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その109

「それじゃ姫、おやすみ。何かあったらすぐ呼んでね」


「う、うん。おやすみメアさん」


 今日の夜間警備の一人目はメアさん。

 そろそろそんなのはやめちゃってもいいと思うんだけどね。いくら交代制と言っても、夜、何も無い廊下で一人椅子に座ってるだけとか辛すぎるよ。

 まあ、シアさんみたいに本を読んだりはしてると思うんだけどね。うーん、どうしたものか……

 ちょっと強めに言ってやめてもらおうかな。でも、私のためを思っての行動なんだよね、それも悪い気がする。贅沢な悩みだよホントに。




 明かりを消してベッドに入る。今日は大人しく寝よう、大人しく……


 ラルフさんもナナシさんも喜んでくれてたな……、嬉しい。嬉しいけど、寂しい。

 カルルミラか……。私が行けるようになるのは成人後かな……

 成人なんてまだ八十年以上先の事だよ。そのころにはもうラルフさんもナナシさんも……






 魔法で明かりを付け、ベッドから降り、ドアの前へ、そして静かにドアを開ける。


「メアさぁん……」


「ん、姫、トイレ? え? どうしたの!? な、泣かないで!!」


 私の顔を見たメアさんが驚き、慌てて駆け寄り撫でてくれる。

 情け無い話だが、一人で寝ることが急に寂しくてたまらなくなってしまった。


「怖い夢でも見た? ってまだ寝てないか。何かあった? エネフェア様呼ぼうか?」


 私はフルフルと頭を振り、答える。


「メアさん、あのね、えとね……、うう……」


「あー、そういう事か。んー……、シア呼んで一緒に寝てもらう? でも今日の当番は私とフランなんだよね。この時間ならまだシアも起きてるとは思うけど、すぐには来れないかな……」


 私は寝るのが早いからまだみんな起きてるよね。でも、シアさんだってもう自分の部屋で休んでいる筈だ。

 私が呼べば急いで用意して飛んで来てくれるとは思うんだけど、どうしよう……


「ね、姫。私が一緒に寝てあげようか? と言うか一緒に寝たいな。どう?」


 言い悩む私を見て、メアさんが提案してくれる。 


「うん、お願いしてもいいかな……。ごめんねメアさん、どうしても寂しくって……」


「あああ、泣かないの、もう! なんで謝るかな……。一人で待てる? フランに交代はしなくていいって言って来ないといけないし、私も着替えないと」


「うん、それくらいなら……。それじゃ、待ってるね」


「待つなら部屋の中で待っててよ? じゃ、急いで着替えてくるからね」


 そう言うとメアさんは、私の頭を軽く撫でてから小走りに行ってしまった。


 一人寝がこんなに寂しく感じるなんて、どうやら精神的に相当参ってるみたいだね私は……




 その後五分と待たずにメアさんは私の部屋へ戻って来てくれた。

 家族とは、特に母様とは一緒に寝ることは多いのだが、メイドさんズと一緒に寝るなんてシアさんでも一度だけしかない。メアさんはかなり嬉しそうだ。


「ふふふ、やっと夜間警備の本来の目的が達成できたかな? ね、やっぱり必要だったでしょ?」


 う……、笑われてしまった。

 今日はしょうがないじゃない! あの素敵なお友達とお別れすることになっちゃうんだよ? 今日は……?


「どうしようメアさん……。私、また一人で寝られるように戻れるか不安になってきちゃった……」


「あー、重症だね……。でも、いいんじゃないかな? もっと私たちに甘えなよ。夜廊下で交代で警備するより、毎晩交代で一緒に寝る方が楽だと思うし……。ん? これからそうしよっか?」


 ま、毎晩交代で? 今日はメアさん、明日はフランさん、明後日はシアさんっていう感じかな。

 それならメイドさんズの負担も減るし、夜中に私が寂しくならないようにする、という本来の目的も遂行できるんじゃないか?

