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その126

 いつの間にか、本当にいつの間にか調薬ギルドの前に到着していた。シアさんに付いてきただけだから道も覚えて無いよ。

 ふむ……、外観は冒険者ギルドとそんなに差は無いね、入り口横に大きな掲示板もある。冒険者ギルドと違うのは入り口に両開きのドアが付いている事くらいかな? 二十四時間営業ではないんだろう。

 掲示板はやっぱり雑務依頼なんだろうか? 貼ってある紙の数は向こうと比べるとかなり数が少ないね。


 うん? 調薬ギルドって確か、お薬関係のギルドだよね? 一体どんな依頼があるんだろう……

 病気のお薬、怪我のお薬を依頼? でも、それこそ調薬ギルド本来の役目の筈。多分そういった依頼は中の掲示板にあるんじゃないかな?


 おっと、また自分だけで考え込んじゃってたよ。分からないなら分かる人に聞けばいい。

 シアさんとキャロルさんに……、? この二人は元冒険者メイドさんと冒険者だった……。いくらシアさんでも他のギルドの事は詳しくはないよね。


 まあ、中に話しかけやすそうなエルフの人がいたら聞いてみよっと。






「ふーん、ここが調薬ギルド、ね。見た目は普通の建物だね。ねえ、レン、あの紙が貼ってあるボードって……。調薬ギルドに雑務依頼なんて無いんじゃなかったっけ?」


 ギルドを正面から見て、フランさんが疑問に思ったことをシアさんに聞いている。


 むむむ、今ちょっと気になる発言があったね。調薬ギルドには雑務依頼は無い?


「ああ、あれは調薬ギルドの物ではなく、冒険者ギルド向けの雑務依頼ですよ。一応どのギルドの前にもああいった掲示板が設けられていますね。主な依頼は、採取時の護衛と荷物持ちでしょうか? そのギルドに関係したものが貼られる事が多いですね。まあ、実際に依頼を出しているのも調薬ギルド関係者、ギルド前ならすぐに貼り出せますからね、便利なのでしょう。急ぎの依頼でない場合や、どうしても必要な物でもなければこちらへ、なるべく早めに手に入れたい物、期間の限られている物などは冒険者ギルドの方へ貼りに行く感じですね。見ての通り見に来ている方は少ないでしょう? と言うか今はいませんね……。あって無いようなものですね」


 なーるほどねー。こっちも冒険者の雑務依頼なんだね。

 自分から聞くまでも無く疑問に答えが出てちょっと嬉しいね。ありがとうフランさん、聞く手間が省けたよ。これで中にいる人がエルフじゃなかった場合も安心だね。

 知らない人間種族の人にいきなり話しかける勇気は中々持てないし……。情け無いな私。


「ま、たまに見に来ると変わった依頼があったりして面白いよ。あ! ちょっとシラユキ様には見せない方がいいんじゃないですか? シア姉様」


 なぬ? そんな危険そうな、ある意味私にとって危険そうな依頼があったりするのかな?

 しかし、今日はよく先手を打たれる日だね。早速どんな依頼があるのか見に行こうとしてたところだったよ。


「そうなの? シアさん。ちょっと見てみたかったんだけど」


「そうですね……、ではまずは私が先に確認を。それで問題がなければ姫様もご覧になって頂いて構いませんよ」


「あ、私は別に見ても構わないよね? ちょっと気になるから一緒に行くことにするわ。ふふ、中々面白そうじゃない」


 私には見せない方がいいと言う言葉に興味を引かれたのか、フランさんもシアさんと一緒に依頼の紙を見に行くようだ。


「キャロ、姫様に近付く輩は全て排除なさい。責任はウルギス様が持って頂けますから」


「分かりました!! シラユキ様、ご安心くださいね。今日は武器は持って来ていませんが、人の一人や二人、いえ、何人来ようとも素手でミンチに」


「表現が怖い!! キャロルさん可愛いのに言う事がたまに怖いよ……。もう……、大丈夫だから普通にまってようよ。あ、手、繋ぐ?」


 どこまでシアさんにそっくりなんだキャロルさんは……

 キャロルさんに向けて右手を差し出す。


「え? あ、はい!! あああありがとうございます!! うわあ……、柔らかい……、すべすべ……」


 何故かお礼を言いながら私の手を両手で取り、撫で始めるキャロルさん。

 シアさんとフランさんがにこにこしながらこちらを見ている。そんなに微笑ましいのか!


 むう、くすぐっったいなもう……。キャロルさんの手だって柔らか、ん? よく見るとキャロルさんの手って結構傷だらけだね、細かい傷跡がいくつも見える。指先の方は最近出来た包丁傷かな? 絆創膏のような物が貼ってある。前にお風呂で見たときも、腕足にはかなり傷跡があったんだよね。私の魔法で消しちゃおうとしたら兄様と姉様に怒られたっけ……


 キャロルさんみたいな可愛らしい人の手に傷跡なんて似合わないよね。それに、痛々しい。せめてこれだけは治してしまいたい。シアさんの注意が逸れている今のうちに……


「姫様? まあ、無いとは思うのですが、キャロの手の傷跡を消そうと癒しの魔法をお使いになりませんように……。ああ、申し訳ありません。姫様がその様な事をなされる筈がありませんでしたね」


「ううううううん! し、しないよ? しませんよ?」


「なんて分かり易い慌てよう……。駄目だよ、シラユキ?」


 また先手を打たれた!! シアさん鋭すぎるよ……。フランさんにも怒られてしまった。

 まあ、怒られて当然のことなんだけどね。この前の姉様みたいに酷い傷って言う訳でも無いし、ちょっとした包丁傷と昔の怪我の跡だもんね……


「もう、シラユキ様? 前にも言いましたが、私の体の傷は戒めの様な物なんですよ? 大抵は油断から付いてしまった傷ですからね。この傷跡を見て、気を引き締めるんです」


「うん、ごめんねキャロルさん。でも、治したくなったらいつでも言ってね!」


「ふふ。では……。冒険者を辞め、メイドとして暮らしていこうと決めたらお願いしますね。その頃にはもっと上手に、自由に使えるようになっていると思い、いえ、なっている筈ですからね」


