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孤高の才女は毒に溺れる  作者: kuroyomi4


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31/32

「――――のん、しののん。朝だよ~」


「ぅうん......」


 からだがゆれている。


「もう7時半だよ~。ママも仕事行っちゃたよ~」


「ん?もうそんなじかん?」


「そうだよ~。パン焼いてあげるから起きて~」


「わかった。おきるわ」


 からだをおこす。


「先にリビング言ってるからね~」


 かおをあらいに、せんめんだいにいく。


「おはよう」


「おはよ~」


 目が覚めたので、リビングに行く。

 先ほどは寝ぼけていて気が付かなかったが、彼女は制服に着替えていた。


「そういえば私が起きた時、しののんのスマホ鳴ってたよ」


「そうだったのね。確認してくるわ」


 部屋に戻って、スマホを確認する。


『死体の調査が終わった』

『結果が知りたかったら電話してくれ』


 朝の通知は父からのLONEだった。

 彼女が学校に行った後に確認しよう。


「通知何だった?」


「お父さんから。調査が終わったって」


「そうなんだ......今日行くの?」


「ええ、早く行動するに越したことは無いから」


 ようやくこの時が来たんだ。

 待つなんてできない。


「私も学校休んで一緒に行こうか?」


「そんなことしなくて大丈夫よ。母とは私だけで話したいの」


 私は母と二人だけで話したい。これは私のエゴだ。

 母は私の最大の敵であり、乗り越えないといけない壁でもある。

 彼女に手を握っておいてと言って、散々助けてもらったのに最後に必要ないと言うのは、自分でも最低だと思う。


「「......」」


 私と彼女は見つめ合い、無言の時間が流れる。


「分かったよ。無茶だけはしないでね」


 彼女が諦めてくれる。


「ありがとう」


 最初からずっと彼女は私のわがままを聞いてくれる。


「でも、心配だなぁ......」


「じゃあ、位置情報共有でもしておく?」


「え?」


 自分でも何を言っているのか分からないが、私を心配してくれている彼女にできることはこれくらいしか思い浮かばない。


「やっぱなし...忘れて」


「いや、やってよ!」


 彼女は私の目の前まで来る。

 興奮して嬉しそう目を輝かせている。


「それでいいの?」


「うん。もし、しののんに何かあった時が心配だったから」


「そんな、自分の家で危険になることなんて......」


 無いとは言い切れない。

 彼女に言っていない秘密が私の頭の中をよぎる。


「言いきれないでしょ?」


「そうね」


 私達はスマホを取り出し、位置情報共有アプリをインストールする。


「これで......できた!」


 画面上に彼女の位置情報が映し出される。

 最近のアプリはすごい。


「じゃあ、学校行ってらっしゃい。もう8時よ」


 もう起きてから30分も経っていた。

 パンを食べるはずだったのに。


「やば!もう行かなきゃじゃん!」


 彼女は慌てて髪を整え、スクールバッグを背負う。


「ごめん、しののん。自分でパン焼けれる?」


「できるわよ。同じのを使ってたし」


 彼女の家にあるトースターは離れの家でも使っていたものと同じだ。

 使い方は東野から教わっていたので分かる。


「服は私のやつ好きに来ていいからね」


「ありがと」


「じゃあ、いってきます!」


「はい、いってらっしゃい」


 玄関まで彼女を見送り、父に電話をかける。


「おはよ、お父さん」


「おはよう。敦那」


 電話に出た父の声はどこか嬉しそうだ。


「いや~、娘からおはようって言われるのはいいな」


 私の姉は現在1人暮らししているらしく、娘からの挨拶が久しぶりで嬉しかったらしい。

 声だけ聴くと優しいお父さんのイメージだが、警察のトップだ。


「調査の結果が出たんでしょ?どうだったの?」


「もうちょっとお父さんと話しようよ~」


「いいから、教えて」


 父の言う事を無視して、話を進める。


「わかったよ」


 父は低く喉を鳴らして、改まる。


「敦那には詳細を教えることはできないが、亡くなったのは四日前に失踪した女子高生だった」


「つまり、あの人たちは......」


 私の代わりとして人を殺したのか?


 最悪の予想が頭に浮かぶ。


「東雲は殺人を犯した可能性がかなり高い」


 父が私の考えを肯定する。

 なんでなんだ。

 あの人は自分たちが良ければその他の人間なんてどうでも良いのか。

 それが、人の命を犠牲にして得る物だとしても。


「敦那?」


「......私のせいで関係のない人の命が失われたのね」


 私があの日逃げたから。

 死ねななかったから。

 私と何も関係がない未来ある少女の命が失われた。

 やはり、あの時私は......


「敦那、お前は悪くない。お前は自分の身を守るためにあの家から逃げ出したんだ」


「でも、私が生きているからその子は殺されちゃった」


「生きていて何が悪いんだ。殺人を犯して敦那の死を偽装したのはあいつらだ」


「分かってるわ」


 分かっている。

 しかし、もしあの時と考えてしまう。


「それに、茉莉さんが助けてくれたんだろう。今を否定するという事は、彼女の行動を否定することと一緒なんだぞ」


「ちがっ......わないわね」


 生きているのは彼女が私を助けてくれたからだ。

 今を否定するのは、東野や優子さんや彼女の思いを無碍にすることになる。

 私のせいで命が失われたのは変わらないが、ここで私が絶望するのは違う。

 失われた命のためにも私は母と話さないといけない。


「そうだ。お前にできることは菊と話して、より多くの情報を警察に渡してくれることだ」


「そのために私と電話をつないだままで菊と会うのだろう?」


 私は母も逮捕してもらおうと思っている。

 あの時はこれ以上彼女に黒い部分を知られるわけにはいかないと思ったため、詳しくは言わなかった。

 私だけで母と話すのもそのためだ。


「ありがとう、お父さん」


「いいよ。娘を慰めるのは親の役目だからね」


 それからは、父と今日の動きについて詳細に話し合った。

 私と母の会話は自供として扱われるらしく、警察はかなりの準備をしているらしい。

 人が死んだのだ、当たり前だろう。


「危険を感じたらすぐに助けを求めろ。私達がすぐに向かうから」


「頼りにしてるわ」


 警察が後ろにいると分かるとかなり気持ちが楽になる。

 必要になる場面が来ない事を祈るが。


「東雲家に着いたら電話するわね」


「その時は、この番号じゃなくてさっき教えた番号にかけてくれよ」


「気を付けるわ。じゃあね」


 通話を終了して、次は東野に連絡をする。


「おはよう東野。朝にごめんなさいね」


「おはようございます敦那様。全然大丈夫ですよ」


「東雲の家まで送ってほしいのだけれど、構わないかしら」


「私でよろしければ、ぜひやらせてください」


「じゃあ、お願いね。迎えに来てほしくなったまた連絡するから」


 スマホをしまい、キッチンに向かってトースターでパンを焼く。


「腹が減っては戦は出来ぬ」

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