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その108

「男の子ならアドルファ、女の子ならアンジェリーナ。どうですか? 一週間掛けて考えてみたんですけど」


 結局ほぼ私一人で考える事になってしまった。兄様はバストかヒップがいい、とかふざけた事ばかり言ってたので途中から選考者から除外された。でもウエストはありだと思って候補には入れておいたけどね。

 男の子の名前にはラルフさんの文字を、女の子の方にはナナシさんの名前の文字を入れている。それでいて響きよく、カッコいい、可愛らしい名前にするために悩みに悩んだのだ。

 実は父様と母様も一緒に考えてくれていたのだが、この二人が恐縮してしまいそうなので黙っておいた。気にしないかもしれないけどね、念のためだ。


 まあ、さらっと言っては見たものの、内心ドキドキだ。気に入ってくれるといいんだけどな……




「その……、何て言うかな、あー……」


 ラルフさんは何かを言い難そうにしている。

 イマイチだったかな? うーん、残念、考え直すか……


「おっと、まずは礼だな、悪い悪い。ありがとなシラユキちゃん。あー、いいのかな……、こんな立派な名前貰っちゃってさ。アドルファとアンジェリーナ、アドルとアンジェか? いいな」


 おや、気に入らなかった訳じゃないんだね。よかった、ちょっと安心。


「ラルフさんとナナシさんのために考えたんですから、当然、いいんですよ。ふふ、気に入ってもらえました?」


「気に入ったなんてモンじゃないよ! 友達って言ってもさ、シラユキちゃんたち王族だよ? そんな人たちに名前を贈ってもらえるなんてさ……。あー、さっきのラルフじゃないけど、なんて言うか……」


 ああ、なるほどね、もしかして、感動されちゃった? う、嬉しいなそれは……


「一応他にもいくつか候補はあったんですけど、聞きます?」


 もしかしたらそっちの方がいい、って考えも変わるかもしれないしね。今ならまだ間に合うと思う。


「いや、聞かないよ。三人で考えてその中から選び出された名前なんだろ? それ以上のモンは無いさ。ははは、最近幸せ過ぎていかんなこりゃ。顔がニヤけちまう」


「ホントホント。毎晩のアレも結婚する前より……、ごめんね?」


 ま、毎晩幸せそうなんだね……

 今までの冒険者仲間と、っていう意識じゃなくて、愛する人と、だからかな? ひゃー! 恥ずかしい!!

 今日だけは特別なのか、シアさんも特に怒りもせず、止めようともしない。


「んー! こんなに幸せでいいのかな……。ここ数年凄いよ? ラルフと知り合って冒険者に戻って、王族の友達ができて、人を好きになるって気持ちを知って……。ふふ、ラルフと結婚しちゃったりさ。さらには子供の名前まで贈ってもらっちゃって……。あー、泣いちゃいそう」


 冒険者に戻って?

 ……おっと、いけないいけない。こんな明るい席で聞く話じゃないよね多分。


「ふふふ、羨ましいです。二人とも凄く幸せそうで、私も嬉しいです」


 本当に私も嬉しい。他人ひとの幸せがこんなに嬉しいと思えるなんて初めての経験だ。この気持ちは素敵だね、大事にしたい。




「ふむ、んじゃちょっと恥ずかしいが、いっちょやるか!」


「ん? 何すんの?」


 ラルフさんが椅子から立ち、私に真っ直ぐ向き直る。


「え? え? ラルフさん?」


「姫様、黙って聞いてあげてください」


「う? うん……」


 シアさんに注意されてしまった……

 何か大切な事でも話してくれるのかな?



