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その124

「くっくく、はははっ。それは疲れただろう? くくくっ。ふう……。最初は排除するべきか悩んだが、やはりバレンシアの言うように放置して正解だったな。疲れるがいい友人なんだろう? 性格はああでも、最低限の常識は持ち合わせているみたいじゃないか。シラユキに手を出す事もありえんだろうしな」


「ええ、そうね。ふふふっ。本当に楽しそうな子みたいね……。私もその時の皆の反応、見てみたかったわ」


 帰宅後、今日の出来事を父様と母様に話したら、笑われて大喜びされてしまった。

 最初は排除するか悩んだとか初耳なんですけど……。まあ、いいや。本当に疲れる人だけど、本質は優しいいい人、いいお友達だからね。ただ本能に忠実なだけの人なんだよ、理性はちゃんと働いて……、? それなりに働いているんだよっ。


「うう……、ウルギス様公認のご友人なんですか……。私は本当にシラユキ様の教育に悪いと思うのですが……。ああ、心配です」


 キャロルさんはまだ納得がいかないみたいだね。当たり前か……、あの人とは年単位でお友達をしている私でもかなり疲れさせられるからね。話してる内容を理解しちゃってるから、私の教育に悪いとかはもう無いと思うんだけど、キャロルさんには分からないか……。でも、全部が全部理解できてる訳じゃないんだよね。今日だって分からないところも多少あった。キス以外で女の人の口を塞ぐ? あれは一体どういう意味で……


 !?


 まずい! いやらしい事に決まってるよ!!


 駄目だ、そんな事に興味を持っちゃ駄目だ私!! 考えるな、忘れるんだ!!

 いいい今さらだけど、ソフィーさんは私の教育?に悪いんじゃないだろうか……!?






「そこまで心配する事は無いさ。それだけこの子の事を考えてくれているという事か……。優しい子だな、キャロルは。俺たちがここまで安心して静観できるのは、バレンシアがいつもシラユキの側にいてくれるからなんだ。キャロルもそうは思えないか?」


 そう、父様がソフィーさんについての報告を受けてから、それでも静観を決めたのはこれが一番の理由だと思う。

 シアさんなら、本当に私の教育に悪いと思う人なら即座に排除している筈だからね。ソフィーさんの場合は、多少教育には悪いかもしれないが、とても面白そうな人なので自分が監視しておけばいいや、的な感じなんだろうとは思うけど……。まあ、実際にシアさん抜きで会いに行くことはありえないし、気にしなくてもよさそうだ、安心だね。危険な会話になりそうなときもちゃんと止めてくれてるしね。


「は、はい……。シア姉様ならば絶対の信頼を寄せれますね。確かにそう考えると安心なのかもしれません。個人的には排除をお進めしたいのですが……、はっ! すみません! 私個人の印象の良し悪しでシラユキ様のご友人を測ろうとするとは……。あ、あああ……」


「キャロルさん!? もう、気にしすぎだよ」


 どうやら自分の個人的な好みで私のお友達の排除を進めようとしたことに気づいて、大反省してしまったみたいだね。

 ふふふ、キャロルさんはやっぱりシアさんのお弟子さんだね。こういうところはシアさんにそっくりだよ。


「落ち着いて、キャロル。シラユキが心配だからこそ出て来た言葉でしょう? 謝る事なんて何一つ無いわ。ふふ、ありがとね。これからも遠慮しないで進言して来て頂戴。でもね、バレンシアの判断を信じてあげてね?」


「は、はい……!! はあああ……、私程度になんてお優しいお言葉を……。エネフェア様……、お優しい……、素敵……」


 キャロルさんは母様の優しい言葉に盛大に感動してしまっている。


「ふふふ、この子も本当に可愛い子ね。冒険者を辞めて、本当の意味で家族になれる日が今から楽しみね。シラユキも貴女のことはとても気に入っているみたいだし、ふふふ。あ、その時は私たちに甘えてもいいのよ? 私たちから見れば貴女もまだまだ子供に……、私たちから見なくても子供に見えるかしら? ふふ、ふふふふ。今、少し甘えてみる?」


