表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/338

その118

「それで、今回はいつまで滞在する予定なの? 随分と大変だったみたいだし、暫くゆっくりしていくんでしょ? 私かフランか、他の誰かをお世話係に付けようか」


「お、お世話係とか大袈裟なもの要らないよ。ああ、うん、そうだね、さすがに疲れたよ。肉体的にも、精神的にもさ……。ああ、主に精神的かな……。まだ魔物の大群を相手してた方が楽だったよ、マジで。今はゆったりとだらけたい気分」


「あらら、お疲れさま。私たちもついて行きたかったんだけどねー。毎日もう心配で心配で……。まあ、レンが一緒だしそこまで心配はしてなかったんだけどね、やっぱりちょっとは不安だったのよ。不安より寂しさが強かったかな? うーん、シラユキー! もうちょっと抱かせてー! この子のいない生活はもう考えられない!!」


「あはは。ごめんねフランさん、メアさんもね。でも、寂しがってくれてちょっと嬉しく思っちゃう。ふふふ、私も三人がいない生活は考えられないし、耐えられないかもね」


「ああああ! 姫可愛い!! ほんの少し見ない間にまた可愛くなったんじゃない? キラキラして見える……。あ、フラン、そろそろ代わってよー!」


「ええー!? むう、しょうがないか。また後で代わってねメア。今日はお風呂も一緒に入ろうねー、シラユキー」


「うん! メアさんと三人で入ろうか? あ、キャロルさんも一緒に入る?」


「私も一緒にですか!? あ、私はその、できたらシア姉様と一緒に……」


「一人で入りなさい。子供ですか、まったく……。ああ、勘違いしているようですから言っておきますが、客人扱いはしませんよ。どうせ暫くやる事もやりたい事も無いでしょう? 私たちがメイド修行をつけてあげましょう」


「あれ!? 私の休暇はどこへ!?」



 これが数日前、私たちがカルルミラから帰ってきたときの出来事だ。

 キャロルさんが家にいるのは、カルルミラとの往復間の護衛にキャロルさんとリズさんの二人が付いてくれたからだね。

 旅のメンバーは兄様と姉様、それに私とシアさんの四人。シアさんは私たち三人のお世話に専念するという事でどうしても護衛が必要になってしまい、急遽この二人が呼び出されることになったのだ。久しぶりに二人に会えて凄く嬉しかったね。


 リズさんは今回の護衛のお仕事を最終課題として、見事最後まで大きな問題もなくやり通し……。ん? 問題なく……? ま、まあいいや。そして、ついに独り立ちすることになってしまった。別れ際は泣いちゃって寂しそうだったね……。リーフサイドで少しだけ休み、その後他の町へと行ってしまうらしい。

 キャロルさんはこれで当面の目的が無くなってしまったようで、少し気が抜けてしまったみたいだ。そこをシアさんに再度捕まり、私がお願いして、暫くの間家に滞在してゆっくりと旅の疲れを癒してもらおうと思ったのだけど、何故かシアさんがメイドさんの修行をさせる事に決めてしまった。


 ちなみにSランクにはまだ上がっていなかった。Sランクは本当に化け物と呼ばれる程の強さが必要らしく、Aランク最上位と言われているキャロルさんでもまだその域には届かないらしい。


 そういえばシアさんは元Sランクだったね。……怖いよシアさん!!






 話を今に戻そう。

 長旅の護衛で疲れているキャロルさんの休暇だが、実際メイドさん修行がいい休暇になっているみたいだった。

 いくらAランク最上位でも冒険者。命の危険は常に身近にある生活だった筈だ。でも今はそれを忘れて女の子らしい生活を……。キャロルさんもう女の子って年じゃなかった……。ま、まあ、キャロルさん可愛いからいいよね! 見た目は本当に可愛らしい女の子だしね。うんうん。女の子らしい生活が逆にいい息抜きになっているんだと思う。

 姉様の趣味のフリフリのミニスカメイド服と、シアさんお手製のネコミミ付きメイドカチューシャがとても似合っている素晴らしいメイドさんだ。


 このまま冒険者を辞めて、私の家のメイドさんになってほしい。兄様のお付になってもらって、巨乳を遠ざけてもらうんだ!!