 私の手を優しくなでながら、そう、諭すようにキャロルさんは言う。


「言い切られちゃったねシラユキ。これはしっかり練習しないとね、ふふふ。でも、レンがいない時は絶対に使っちゃ駄目だからね? 勿論居ても勝手に使っちゃ駄目。分かった? あんな思いはもう御免だよホントに」


「はーい! 頑張るからね、キャロルさん! 楽しみにしてて!」


「姫様可愛らしい……」「シラユキ様可愛らしい……」


 なんという似たもの師弟。



 癒しの魔法の練習なんて簡単にできるとは思えないけど、キャロルさんが冒険者を引退するのなんてまだまだ何年も、何十年も、もっともっと先の話だろう。その頃にはきっと、キャロルさんが言ったように自由に? 安全に? 上手に使える様になっている……、といいなあ……




 シアさんとフランさんが掲示板の雑務依頼を確認しに行っている間、私はキャロルさんとここでお留守番。ほんのちょっと離れるだけなんだけどね。すぐ目の前だ。

 キャロルさんは私と手を繋いで、にこにこといい笑顔でシアさんたちを見守っている。それでも多分、ちゃんと周りに気を配ってるんだと思う。

 しかし、キャロルさん嬉しそうだなー。私と手を繋ぐくらいの事がそんなに嬉しい事なのかな? ちょっと不思議だけど悪い気はしないね。あ、そうだ、私もキャロルさんと手を繋いでてちょっと嬉しく感じてるし、それと同じなのかもね。ふふふ。


「うわ……。レン、これじゃない? これは確かにシラユキには見せられないわ……。見てどんな反応してくれるのかはちょっと気になるけど」


「どれです? ええと……、ああ、これですね。まったく、こんな物一体何に使うんだか……。ふむ、これ一枚のようですね、破り捨てておきましょうか」


 え? ちょ、え? し、シアさーん?


 シアさんは自然な動作で依頼の紙を剥がし、細かく破り、ご丁寧に魔法で風を起こしてその破片を吹き飛ばしてしまった。


「し、シアさん!? え? いいのあれ? キャロルさん、いいの?」


「よくは無いですけど……。依頼の紙が剥がれ落ちてどこかへ行ってしまう事はよくある事ですし、いいんじゃないでしょうか? それに、これでシラユキ様も見ることができますよ?」


「あ、うん、そっか、そうだね。って! 私のせいみたいな言い方やめて! うう、実際私のせいなんだけどさ……」


「ふふ、本当に問題はありませんからご安心くださいね。さ、私達も見に行きましょうか」


「う、うん。大問題だと思うんだけど……」


 キャロルさんに手を引かれ、掲示板の前へと向かう。




「あ、姫様。姫様のお目にお入れすることのできない様な依頼はありませんでしたので、ご安心ください。ささ、こちらへどうぞ? 抱き上げて差し上げますから」


「シアさんさっき破り捨ててたよね!? 何しれっと言っちゃってるの!?」


「あはは。シラユキ落ち着いて。まあ、いいじゃない、レンのやること一々気にしてちゃ身が持たないよ?」


「ううう、そうなんだけどね……。その依頼を出してた人が困っちゃうんじゃないの? やっぱり気になっちゃうよ」


「ああ、そっちを気にしちゃってるんだ? レン、ちょっと早まったかもね」


「え、ええ……。姫様はなんてお優しい……。見ず知らずの方の本当にどうでもいい依頼のために心痛めてしまわれるとは。申し訳ありません、軽率な行いでした」


「や、破っちゃった物はもうしょうがないですよ! ホントに優しすぎる方だなあ……。シラユキ様、他の依頼を見てみませんか?」

 

「うん。それじゃ……、フランさんお願い」


「あれ? 私? ふふふ。いいよ、おいで? レンはちょっと反省してなさい」


「姫様!? ああ、そんな……。くう、しかし、姫様がお与えくださった罰、喜んで受けましょう」


「なんでちょっと嬉しそうなんですかシア姉様……」




 その後、フランさんに抱き上げられ、たまにくすぐられながら依頼を一通り見てみたのだけれど、特に目新しいものは無かった。

 採取の護衛兼荷物持ちの依頼。少し危険な地域での採取の依頼。やはり調薬ギルド前の掲示板なだけあって、素材の採取関係の依頼ばかり貼られていた。


 私に見せられないような依頼とはなんだったんだろう? シアさんの一言からすると何かの採取依頼な気もするけど……

 まあ、いいや。考えても答えは出ない。教えてもらう事もできないだろうし、諦めよう。


 入り口で随分と時間を使ってしまった気がするね。早く中に入ってフランさんのお買い物を……


 !?


 調味料!? 調薬ギルドで調味料!?


 そうだ、そうだよ! なんか変じゃないかそれ!!

 むう……、どうやらフランさんと町でお買い物、さらに調薬ギルドへ初めて行く事の嬉しさが強すぎて疑問に思わなかったみたいだ。嬉しさで頭が麻痺していたのか……







すみません、まだ入り口なんです……


十二歳以上編までのキャラクターの簡単な紹介を一つ書こうと思います。

フルネーム、身長、年齢、髪の色と長さと瞳の色、主な髪型、くらいでしょうか。

後は少しだけ、本当に簡単な紹介文を数行程度ですね。


結構先、忘れた頃の投稿になるかもしれませんね……


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