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その119

「メロンパン? 何? メロン味のパン? うーん……、あんまり美味しそうには思えないんだけど、折角のシラユキのリクエストだしね。ちょっと考えて作ってあげましょうか」


「あ、違うの違うの。味はメロンの味じゃなくって、あれ? アレは何味って言えばいいんだろう……。メロンみたいな見た目のパンでね、えーと、ええと……」


「見た目がメロン? 丸いの? 面白そうだねそれ。フラン、そんなの作れる? メロンの形のパンかー……。でもさ、肝心の味が分からないと作れないよ、姫?」


「丸いって言えば丸いけど、半分に切った感じなのかな? 表面にメロンみたいな模様が……、あれれ? メロンってあんな模様じゃないよね……。うーん、縦横に線を入れるだけでいいかな多分、うん。味は、えーと、甘い?」


「甘い!? 漠然としすぎだよ……。やっぱり面白可愛いわこの子。模様は表面に切れ目を入れればいいとして、味は甘い……。んー、シラユキの言う感じだとただの甘いパンだよ? ほかに何か特徴は無いの?」


「と、特徴? う、うーん……? 意外に難しいねこういうのって」


 今日たまたま、なんとなく急にメロンパンが食べたくなったのでフランさんにお願いしてみたのだが……


 なんと、この世界にメロンパンは無かったのだ!!






 無かったら作ってしまえばいい。私の能力で、じゃなくて、フランさんにこんなパンだよって教えて作ってもらおうと考えたのだけど、中々上手く伝わらない、伝える事ができない。

 大袈裟な話だが、常識を教えると言うのは本当に意外なほどに難しいものだね。


 メロンパンの特徴、特徴かー……。甘くて、表面に格子状の模様が入ってて……、あ!


「そうだ! 表面は硬くて中身は柔らかかったよ! あれ? 表現がおかしいな……」


 硬いって言うほどの硬さは無いよねあれは。


「表面が硬い……。バゲットみたいな感じ? んー、あれを甘くして半球状に、か……、シュガーブールみたいな感じかな。うん、できると思うよ。それじゃ、早速取り掛かろうかな」


 フランさんは考えが纏まったのか、早速厨房へと作りに行ってしまおうとする。


 バゲット? ああ、フランスパンね。あれとはまた全然違うんだけどなー。


「ううん、それも違うの。ごめんねフランさん、私、説明下手で……」


 自分の頭の中の映像と情報を言葉で説明するのって難しいな……。本当になんて説明したらいいんだろう?


「こんな事で謝らないでいいの。落ち込まないでよ、もう……。んー、こんな時に限ってレンは外しちゃってるんだよね。ま、私たちが何とかするしかないか……。メア、何か思いつかない?」


「私もフランと同じかなあ、甘いバゲットしか思い浮かばないよ。ね、姫? ゆっくり一つ一つでいいから、思い出して言葉にして言ってみてみなよ。私たちが絶対に作ってあげるからさ。ね?」


 メアさんが落ち込んでしまった私を、まるで小さな子供をあやすように撫でてくれる。


 なんという子供扱い。まあ、まだ小さな子供なんだけどさ、嬉しいから問題ないか!

 メロンパンを頭によく思い浮かべ、身振り手振りを交えて説明していこう。 


「うん! 分かり難いかもしれないけど思い出しながら説明してみるね。んー、味はちょっと、甘いとしか表現できないや、ごめんね。そうなると後は見た目と食感だよね。見た目はさっきも言ったけど、半球状で縦横に線が入ってる感じ、かな? あ、その四角い部分が膨らんでたような気もするね。それで、表面が硬いんじゃなくて、サクッとしてるって言うのかな。クッキーとかあんな感じの……、ああ!」


 そうだ! そうだったよ思い出した!!


「どうしたの姫? 急に大声出して驚かせないでよ」


「何か思い出したかな? いいよ、シラユキ。気にしないで続けて」


 おっと、メモを取る二人の邪魔をしてしまった。反省反省だ。


「ええとね、確か、なんだけど、生地を二種類使ってた筈だよ。表面のサクッとした食感のクッキーみたいな生地と、中身のふわふわな感じので二種類。うん、合ってると思うよ!」


 どんな生地だったかまでは、パン作りどころか料理すらした事の無い前世の私の知識にも無い。でも、この二人、特にフランさんなら分かってくれる筈だ!


「生地を二種類か……。そういうのを待ってたよ、ふふふ。表面はクッキーみたいにサクサクで、でも中身はふわふわのパンか……。いいね、いいね!」


 全く新しい料理というだけあって、フランさんのテンションが高くなってきた。料理人の血が騒いだんだろうね。


「私にはちょっと難しそうだね。フランに任せちゃっていい? 上手くできたら私にも教えてよ」


「それは勿論。作る人で味も食感も変わるだろうしね。だから料理って面白いのよ? よし! そうと分かれば早速……、あ、メア、シラユキのことお願いね。私は厨房に篭るから」


「はいはいりょうかーい。ふふふ、今日は私が姫を独り占めだね。どう可愛がってあげようかなー」


「あはは、フランさん頑張ってねー! 楽しみにしてるからね!」


「シラユキの応援! なにこれ、やる気がさらに沸いてきたわ……。絶対に美味しいパン作ってあげちゃうから、楽しみに待ってなさーい!!」


 私の応援を受けたフランさんはさらにテンションを高め、厨房へと走って行った。


 別にメロンパンはそこまで好きな物っていう訳じゃないんだけど、もの凄く楽しみになってきてしまった。

 はてさて、どんなパンが出来上がってくるかな? 普通にメロンパン? それとも全く違う別の何か?