 私は今父様の膝の上にいるので、母様の膝は今空いている状態。

 母様は自分の腿をポンポンと叩き、キャロルさんを呼ぶ。


 面白いな、三百五十歳以上のキャロルさんが子供扱いだよ……。ま、まあ、子供扱いはいつものことなんだけど……


「ええ!? えええええエネフェア様に甘える!? なななっ! そんなっ、恐れ多いです……。あああ、でも、エネフェア様お綺麗……。行っちゃおうかな……、あいたっ! え!? あ、シア姉様?」


 母様の誘惑に負けフラフラと歩み寄ろうとしていたキャロルさんを、シアさんがチョップを一撃入れて現実へ戻す。


「落ち着きなさい。エネフェア様に甘えようなどと……。まさか、姫様の特等席であるエネフェア様の膝の上へ乗ろうと? たとえエネフェア様ご本人が、そしてお優しい姫様が許そうとも、この私は到底許す事などできませんね」


 あれ……? うわ! シアさんが珍しく本気で怒ってる!!?

 え? 今のどこに怒る要素が? 子供扱いされたキャロルさんが怒るのなら分かるんだけど……


「ごごごごめんなさいシア姉様!! エネフェア様! 本当に失礼なのですが、申し訳ありません、遠慮させて頂きます!! お許しください!!」


「あら? そう? 残念だわ。もう、バレンシアもそこまで怒ることないのに……、まったく。それじゃ、代わりにシラユキを甘えさせてあげちゃおうかしら? シラユキ?」


「へ? あ、うん!」


「ああ! シラユキ!! く、くそう……、やはりエネフェアには勝てんか……」


 父様の膝の上から降り、そのままの勢いで母様に駆け寄り、抱きつく。


「ふふふ。母様ー!」


「ほーら、ちゃんと座りなさい? ああ、可愛いわ……、可愛すぎるわこの子……」


 母様に撫でられ、頬擦りされ、キスもされまくる。し、幸せすぎる……


 父様が悲しそうにしてるから後でちょっと甘えてあげよう。今日は父様と一緒にお風呂に入ろうかな?



「よく見てご覧なさい、キャロ。あなたはあの姫様のお幸せそうな可愛らしい笑顔を奪おうとしていたのですよ? それがどれほど愚かな、決して許されない行為だと何故気付かなかったのですか……!!」


「わ、私はなんて事を……!! そんな愚かな行いをしてしまうところだったなんて……。あああ、シラユキ様本当に可愛らしい……。見ているだけで幸せになってしまいますね」


 何か小声でこそこそと大袈裟なやり取りをしているようだけど……、母様の膝の上で幸せ全開の私には全く気にならない。好きにさせよう。


「ああ、姫様がお幸せそうだと私たちも本当に幸せだ。なあ? カイナ」


「そうよね……。私もあんな風に甘えられたいわ……。一緒に寝ることのできるバレンシアが羨ましい……」


「私の当番は絶対に譲りませんが、メアとフランに頼んでみたらどうです? まあ、あの二人もそう簡単に譲るとも思えませんが」


「た、頼んでみるか……? い、一度姫様に胸をだな」


「え、ええ。吸ってもらいた」


「吸わないよ!!? カイナさんもクレアさんも私のこと赤ん坊扱いするんだ!?」


 さすがに止めるよこれは!!!






「ふーんだ。どうせ私は甘えん坊の子供だもーんだ!」


「ああ、拗ねてるシラユキも可愛いわ……。でも……、この子ももう二十歳なのよ? 子供扱いはいいけど、赤ん坊扱いはやめてあげてね?」


 できたら子供扱いも……。うう、二十歳なんてまだまだ子供だし、しょうがないか。

 相変わらずと言うか、私お付のメイドさんズは一緒に寝るときにたまに、その、そういう事をしてきているみたいだ。本人達曰く、幸せ過ぎてやめられないとのこと。ホントに幸せそうに話すからあんまり強く言えないんだよね……

 寝てるときの私も私だよ!! ……あれ? 私が悪いんじゃね? 無意識とは言え、吸っちゃう私が悪いんじゃないか……?

