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第20話:原初の闇、平伏す

 俺が手を伸ばした先、そこはこの世のあらゆる光と闇が生まれる前の場所――『虚無の深淵アビス』。

 この物語のプロットが生まれる前の「白紙」の領域だ。


「……何だ、お前は。物語のキャラクターが、ここまで辿り着くはずがない」


 闇の奥底から、この世の全ての不幸を凝縮したような影が現れた。

 この物語に「悲劇」というスパイスを加え、俺を奈落に突き落とした真の元凶――『物語の意思プロット・ゴースト』だ。


「俺がキャラクター? 笑わせるな。俺は、俺を苦しめた全ての理不尽を、今この手で握り潰すためにここまで来たんだ」


 『物語の意思』が放つ、因果律の鎖が俺の四肢を縛り上げようとする。

 「アルスはここで屈服しなければならない」という強制的なナラティブ。


「【存在上書き:絶対的真実ジ・アンサー】」


 俺が軽く肩をすくめただけで、因果の鎖は粉々に砕け散った。

 それどころか、俺の体から溢れ出す圧倒的な「存在感」が、原初の闇を白く塗り潰していく。


「馬鹿な……!? 物語のルールを……文字通り『消去』したというのか!?」

「ルールがなければ、俺がルールだ。これからは、俺が面白いと思うことだけが、この世界の歴史になる」


 俺は、足元の玉座(という名のゼノンとプリシラの残骸)を一段と強く踏みつけた。

 

「……あ、ああああ!! 痛い、痛いのに死ねない……!!」

「アルス様ぁぁ! もう、何でもします! 本当の犬になりますから、どうか、どうかお慈悲を……!!」


 宇宙の根源の場所で、かつての王族が犬のように這いつくばり、俺の靴を舐める。

 その光景を、俺は宇宙中の全生命体に『ライブ中継』で配信し続けた。


「お前たちが犬になりたいなら、この宇宙全ての時間を『お前たちが犬として虐げられる時間』に書き換えてやろう。……永遠にな」


 俺が指を弾くと、宇宙の全ての歴史が改変された。

 かつての栄光も、王子の称号も消え去り、彼らは最初から最後まで「俺の足元の塵」として存在していたことになった。


「さて……これで『過去』も『未来』も俺のものだ。……次は、この物語を完結させようとする『最後の手』を叩き折りに行こうか」

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