 どちらにしてもフランさんが作るパンだ、おいしい事は間違いないね。ふふふふ、楽しみ!!






「ん? 今日はメアリーだけか。フラニーとバレンシアはどうした? そういやキャロルも見当たらないな」


 メアさんの膝の上で、撫で、頬擦り、キスなどなど、全力で可愛がられていたところ、兄様が談話室へやって来た。


「フランは厨房で、シアはキャロルと町へ出掛けていますよ。何か御用でした?」


 相変わらず兄様には敬語なメアさん。姉様とは普通に話せるのに、やっぱり男の人で偉い人だからなのかな。それに年上だしね。


「いや、ちょっと気になっただけだ。それにしてもシラユキ、羨ましい体勢しやがって……」


 羨ましい? ああ、私の目の前にメアさんの胸があるからか。ええい、このおっぱい星人め。


「あ、あの、私の胸でしたらどうぞお好きなだけ」


「駄目だよメアさん! 兄様もメイドさんの前でそんな事言っちゃ駄目だよ。みんな言う事聞いちゃうかもなんだからね!」


「分かってるって、嫌がってたり無理してそうな場合は何もしないさ。信用無いな俺……。意外にショックだ」


 私の言葉にショックを受けてしまったようだ。だが謝らない!

 兄様の大きな胸に対する情熱だけは信用できないもんね。あれ? 信用できるのか? 信用できるからこそ信用できないんだね。イミフ。


 カイナさんなんて結構な頻度で揉まれてるみたいだし……。しかも本人全然嫌がって無いんだよね。男の人が苦手なのが悪化しちゃったりでもしたらどうするのよまったく!

 男の人って言っても、カイナさんから見れば兄様も年下の弟くらいに見えているみたいで、胸を触られる程度なら何とも思わないらしいんだけどね。

 カイナさんが兄様お付のメイドさんじゃなくて本当に良かったよ。もしそうだったとしたら……、カイナさんを姉様と呼ぶ事になっていたかもしれない! ……それはそれでいいね。



「ルー兄様、私に何か用事?」


「ん? ああ、ただ暇だっただけで特に何か用があった訳でもないんだが。いや、シラユキを可愛がるという大切な用事があったな。ほら、こっち来い」


 メアさんから降りて、今度は兄様の膝の上に乗せられる。


 兄様の膝の上はメイドさんズとはまた違った良さがあるね。凄く落ち着くと言うか、安心できると言うか。むう、兄様大好きだ!


「ふふ、姫嬉しそう。あ、紅茶の用意をしますね。少しお待ちください」


 にこにこ顔で紅茶の用意をしに行くメアさん。


 そんな嬉しそうな顔してたかな……、恥ずかしい。

 嬉しいものは嬉しいんだからしょうがないよね。とりあえず兄様に甘えよっと。


「ああ、可愛いなコイツ……。このまま可愛がってやるのもいいが、今日は俺と一緒に本読むか? ユーネは出掛けちまってるし、俺も特にやる事もなくて暇なんだよな今日は。どうだ?」


「うん! 一緒に読も? ふふふ、嬉しいな」


 兄様と一緒に本を読むのは久しぶりだね。ついつい嬉しくて抱きついて、頬擦りをしてしまう。


「ちょっ、姫可愛すぎ……。私にもそれくらい素直に甘えてほしいなあ」


 見られてた! 聞かれてた!! 恥ずかしい!!!






「お待たせシラユキ、完成! とはまだ言えないけど試作品の完成だよー、っとルーディン様もいたんだ? 多めに作っちゃったから丁度いいかな」


「あ、フランさんお疲れ様。うわ、なにその……、ケーキ? その上に一つ乗ってるのって木苺かな? 随分と豪華なのになっちゃったね」


「あはは、張り切りすぎだよフラン。でも凄い、美味しそうだねこれ。やっぱりフランは凄いね、尊敬しちゃうよ」


「ほ、褒めすぎよメア。恥ずかしいってば」


「お、おい。何だよそのケーキ……」


「ちょっと飾り付けすぎちゃったけどパンだよこれ。シラユキ考案のメロンパン。この見た目じゃわからな」


「シラユキが!? や、やっぱりお前は天才だな!! そうか……、こういうのもあるのか……、この発想は無かったぜ」


「正確には私が考えたんじゃないんだけど……。どうしたのルー兄様? このパンそんなに凄い? 凄く見えるのはフランさんの飾り付けで」


「ああ! 凄いなんてモンじゃない!! いや、しかしメロンパンはおかしいな……。ん? おかしくないのか? 確かにスイカやメロンに例える事もあるな……。そこまで考えてのネーミングなのか、まさか。さ、さすがはシラユキ、さすが俺の妹だ!!!」


「西瓜? さっきからルー兄様は何の事言ってるの?」


「あ、ああ! な、なるほどね。さすがルーディン様……。確かに二つ並べるとそう見えちゃいますね」


「並べると? どれどれ……、こう? ……あ。ぶふっ! あははは!!」


「う、うわあ……。フランさん、木苺はアウトだったよ……」


「ふむ……。俺が名付けるならば、『おっぱいパン』、略して『おっパン』だな。どうだシラユキ、最高だろう!?」


「最低すぎるよ!!!」







ルーディンの安定感は異常。


次回投稿は未定です。今から書き始めます……

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