第2話:一歩歩けば、世界が壊れる
奈落の底に轟音が響き渡った。
神話級の魔物――『深淵の捕食者』と呼ばれた巨大な蛇は、俺のデコピン一発で、細胞の一つも残さず蒸発していた。
衝撃波だけで、周囲数キロの岩壁が砂利と化す。
「……これが、俺の力か?」
ステータスを確認しようとするが、脳内に響く数値が多すぎて意味をなさない。
【筋力:∞(測定不能)】
【魔力:∞(測定不能)】
【スキル:全知全能、事象改変、概念破壊……】
ただ立ち上がった。
それだけで、奈落の底の地面が俺の質量に耐えきれず、メキメキと沈み込んでいく。
一歩、足を踏み出す。
刹那、空間そのものが悲鳴を上げてひび割れた。
音速を数億倍上回る移動。景色が流れるどころか、俺が歩いた場所の時間が止まっている。
「さて……地上に戻るか」
俺を奈落に落としたあの二人。
今頃、豪華な食事でも楽しんでいるんだろうか。
俺は上空を見上げ、軽く跳躍した。
ただのジャンプだ。
だが、俺の体が空気を切り裂いた瞬間、奈落にこびりついていた数万匹の魔物が、その風圧だけで全滅した。
ドゴォォォォォォン!!
地上――王都のど真ん中に、巨大な光の柱が突き刺さる。
俺は、一瞬で『戻って』きた。
「な、なんだ!? 何が起きた!」
「天変地異か!? 騎士団を呼べ!」
パニックに陥る民衆と兵士たち。
その中心で、俺は砂埃の中から静かに歩み出る。
「……久しぶりだな、クソ野郎ども」
そこには、震えながら俺を見上げる、プリシラとゼノンの姿があった。