 ああ、そうだ……、赤ん坊みたいな事をしてしまう私が悪いんだよ……


「な、何故か姫様が落ち込んでおられるのですが……。あ、あの、姫様が一言やめろと命じてくだされば、私もメアもフランも即座にやめるんですよ? お、落ち込まれてしまうとは……、さすがにもうやめておいた方がよさそうですね。申し訳ありませんでした、姫様。姫様の優しさに付け込んでしまっていたようですね。あの二人にも私から伝えておきますから、安心してくださいね」


 落ち込む私に勘違いしたのか、シアさんが謝り、やめようとまで言ってくる。


「いいよ、やめなくても、私が寝てる間の事だしね。でも、話題に出すのはやめてほしいかな……。やっぱり恥ずかしいよ」


 メイドさんズの楽しみを奪うなんてことは絶対にしたくない。ただ、その事を話題に出して私を赤ん坊みたいに言うのだけはやめてほしいんだ……


「も、申し訳ありませんでした!! 私の不用意な一言で姫様を落ち込ませてしまう事になるとは……。くうっ、これはどう償えば……」


「クレアは胸としか言ってないじゃない、悪いのは私よ。姫様、どうか、罰するなら私を……」


「まったく、大袈裟だな二人とも。シラユキがお前達家族に罰を与えるなどする訳が無いだろうに。まあ、シラユキ可愛さから来る行動なのだからしょうがないだろう。誰が悪いという事は無い。強いて言うならこの子の可愛さが悪……くないぞ!? お、俺は今なんという事を言ってしまうところだったのだ……!!」


 フォローを入れた父様が落ち込んでどうするのよまったく!



「ふふ、ごめんねみんな、気にしないで! あ、そうだ、父様? 今日一緒にお風呂入りたいなー」


「お、おお……。なんて優しい子なんだシラユキは……。ああ、そうだな、最近はバレンシアとばかり入っているからなあ。十歳くらいまでは俺と毎日一緒に入っていたのだがな……。ん? そういえば、どうしてバレンシアと入るようになったんだ?」


「どうしてって……、? どうしてだろう? 言われてみれば、今はシアさんと一緒に入るのが当たり前になっちゃってるね。うーん……?」


 本当に、言われてみれば、いつのまにか、だ。


 別に父様と一緒にお風呂に入るのが嫌になった訳じゃない。思春期に入った女の子は嫌がるようになるが、そういう訳でもない。

 まあ、私は思春期が来ようが、成人になろうが絶対に嫌になるなんて事はありえないんだけど。父様のことは大好きだし、勿論兄様とだってだ。兄様とは本当にたまにしか一緒に入ってないんだよね。いつも姉様と一緒に入ってるっぽいし。まあ、それは今は置いておく。


「シア姉様と一緒に……。シラユキ様、羨ましいです」


「ははは。おお、そうだ。キャロルもバレンシアも一緒にどうだ?」


 シアさんと一緒にお風呂、という言葉に反応して羨ましがるキャロルさんに、父様がとんでもない提案をする。


「ええ!? え、あ、その……、シア姉様と一緒に入れるならそれもいいかも?」


「キャロ……。はあ……、今日は姫様もウルギス様と入られるようですし、一緒に入ってあげますか。まったく、いい大人が子供のように……」


「は? え? や、やったー!! あああ、シア姉様とお風呂……!! 嬉しすぎるうううう!!」


 本当に子供のように喜ぶキャロルさん。


 むう、可愛いな……。しかし、シアさんに何かされるんじゃ……。うん? あ! シアさんが何かされる側か!? なにそれ凄い!! キャロルさんはやっぱり凄いや! 意味不明だよ!!!




「四人で入ればいいだろう? お、どうせならクレアもカイナも、エネフェアもどうだ? うちの風呂ならここにいる全員が入ってもまだ余裕があるだろうしな」


「わ、私もですか!? 私はその、ウルギス様にでもその、肌を晒すのは……」


「ううううううウルギス様とおふ、お風呂……。はうううう」


「父様なんてこと言うの!? カイナさん? カイナさーん!? ああ、駄目だ、完全に茹で上がっちゃってるよ……」


「駄目よ、ウル。あなたから見たらみんな子供に見えるだろうから仕方ないのだけれど、他の皆から見たらあなたは素敵な男性なのよ?」


「むう……、そうか。それならエネフェアと三人で入るとするか。なあ? シラユキ」


「うん! 父様、気をつけなきゃ駄目だよ? みんな綺麗なメイドさんだから一緒に入りたいのは分かるけどね」


「……ウル?」


「こらシラユキ何を……、エネフェア!? 違う! 違うぞ!?」



 


5年程度では誰も特に何も変わらず、ですね。

シラユキはさらに子供っぽくなったかもしれませんが……

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