「ああ、やっぱ恥ずかしいな……。ん、まずはもう一度礼を言うよ、本当にありがとうな、シラユキ姫。俺、いや、俺たちの子供には必ず伝える。お前の名前は……、可愛くて、恥ずかしがり屋で、凄く心の優しいお姫様が付けてくださったんだぞってな。それこそ子々孫々までってやつさ、俺たちとその子供の名前、それにシラユキちゃんのことは伝え残すように言っておかなくちゃな。おっと、今回の事だけじゃない、ナナシの体もだ、これは本当に礼を言っても言い切れねえよ。ホントに俺たち泣いて喜んだんだぜ? っと、それはいいか」


「恥ずかしいよラルフ……。シラユキちゃんも泣いちゃってるよ? まったく……。でも、ホントにありがとね。言葉じゃ感謝し切れないよ」


「あはは、もうちょっと我慢してくれな? 最後にこれだけは言わせてくれ。俺たちはさ、後五十六十も生きれるかどうかだ。多分だけど、もう何度も会えないだろ。もしかしたらもう会えないかもしれないな、うん。だからな? シラユキちゃんが大人になってな、俺たちの孫やひ孫に会いに来てくれると嬉しい、ん、だが……」


「姫様……」


 ううう……、こ、こんないきなりはずるいよ!!

 涙が止まらない、こんな素晴らしいお友達に、もう会えなくなっちゃうなんて……、そんな、そんなの……


「やだ……、やだよう……。行っちゃ、やだああ……」


 言ってしまっては駄目な言葉、言っても意味のない言葉だっていう事は私も分かってる。

 でも……、寂しいよ、嫌だよ、別れたくないよ……


「今日でもう会えないって訳でもないだろ? でも、ちょっと安心したな、やっぱ子供だよシラユキちゃんは。ここで笑ってお別れしよう、なんて言い出すかとも思ったんだけどな」


「ここまで子供っぽいのは確かに初めてだよね。あ、いや、これが普通なんだよね……。うーん、メイドさん、いい?」


「どうぞ、今日はラルフさんもご一緒に」


 そう言って、シアさんは一歩後へと下がる。



「シラユキちゃんごめんねー? まだ会ってニ、三年くらいなのに、別れが悲しくて泣いてくれるなんて、嬉しいよ……」


「うおおお……、そういや俺ってシラユキちゃん触るのって何気に初めてじゃねえか? 緊張するわ……。!? 髪柔らかっ! 何だこれ!?」


 ラルフさんとナナシさんが、椅子に座って泣く私の左右に立ち、優しく撫でてくれる。


 な、何だこれはないでしょ、もう……


「あたしたちもこんな可愛くて優しい子、作ろうね、ラルフ」


「いやあ、ちょっとどころか絶対無理だろこの可愛さは……。ま、頑張るか! 折角名前二つも貰ったんだ、二人は作れって事だよなこれは」


「うんうん、頑張ろう? あ、やばいわ、頑張るとか言ってたらシたくなってきちゃった……」


「あー、実は俺も……」


「人を撫でながら変な事話さないでください!!」


 ああもう!! まったくこの二人はー!! 大人しく泣かせてもらえないかな! もう!!


「おお、怒った怒った。やっぱ泣き顔も可愛いなシラユキちゃんは」


「あははは! 怖い怖い! シラユキちゃんも、もうちょっと大きくなればルーディンさんとするんでしょ? ふふふふふ、別れの前に色々と教えておこうか?」


 興味あります! ……じゃないよ!!!

 怒った私、それでも撫でる手を止めない二人。


 この二人は、この二人はー!!




「もう! ナナシさんのエッチー!! もう! もう!! 二人とも大好き!!!」


「あははは!! 俺も多分ナナシの次に好きだぜ!!!」


「あたしは一番かも?」


「おいコラ!!」


「あっはは!! 冗談冗談! あたしも大好きだよ、可愛いくて優しいお姫様……」






「うーん、俺たちもいるんだけどなあ……」


「エディさんはついて行かないんだし、あの話には加われないわね。今は空気呼んで黙ってなさいって、刻まれたいの?」


「そうですよ。死にたいんですか? 50点取りましょうか?」


「怖え! ミランさんもバレンシアさんも美人なのに怖えええええ!!! 50点って何!?」


「ラルフさん亡き後のツッコミ役として充分ですね。頑張ってください」


「メイドさん!? 俺ってやっぱ死ぬの!?」


「シアさん!? ラルフさんってやっぱり死んじゃうの!?」






今回でお別れのお話は終わりに見えますが……

すみません、まだまだ続きます。本当に長いです。


あんまり湿っぽいお話ばかり続くのは読んでいても面白いものではないと思いますが、もう暫くお付き合いをお願いします。

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