第14話:シナリオの破壊者
虚無の回廊を越えた先。そこには、この世界の「設定」が書き記された『運命の書』が浮遊していた。
そこには、俺が奈落に落ち、絶望して死ぬはずだった本来のシナリオが刻まれている。
「『アルスは裏切りに絶望し、静かに息を引き取る』……か。勝手なことを書いてくれる」
俺がそのページに触れると、本そのものが俺の魔力に耐えきれず、黒く焦げ始めた。
「【設定改変:全能の執筆者】」
俺は虚空に指で文字を書き込んだ。
書き換えた内容はたった一行。
『アルスが望むことは、すべて絶対の事実となる』
その瞬間、世界から「不可能」という概念が消滅した。
俺が「太陽が冷たい」と思えば太陽は凍り、「死者が蘇れ」と思えば塵から命が芽吹く。
「な、なんだ……この力は……!?」
地獄の惑星でバラバラに解体されていたゼノンとプリシラが、一瞬で元の姿に再生され、俺の目の前に転がされた。
だが、彼らの瞳にはもはや知性の欠片もない。俺の存在が放つ「格」の高さに、脳が焼き切れたのだ。
「お前たち。まだ壊れるには早すぎる。俺が『お前たちは無限に苦痛を感じる精神力を持つ』と設定を書き換えたからな」
俺がそう告げると、二人の瞳に正気が戻り、同時に凄まじい絶叫が響き渡った。
今、この瞬間から彼らは、どれほど精神が壊れても、即座に「最高の感度で絶望を感じる状態」に修復され続ける。
「さて……世界のルールは俺が書き換えた。次は、この世界の外で俺を見守っている『高次元の観測者』たちに挨拶に行こうか」
俺は、物語の「枠組み」そのものを指先で引き裂いた。




