第10話:運命の糸を千切り捨てる
全ての宇宙の「裏切り者」を処理した俺の前に、奇妙なものが現れた。
それは、空中に浮かぶ無数の銀色の糸。
「……これが、この世の全てを操る『運命の糸』か」
一本の糸が、俺の指に絡みつこうとする。
どうやら「アルスはここで死ぬはずだった」という本来の歴史へ引き戻そうとしているらしい。
だが、今の俺にとって、運命などという言葉は、安っぽいドラマの脚本よりも価値がない。
「【存在肯定:絶対独立】」
俺が力を込めた瞬間、指先に触れた銀色の糸が、黒く腐り落ちていった。
それだけではない。俺を中心に、宇宙を覆っていた「運命」という名のネットワークが、ドミノ倒しのように崩壊し始める。
「な、なんだ……!? 体が勝手に動く……!」
「俺たちが、自分の意思で喋っているだと……!?」
世界中の人々が驚愕の声を上げる。
俺が「運命」を破壊したことで、この世界の全生命が、神や運命の操り人形から「真の自由」を手に入れたのだ。
だが、それは同時に、世界の崩壊を意味していた。
支えを失った次元が、ガラガラと音を立てて崩れていく。
「……勝手に壊れるな。俺がまだ、この世界でやりたいことを残しているんだ」
俺は、崩壊する空間を素手で掴み、無理やり引き寄せた。
バラバラになった大陸、砕けた星々、消えゆく概念。
それらを粘土のように捏ね上げ、一つの「新しい舞台」を作り出す。
それは、広大すぎる大陸と、見たこともない色彩の空を持つ、俺専用の箱庭。
「【名称決定:終焉の庭】」
俺が宣言した瞬間、壊れかけていた多次元宇宙は、一つの巨大な「大陸」へと凝縮された。
ここには、俺が救いたいと思った奴らと、俺が弄びたいと思った奴らだけが残る。
俺は、その中心にそびえ立つ、高さ一万メートルの「黒神座」に腰を下ろした。
「第1話からここまでは、ただの『準備運動』だ。……さて、世界を一つにまとめたところで、本格的に『新しい遊び』を始めようか」
俺の目は、まだ見ぬ「強者」や「未知の理」を探して、新世界の果てを捉えていた。