 あれ? それでよくない? そんな簡単な解決方法があったとは……


「そうしてもらっちゃおう、かな?」


「うんうん、そうしようよ。でも、これから毎日私たちと寝ることに慣れちゃうと……、一人で寝られなくなっちゃうかもね?」


「う、それは無いって言い切れない……。とりあえず、しばらくの間はお願いしちゃうね」


「大人になるまでとは言わないけど、五十くらいまではそれでいいと思うよ。ユーネ様だってずっとルーディン様と一緒に寝てるわけだし……」


 姉様は子供の頃からずっと兄様と一緒に寝てるんだよね。今はもう寂しさじゃなくて違う意味で一緒に寝てるんだと思うけど……



 まず私が先にベッドに入り、すぐにメアさんもいそいそわくわくと入ってくる。嬉しそうだねホントに……


「うーん、嬉しいな。姫はもっと甘えてよね。本当は今までも寂しい時はあったんじゃない? 五歳の頃から一人だけで寝るとか、私たち結構不安で心配してたんだよ?」


「ううん? 今日までは特にそういうのは無かったかな。五歳の頃はまだ前世の記憶が強かったからね、一人で寝るのも普通に思えてたし、そのまま慣れちゃったのかな」


 ん? そう考えると、私って精神年齢がどんどん下がって行ってるのか? 前世の記憶も完全に薄れちゃって今はもう知識としてしか残ってないし、自覚ができないや。

 最近子供扱いされてもあんまり嫌に感じなくなっちゃったし、そうなのかもしれないね。いい事なのか悪い事なのか……


「そうだ、姫と一緒に寝るのは今日が初めてっていう訳でも無いんだよ。小さい頃、もっと小さい頃は私かフランが一緒に寝てたんだけど、覚えてないよね」


「そうなの? んー、分かんないや。二歳とかそれくらいの頃? さすがに覚えてないなー」


 父様か母様と一緒に寝てたんじゃないのか……。父様はともかく、母様は今でも毎日忙しそうだし、私がもっと小さい頃もそうだったんだろう。

 一人で寝るようになる前は父様と一緒に寝てたんだったかな。


「フランに聞いたよね? ふふふ、私も姫におっぱい吸われてたなー。あれは結構恥ずかしかったよ」


「ううう、恥ずかしい……。私ってホントに大きな胸が好きだったのかもね……」


「まあ、ルーディン様の妹だしって納得してたんだけどね。あ、久しぶりに吸ってみる?」


「すすす吸わないよ!! 子供扱いはいいけど、赤ん坊扱いはしないで!」


「あはは、冗談だって。ごめんねー、怒らないで。姫とこうしてまた一緒に寝られるなんてちょっと嬉しくてさ」


 メアさんは私を抱き寄せて、優しく撫でながら謝る。

 うーん、こうやって抱きつくと本当の大きな胸だな……、羨ましすぎるううう……


 メアさんもいい匂いだなー。安心と心地よさで眠気が一気に増してきたよ。もっとお話したかったけど、もう眠気が強すぎて限界だ。


「あ、話しすぎちゃったかな、眠いよね。そろそろ寝ようか? おやすみ、姫」


「うん……、おやすみなさーい。……メアさん大好き……」


「ふふ、可愛いなあ……」






「今夜は私が!!」


「レンは前に一緒に寝たことあるでしょ! まずは私!! ねー、シラユキー?」


「うん、今日はフランさんにお願いしようかなー。シアさんは明日でもいい?」


「そんな!! わ、分かりました。今夜は枕を濡らす事にします……」


「明日は一緒に寝れるのに何言ってるんだか。それにシアと姫を一緒にって言うのは最近ちょっと不安なんだけど……」


「それじゃ明日はまたメアでいいね。私とメアの交代にしようか? それとも毎日シラユキに決めてもらう?」


「私は母様がいいなー。でも私が寝る時間はまだお仕事してたりする事もあるよね。お仕事の邪魔はしたくないや」


「何もしませんから! お願いします! お願いします!!」


「わわわ! 冗談だよ、もう! 必死すぎて逆に怖いよ……」




 夜間警備はめでたく廃止が決まりました。

 これからは日替わりでメイドさんズの誰かと一緒に寝ることになっちゃったけど、三人が毎晩ぐっすりと眠れるようになるし、私の寂しさも解消される。

 しばらくの間の話だけど、また一人で寝られるようになるまでは甘えようと思う。


 嬉しさ、恥ずかしさ、情けなさが入り混じる複雑な気持ちだよ。







ちなみにメアリーは、寝るときはノーブr

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