第17話:終焉の概念を粉砕する
「物語の終わり」を告げる虚無の化身。それは形を持たず、ただ『完』という概念そのものが巨大な質量となって俺を押し潰そうとする。
普通の主人公なら、ここで物語が強制終了し、存在が消滅するだろう。
「……だが、俺のステータス更新速度を忘れたか?」
【通知:個体名『アルス』、物語の終了(完結)により存在抹消を開始……。失敗。】
【再試行。失敗。……個体名『アルス』の存在強度が、物語の記述容量を『無量大数倍』上回りました】
俺がただ一歩、虚無に向かって踏み出す。
それだけで、世界を終わらせようとしていた黒い霧が、恐怖に震えるように霧散した。
「終わりだと? 笑わせるな。俺が『続け』と言えば、地獄の果てまでこの物語は続くんだよ」
俺は虚空を素手で掴み、本来なら「完」と書かれるはずだった白紙の未来を、力任せに引き寄せた。
「【概念上書き:無限続行】」
パリンッ! と、世界にヒビが入る。
俺の意志一つで、終わるはずだった時間が再び動き出し、さらに加速する。
足元の玉座に埋め込まれたゼノンとプリシラの宝石が、あまりのプレッシャーにミシミシと音を立てる。
彼らは、俺が物語のルールを壊すたびに、その余波だけで魂を数兆回も削り取られていた。
「あ、あああ……! アルス、もうやめて……! 世界が壊れる、私たちが消えてしまう……!」
「消えさせないと言っただろう? お前たちは、俺がこの退屈な『全能』を遊び尽くすための、永遠の観客なんだからな」
俺は空を見上げ、右手を天に突き出した。
そこには、俺を監視していた「さらに上の次元」の影が見える。
「……よし。この世界の『神』も『運命』も『終焉』も片付いた。次は、俺をこんな世界に閉じ込めた『システムそのもの』を喰らってやる」
俺の体から溢れ出す魔力が、ついに宇宙を物理的に突き破り、未知の階層へと溢れ出した。




