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101/338

その101

「それでね? その時シラユキ何て言ったと思う? お兄様」


 姉様やめて!!


「ん? なんか変な事言ったのか? ああ、分かった。どうしてこうなった! か?」


 どうしてこうなった!


「今回は言わなかったわねそれ。……どうしよう、まだナナシさんが治ってるかも分からないのに……、って泣きそうになってね。ふふふ、優し過ぎるわよこの子」


「おいおい、魔法が使えなくなってまずした事が他人の、っと、友達の心配かよ……」


「ううう、だってまだ治ってるかどうか分からないんだよ? 治ってなかったらまた治しに行かないと。……あ」


 しまった! つい口が滑って……


「こーら! また勝手に使う気だったわね? まったくシラユキは……」


「シラユキ?」


「ごごごごめんなさい母様!!」


「ふふ、ちゃんと相談するのよ?」


「はーい!!」


 母様大好き!!!






「んで、今はもう問題なく使えてるんだよな、魔法」


「うん。先に教えておいてくれればいいのに……、びっくりしたよホント」



 魔法が使えなくなったのは一時的なものだった。

 昨日の夜は盛大に焦り、一緒に寝ていた母様と姉様を起こして泣きついてしまったのだが、二人には笑われてしまった。ひどいよ。


 どうやら魔力を消費する事を体が拒否、と言うか、魔力を使い過ぎた反動なのかな? 体が回復しきるまでは魔法は使えなくなるのが普通らしい。

 自覚はできていなかったのだけど、やっぱりまだ体は全快ではなかったみたいだね。ステータス画面があれば……、と初めて思ってしまった。


 先に教えてもらえてなかったのは、魔力を使い切るほど消費させるつもりは元々無く、教えるまでもないんじゃね? という事らしかった。多分忘れてたんだろう……

 以前魔力疲れで倒れた時も試してはいなかったが、多分使えなかったんじゃないかなと思う。

 あの時はシアさんに何から何まで全部お任せしちゃってたからね、魔法を使おうとも思わなかったよ。



「私たちは基本的に魔力疲れなんて起こさないからね。ちょっと説明が抜けちゃってたかな?」


「子供のうちだけだよな魔力疲れなんてさ。シラユキももうちょっと大きくなればもっと使えるようになるさ」


「魔力の総量は年齢を重ねるたびに増えていくんだっけ? ホントに謎パワーだよね魔力って」


 成人したらそれ以上増えないと言う訳じゃなかった。まあ、細かい所はさっぱり分からないみたいなんだけど。

 既に千五百年以上生きてる父様でもまだまだ増えているのかもしれないね。なにそれこわい……

 これがエルフが最強種族たる所以なのかな? ハイエルフは元々の魔力量がエルフよりも多いらしいのだけど、シアさんを見ていると自分が特別だとはとても思えない。

 そうだ、私は将来、有り余る魔力で傷ついた人を癒す仕事をするのもいいかもしれないね。


「体感して分かるモンでもないんだけどな、いつの間にか、ってやつだよ。普通の魔法はいいが、能力の使用は控えるか、しっかり考えてから使うんだぞ?」


「はーい! ふふふ」


「可愛いわシラユキ……」


 母様に抱き締められ、


「ああ、可愛いなコイツは……」


 兄様にグリグリと撫でられる。



「癒しの力は凄いわよね。でも、どう練習したらいいのかな? シラユキに傷口なんて見せたくないし……」


「包帯かガーゼの上からでもできるだろ? んー、家でよく怪我するのって……、フラニーとクレアか?」


「はへ? あ、うん。いくら毎日料理して慣れてるって言っても、包丁傷とは中々縁は切れないものなんだよね」


 いきなり話を振られたフランさんが、間の抜けた返事の後答える。

 クレアさんは執務室だ。父様が母様にお仕事を全部投げられてしまったので、カイナさんと一緒にお手伝いをしているんだと思う。


 どれだけ慣れても毎日の事だからね、やっぱり指先の怪我は絶えないものなのかな。


 ふむふむ……、うーむ……


「まだ駄目よ? それにね、何でも治してしまえばいいって言うものでもないの。ちょっとシラユキには難しいかしら……、分かる?」


 何故バレたし……


「うん、何となくならね。癒しの力頼りになっちゃうし、後、多分だけど、怪我を軽く考えちゃうかもしれないね。怪我しても治せばいいやって」


 それこそ本当にゲーム感覚で怪我を恐れず行動しちゃいそうだよね。


「お、教える事が無いわ……。癒しの力頼りって言うのは、小さな痛みにも耐えられなくなるかもしれないの。怖いでしょ?」


 怪我した痛いー! 早く治してー!! ってなっちゃうんだね、情けないわそれは……


「たまにだけど、深く切っちゃうこともあるからさ、その時はお願いしようかな」


「うん! でも、怪我はしないで欲しいな……」


 家族が怪我してるところなんて見たくも無いよ。クレアさんがキャロルさんと模擬戦した時にできた傷には、凄いショックを受けちゃったしね。


「うう、この子優しすぎでしょう! ねえ、お母様、代わって?」


「駄目よ。まだ三日分のシラユキ分は取り戻せていないもの、もう少しだけ我慢しなさい、ユーネ」


「お母様ずるいわー!!」


 今日も私の取り合いを続ける母様と姉様。


 ふふふ。疲れるけど、とっても幸せだ。




「結局ナナシの何を治そうと思ったんだ? エロさか?」


 そこはやっぱりお友達の事、気になっていたのか兄様が聞いてくる。


「それも治ってるといいね……。んー、兄様には言えないなー。ごめんね?」


 ホントに治ってるといいな……。エロさの事じゃないよ?