「という訳で、キャロルさんメイド化計画を……、? 始まってる!?」


「何が、という訳で、なのかは分かりませんが……、キャロをメイドにですか? 始まっているというのは、ああ、私のせいですね。ただあの子にも少しは女の子らしい事をさせてみようと思っただけでありまして……。実際キャロはメイドには向いていないと思いますよ。割と大雑把な性格をしていますし、ちゃんとしているように見えるのも姫様と私の前だけかと。きっと今頃フランを脅してケーキを作らせ、さも自分が作った様な顔をして持ってきますよ」


 ああ、シアさんのお弟子さんだからそれくらいやりそうだよねー、って違うよ!?


「前半でいい人だと思わせて後半で一気にひどくなった!! うすうすそうなんじゃないかなと思ってたんだけど、シアさんってキャロルさんのこと嫌いなの……?」


 言葉にトゲと言うか、扱いがぞんざいと言うか……

 やっぱり見た目が可愛い女の子でも、中身が大人だともう興味の対象外になってしまうんだろうか? それはちょっと、悲しいな。


「違うよ姫。シアはあれで可愛がってるんだよ? シアがからかうのは親愛の証だよね。姫にだってそうじゃない?」


「あ、そっか。ふふふ、なるほ」


「えっ? あ、失礼……」


「えっ? シアさん?」


 なにその心底意外です、と言った感じの表情は。


「えっ、じゃないよシア! 折角入れたフォローをあっさり潰さないでよ……」


「ふふふ、冗談ですよ。キャロは独り立ちした後も私の可愛い弟子、それに変わりはありません。しかし、かと言って甘やかすというのはまた別問題。百年以上心配させてしまったので無理も無いとは思いますが……、やはり一人前の冒険者、いえ、一人前の大人の女性としてしっかりとしてもらいたいのですよ」


 シアさんとしては珍しく、はっきりと自分の考えを教えてくれた。とても優しい声だ。


 ああ……、やっぱりシアさんは優しいな、凄いな、カッコいいなー。

 キャロルさんの事は可愛いと思ってる。でも、可愛い弟子だからこそ厳しく当たっているんだね。将来好きな男の人だってできるかもしれないし、その時料理の一つもできれば……。うんうん。


 まあ、当のキャロルさんは男の人に全く興味ないんだけどね……


「キャロルさんあんなに可愛いのになんで女の人が好きなんだろ? もったいないよねー。……シアさんのせい?」


 ちょっと考えたらシアさんのせいとしか思えなかった。

 シアさんに出会ったのは私くらいの子供の頃だったっけ? それからずっと大人になるまで一緒に旅をしてたんだよね、多分。こんな素敵な女性が近くにいたら男の人になんて目が向かなくなっちゃうよね。


 ……ん? 今何か引っ掛かりが……?


「う……、そうなのかもしれません。あの子が本当に子供の頃から、ええと、百四十くらいまで行動を共にしていましたからね。私も甘やかしが過ぎてしまっていたのでしょうね。はあ……」


 シアさんは疲れたように溜息をつく。


 ふふふ。キャロルさんには何も話すなって言っておいて、自分でもついつい過去の事を口に出しちゃってるね。突っ込むとやめちゃいそうだから黙って聞くけど……。ふふふ。

 キャロルさんと一緒にいるのはシアさんだってやっぱり嬉しいんだよね、可愛いお弟子さんなんだしさ。私にするみたいに全力で甘やかしてたのかな?


