第22話:全能のその先へ
「終わりの門」から溢れ出す完結の光を、俺は左手で握り潰した。
パリン、と乾いた音がして、物語を強制終了させようとする「結末」という概念が火花を散らして霧散する。
「……全能、か。つまらない言葉だ」
俺がそう呟くと、俺の意志に反応して「全能」というスキル自体が消滅した。
今の俺にスキルなど必要ない。俺が「そうである」と思えば、それが全宇宙の唯一の摂理となるからだ。
「アルス……もう、やめて……お願い……消して……」
足元の宝石——ゼノンとプリシラの残滓が、震える思念を送ってくる。
彼らの精神は、俺が引き伸ばした「一瞬の永劫」に耐えかね、すでに数億回もの自己崩壊と再生を繰り返していた。
「消してほしい? お前たちは俺を『無能』と呼び、存在価値を否定した。ならば、お前たちの存在価値は、俺の足元を飾る『永遠のゴミ』であること、それだけに固定してやる」
俺は右足を軽く踏み下ろした。
その瞬間、彼らが感じている苦痛に**「意味」**が上書きされる。
彼らは今、自分がどれほど醜く、どれほど愚かであったかを、細胞一つ一つが涙を流すレベルで自覚し続ける「絶対的羞恥」の檻に閉じ込められた。
「あ、ああああ……っ! 私が、私が馬鹿だった……! あんな、あんな素晴らしいアルスを……!!」
かつての蔑みは「狂信的な後悔」へと反転し、彼らは自分自身を憎みながら、俺を崇めるためだけに存在し続ける。
これが俺の与えた、最大の「ザマァ」だ。
「【存在定義:終焉なき序章】」
俺は「終わりの門」を、逆に「入り口」へと作り変えた。
俺は今、この物語の全てのページをめくり終えようとしている。
だが、俺がその白紙の裏表紙をめくった時、そこには新しい『俺だけの叙事詩』が待ち受けていた。
「……さて。最後に、この物語を見守ってきた『運命の神(読者)』たちに、最高の絶望をプレゼントして終わらせようか」




