姉様と笑い合う。シアさんに任せれば本当に安心だよね。




 よかった、のかな? いや、まだか。でも時間の問題だろうと思う。

 キャロルさんの悩み事がどんな物かは分からなかったが、シアさんが知っているという事で安心して悩みが解消されるのを待つことができる。この最高に頼りになるメイドさんのシアさんのこと、即座に、簡単に、とは行かないかもしれないけど、全て丸く収めてくれるだろう。




「安心したらちょっと力が抜けちゃったね。ユー姉様ー? 甘えさせてほしいなー?」


「うわ珍しい! でも可愛い!! ふふふ。ほーらシラユキ、お姉ちゃんにいっぱい甘えなさい。ふふ、ふふふ、本当に可愛いわぁ……。くすぐっちゃおうかしら?」


「きゃー! ふふふ、あはは! ユー姉様だーい好き!!」


「ふむ……。まあ、しかし、こればかりはあの子自身にしか解決できない問題ですからね。私には何もできる事はありませんし……、する気もありません!!」


「ちょ、拗ねないで、シア。ふふふ、見せ付けちゃったかしら? ごめんね。うーん、簡単に解決する悩みじゃないみたいね……、でも、話を聞いてあげるくらいの事はしてあげてね?」


「シアさんにも難しいことなのかな……。うう、また心配になってきちゃったよ……」


「ふふふ、大丈夫ですよ。キャロなら、あの子なら自分で一番の答えを出す事ができるでしょうから。姫様、ユーフェネリア様も、どうかキャロを信じて待ってあげてください」


「分かったわ、シアがそこまで言うのなら今度こそ本当に安心ね。その答えとやらを楽しみにして待ちましょ。ね? シラユキ」


「うん! ふふ、やっぱりシアさんはカッコいいなー、優しいなー、頼りになるなー。ふふふ、大好き!!」


「私も大好きですよ、姫様」


「ふふふ、久しぶりに告白されちゃった!」




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