「シアって冒険者の頃はそんな優しい性格じゃなかったんだよね? ん? 今でも優しいのは姫だけにか……。それでも好きになっちゃうって、相当可愛がってたんじゃない? あ、Hもしてたんだよね。初めてを貰ってあげたんだっけ? あ……」


 H!? また聞いてて恥ずかしい話題を! は、初めてを貰ってあげたっていうのは初耳だね。女の人同士でどうやって……? !? か、考えちゃ駄目だ!! あああ、いやらしい考えが浮かんでくるうううう……


「メア……、姫様の前では、? 姫様? ああ、真っ赤になってしまわれて……、なんて可愛らしい……」


「あはは。ホントにこういう話題には慣れないよね姫は。姫だって後三十年もしたら経験する事になるんだよ? ……シアと」


 な、慣れないよこれは、これだけは……! え? 三十年後くらいに私も……、シアさんと?


「なんでシアさんと!!? 私もシアさんもノーマルだよ!! 確かにシアさんの事は大好きだけどさー。メアさんもフランさんも大好きだよ? それと一緒だよ、もう!」


 最近シアさんだけじゃなくて私もそっちの趣味の人に思われ始めている気がする……。これもきっとシアさんのせいだ!!


「ああ、怒らないで姫、ごめんごめん。久しぶりでちょっとからかいすぎちゃったかな? でも今一番姫とくっ付く可能性が高いのはシアなんだよねー」


「絶対に幸せにして差し上げますよ、姫様」


 素敵な笑顔で言われてしまった!! 落とされてしまうー!!!






 その後小一時間ほど読書と楽しいお話が続き、ケーキが出来上がりおやつの時間になった。


「いいいい如何でしょうか!!」


 緊張でガチガチになりながら、ケーキの感想を求めてくるキャロルさん。


「キャロル緊張しすぎだよ……。見た目ちょっと悪いけど味は同じだってば。だよね? シラユキ」


「うん。おいしいよキャロルさん。ふふ、ありがとう!」


 材料の分量とかは全部フランさん任せなのかな? フランさん凄いなー。初めてのケーキ作りでここまでおいしい物を作らせることができるんだ。これは私も教わらなければ……!! いつになったら料理を教えてもらえるんだろう……


「はああ、可愛らしい……。感動です!!! 私の作ったケーキでシラユキ様が笑顔に……!! シア姉様とフランの気持ちが分かったような気がするわこれ……」


 感動されてしまった!! やっぱりおいしいって言われるのは嬉しいんだね。ふふふ、私も嬉しいな。


「シアはどう? 可愛い弟子の手料理だよ?」


「え? ええ、見た目は多少不恰好ですが、普通に美味しいですね。……つまらないですね。やはり不採用という事で、お帰りはあちらです」


 またドアの方へと手を向けて退出を促すシアさん。


「ええ!?」


「そんな反応なの!? シアさん的には面白くないといけないんだ!? メイドさんに面白さを求めちゃ駄目だよシアさん……」




「シラユキが可でレンが不可。そうなると今回の採用試験の結果は……」


「現状維持という事にしましょうか。見習いのままですね。また次の試験までそのネコミミカチューシャでいなさい」


「は、はい……。追い出されないだけ良かったのかな今回は……」


「あ、見習いの証なんだそれって。可愛いよねー。ずっと見習のままでいてね、キャロルさん」


「結構恥ずかしいんですよこれ……。カイナさんにやけに好評なんですよね。可愛いと言われて悪い気はしませんが、子供扱いはやめて欲しいですよ」


「あはは。カイナも可愛いもの好きだからね。それってシアの手作りなんだっけ? 姫にも似合いそう」


「ええ、姫様にも是非。私渾身の作がこちらに……」


「私も見習いに? 何の見習い? ……見習いお姫様!?」




 自分で言ってピッタリすぎて驚いちゃったよ!!

 うーむ……、早く見習を卒業して立派なお姫様になりたいものだね。私もキャロルさんを見習ってお姫様修行でもしようかな?






『また』の後のお話になります。

しばらくこんな感じのだらだらとしたお話が続くんじゃないかなーと。


何故か毎日更新が続いている不思議……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