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幽霊、いるなら出てこい―非オカルト心霊検証録―  作者: ズッキー


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第4話 中に入ってくるもの

「……誰だよ」


返事はない。


ドアの外、静まり返った廊下。

さっき確かに、ノックの音がした。


コン。


もう一度。


今度は、ゆっくり。


コン。


俺はドアノブに手をかけたまま、動かなかった。


覗き穴を確認する。

誰もいない。


「……」


ゆっくりと、ドアを開ける。


廊下。無人。

音も気配もない。


「……は?」


視線を落とす。


床。


白い粉。


そして——足跡。


外から、内側へ。


「……おい」


思わず声が漏れる。


確かに、ついている。

一歩分。もう一歩。


だが——途中で消えている。


「……なんでだよ」


俺はしゃがみ込む。


粉を指でなぞる。


乾いている。風もない。

この廊下で、自然にこうなることはない。


「……いや」


立ち上がる。


「説明できる」


そう言い切る。


ドアを閉める。


カチ、と鍵をかける。


——その瞬間。


ザッ。


背後。


「っ!」


振り返る。


誰もいない。


机。ベッド。カーテン。

いつも通りの部屋。


「……気のせいだ」


呼吸を整える。


「全部、説明できる」


スマホを取り出す。


録画を開始する。


「検証する」



俺は床に、もう一度小麦粉を撒いた。


今度は部屋の中。


ドアから部屋の中央まで、一直線に。


「これで分かる」


小さく呟く。


三脚を立てる。

カメラを固定する。


部屋全体が映る位置。


「……よし」


録画開始。


時刻は0:12。



何も起きない。


静寂。


時計の秒針だけが、やけに大きく響く。


0:18 異常なし

0:24 異常なし


「……やっぱり」


俺は小さく息を吐く。


「錯覚だ」


そう言いかけた、そのとき。


ザッ。


「……!」


音。


確かに、今——


ザッ。


粉を踏む音。


俺は動かない。


視線だけで床を見る。


何もない。


だが——


粉が、沈んでいく。


ゆっくりと。


まるで、見えない何かが踏んでいるように。


一歩。


また一歩。


「……おい」


声が震える。


「やめろよ」


足跡が、できていく。


確実に。


俺の方へ。


ザッ。


ザッ。


距離が縮まる。


「……来るな」


思わず一歩、後ろに下がる。


その瞬間。


足跡が止まった。


沈黙。


何もない空間。


「……」


ゆっくりと息を吐く。


「……終わりか」


そう言った瞬間。


トン。


肩に、何かが触れた。


「——っ!!」


振り返る。


誰もいない。


だが——


粉の上に、


“自分のものではない足跡”が、


真後ろに、あった。



俺はその場に立ち尽くした。


思考が追いつかない。


「……いや」


首を振る。


「違う」


スマホを掴む。


録画を止める。


震える手で再生する。


映像。


何もない空間。


そして——


ザッ。


粉が沈む。


足跡ができる。


ここまでは同じ。


その後。


俺のすぐ後ろ。


空間が、歪んでいる。


ノイズのように。


そして——


“何か”が立っている。


人の形。


だが、輪郭が定まらない。


「……は?」


俺は画面に顔を近づける。


“それ”が、


ゆっくりと手を伸ばす。


「……やめろ」


思わず呟く。


画面の中の“それ”が、


俺の肩に触れる。


その瞬間——


映像が、乱れた。


ノイズ。


ブラックアウト。



再生が止まる。


「……」


無音。


俺はゆっくりと顔を上げる。


部屋。


何もない。


「……」


もう一度、動画を再生しようとして——


止まる。


ファイルが、ない。


「……は?」


一覧から消えている。


「……おい」


さっきまであったはずの動画。


完全に、消えている。


「……バグか」


そう呟く。


声が、かすれる。


「……説明できる」


そのとき。


カーテンが、わずかに揺れた。


風はない。


窓は閉まっている。


「……」


俺は目を逸らす。


見ない。


見なければ、存在しない。


「……いるなら」


小さく呟く。


「出てこいよ」



その夜。


俺は電気をつけたまま、眠れずにいた。


午前3時。


カメラが、勝手に起動した。


誰も触れていないのに。


録画が始まる。


部屋には、俺が眠っている。


静かな映像。


数秒後。


画面の端。


“それ”が、映っていた。


ベッドの横に、立っている。


しばらく動かない。


やがて、ゆっくりと顔を近づける。


俺の耳元で、


何かを、囁いた。



翌朝。


その映像は、存在しなかった。


「おい、神谷」


大学の食堂で声をかけられる。


「昨日どうだったんだよ」


俺は一瞬だけ言葉に詰まる。


だが、すぐにいつもの調子で答える。


「……普通だよ」


「ほんとかよ」


「説明できる」


そう言い切る。


——それが、俺だからだ。

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