「女性の体の事を気軽に聞いちゃ駄目よ、ルー。私とバレンシアは知っているのだけれど……、こればかりは簡単には言えないわね」


「う、悪い、どうしても気になっちまってさ。まあ、聞けたら本人たちから聞くか……」


「私も駄目なの? お母様。ナナシは私にとってもいい友人なんだけど……、心配だわ」


 姉様もナナシさんとは気が合うみたいで、既に親友クラスのお友達みたいだ。


「ウルも言ってたでしょ? 急がないと手遅れになるものでもないって。健康に問題がある訳じゃないのよ。シラユキの癒しの力の効果が出ていなくても、今までと何も変わりは無いわ、安心しなさい」


 倒れてみんなに心配も掛けてしまったんだし、何かしら効果が出てないとなんか、損した気分になってしまうよ。


「うん……。それじゃ、全部解決したら本人から聞くわ」


「俺はシラユキが知ってるって言うのが不満なんだがなー。そこまで重い問題でもないのか?」


「ふふふ、秘密だよ」


 重い、重すぎるくらいの大問題なんだけどね。解決したらきっと笑いながら話せると思う。そうなったらいいな……


「ずるいわシラユキー!」


 姉様にほっぺをグニグニとされる。


「うにゅにゅ……。ふふふ」


 し、幸せすぎる……




 さて、次の問題、大問題に取り掛かろうか……


 一晩明けた今でも、シアさんが不機嫌なままなのだ!! これは重大な問題だよ……!!


「し、シアさーん?」


「何か?」


 反応が冷たすぎる!


「怖い!! むう、機嫌直してよ」


「シア、まだ怒ってるの? そろそろ許してあげなよ」


 メアさんが呆れたように言ってくれる。


「ああ、申し訳ありません。自分の不甲斐なさを嘆いていただけの事でありますから。姫様には逆に、申し訳なく思っているところです」


 シアさんが不甲斐ない? どこからそんな考えが出てきたんだろう……。私に対して怒ってる訳じゃないのかな?


「バレンシア、自分を責めないで。この子の突拍子もない行動を止める事は誰にだって難しいと思うわ」


「いえ、予想はでき、止める事も可能でした」


 よ、予想はできてたんだ……。シアさんホント凄いな……


「姫様にならこのままナナシさんの体を癒す事ができるのでは? と一瞬躊躇してしまったのです。その一瞬の躊躇の結果が……」


 私の気絶、か……


「今回は誰を責めればいいものか。姫様は勿論の事、ナナシさんにも非はありません、あそこで止める事ができた私の判断ミスでした。今回はお目覚めになられましたから良かったものを、もしあのまま……」


「もういいわ、そこまでにしなさい。シラユキ第一主義なのはいい事だけれど、過ぎた事をいつまでも悔やむものでもないのよ。シラユキはちゃんと目覚めて、今笑顔で私たちの前にいる、それでいいじゃない。それとも貴女はその大切なお姫様の笑顔を曇らせたいのかしら?」


「も、申し訳ありません!! 決してそのような事は……!!」


 こここここ怖い!! 私今母様の膝の上にいるんだから、怒らせないでよ!! 怒った母様は怖過ぎる!!


「謝るのは私に? 違うでしょう?」


「はい……。姫様、本当に申し訳ありませんでした……」


「ううん。いいよ、シアさんが怒ってないならそれでいいよ」


 母様が怒りを納めてくれればいいよ……




「母さんこええ……」


「お母様怖いわ……。シア、本気で気をつけてね」


「そうだよシア、生きた気がしないよ……」


「は、はい……」


「あはは。エネフェア様は怒ると怖いからね」


「もう、みんなして怖い怖いと……、怒るわよ?」


「ごめんなさい!!」


「何でシラユキが謝るの!? みんなひどいわ!」






 その後、精霊通信でギルドに聞いてみたところ、シアさんの言うとおり、ナナシさんに特に変わりは無かったみたいだ。

 でも、全身の傷と、古い傷跡まで全部治ってしまったみたいで、お肌がツルツルになったと喜んでいた様だ。ミランさんが羨ましがっていたらしい。

 次にギルドに行った時はミランさんにも……


「駄目よ?」


「はい!!!」







特に何事も無く話は続いていきます。

何か本当に皆さんの期待?を裏切ってばかりですみません。

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