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第1話:断罪の儀式と奈落への転落

「アルス・レーヴェン。貴様のような無能は、我が国の汚点だ。本日をもって婚約を破棄し、国外追放……いや、『処刑』とする」


 突きつけられたのは、あまりに非情な言葉だった。

 豪華絢爛な玉座の間。そこに立つのは、俺の婚約者だったプリシラ王女。

 そして、その隣で彼女の腰を抱き、嘲笑を浮かべているのは親友だった第一王子、ゼノンだ。


「……本気か? プリシラ。俺たちは子供の頃から――」


「黙れ、無能が。お前のスキル【不滅の残響】なんて、死んでも生き返るだけのゴミだろう? 兵士の身代わりにもなれぬ役立たず。私が愛するのは、次期国王となるゼノン様だけだわ」


 周囲の貴族たちから、ドッと嘲笑が沸き起こる。

 これまで俺が命を懸けて守ってきた連中が、今はゴミを見るような目で俺を見下している。


「安心しろ、アルス。ただ殺すのは忍びない。……『世界の墓場』に落としてやる」


 ゼノンの合図とともに、俺の足元の床が抜け落ちた。

 そこは、一度落ちれば二度と戻れないと言われる、魔物だらけの底なしの奈落。


「あはははは! さようなら、役立たずのアルス! 奈落の底で一生、死んでは生き返る地獄を繰り返すがいいわ!」


 プリシラの高笑いが遠ざかる。

 俺の体は、真っ暗な闇へと吸い込まれていった。

 ――だが。

 上空から落ちていく俺の脳内に、無機質な【声】が響き渡った。


【通知:個体名『アルス』が、極限状態の恐怖により心停止。死亡しました】

【スキル【不滅の残響】発動。蘇生します】

【バグ発生。蘇生時のボーナス倍率がオーバーフローしました。全ステータスが、前回の『9999兆倍』に更新されます】


「……は?」

 落下速度が増す。

 空気抵抗が、超重力となって俺の体を押し潰す。


【通知:死亡しました。蘇生。ステータスがさらに9999兆倍になります】

【通知:死亡しました。蘇生。ステータスがさらに9999兆倍になります】


 一秒。

 たった一秒の間に、俺は一億回死に、一億回復活した。

 そのたびに、俺の筋肉、魔力、神経、魂の全てが、宇宙の全物質を足し合わせても足りないほどの暴力的な出力へと更新されていく。

 奈落の底が見えた。

 神話級の巨大な魔物が、口を開けて俺を待っている。

 俺は、そいつに向かってそっと指を向けた。


「――消えろ」


 ドン、と。

 ただのデコピンが、世界の物理法則を粉砕した。

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