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孤高の才女は毒に溺れる  作者: kuroyomi4


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報道

「なんでよ......」


 目が覚めると彼女の顔が私の目の前にあった。

 昨日は人一人分くらいのスペースがあったはずなのに。


 すーすーと寝息を立てながら穏やかな顔で寝ている。


 スマホの電源を入れると06:00と表示される。

 彼女を起こさないように静かに布団から出て、リビングに向かう。


「敦那ちゃん、おはよう」


「おはようございます」


 優子さんは、テレビを見ながらパンを食べていた。


「よく眠れた?」


「はい」


「良かった。茉莉はまだ寝てる?」


「気持ちよさそうに寝てました。起こしてきた方がよかったですか?」


「大丈夫よ。だって、ほら」


 私の後ろの扉が開いて、彼女が眠そうに目をこすりながら入ってくる。


「ふたりともおはよ~」


「「おはよう」」


「いまなんじ?」


「6時よ」


「ろくじ?ふたりともおきるのはやいよ~」


 寝起きで口がうまく動いていない。

 ふにゃふにゃしてる。


「普通よ」


「わたし、いっつもしちじにおきてるからさ~」


 彼女は伸びをしながらソファに座る。


「よし!起きた」


 目が覚めて、背筋がすっと伸びている。


「2人とも朝ごはんは食パンでいい?」


「はい」

「いいよ~」


「優子さん、コーヒーってありますか?」


「あるわよ。ちょっと待ってね」


 優子さんはバリスタでコーヒーを作ってくれる。


「はいどうぞ」


「ありがとうございます」


 コーヒーと一緒にトースターで焼いてバターを塗ったパンと複数のジャムを持ってきてくれた。


「はい、好きなやつ塗って食べてね」


 私はメープルを塗り、彼女はイチゴを塗って食べる。


「「いただきます」」


「しののん、コーヒー飲めるんだ」


「ええ、目を覚ますために毎日飲んでるわ」


 味はそれほど好きではないが、目を覚ますのにはこの苦みが一番効果的。


「茉莉は子供舌だから苦いの無理だもんね」


「ママ、うるさいよ~」


 今日も楽しそうに会話する。

 この家はずっと暖かい。


『続いてのニュースです』


『昨夜未明、一ノ瀬水族館周辺の海岸で人が溺れているのが見つかり、病院に搬送されましたが死亡が確認されました』


「ここって、私たちがしののんを助けた場所じゃない?」


「え?」


 彼女に言われてテレビに目をやる。

 テレビに映っていたのは私が自殺しようとしていた海岸だった。

 同じ場所で人が死んだ?

 しかも、そんなに日がたってないのに?


 そんな考えは次の言葉で完全に消えてしまった。


『亡くなったのは河合高校に通っていた東雲 敦那さん16歳で、数日前から行方不明にだったそうです』


「「は?」」


 私と彼女が同じリアクションを取る。

 部屋の温度が急激に下がった気がした。


 私が死んだ?

 いや、私は生きている。


 私は自分の体を確認する。


 大丈夫、身体もあるし意識もある。

 私が東雲 敦那だ。


『敦那さんは、東雲財閥当主である東雲 菊の娘で』


 優子さんがテレビの電源を切る。


「どういう事?しののんが死んだ?そんなわけないじゃん」


 彼女はニュースを聞いて明らかに動揺している。

 私もあまりの衝撃に、動揺して言葉が出ない。


「ふたりとも、落ち着いて」


 私達の手を握って落ち着かせてくれる。

 優子さんだけは落ち着いて状況を理解できているようだった。


「茉莉、私たちは敦那ちゃんの命を救った。敦那ちゃん、あなたは生きているわ。大丈夫」


「そう...だよね......じゃあ、あれは何だったの?」


 彼女は少し落ち着きを取り戻したようだ。

 私も優子さんの手の温もりを感じることで、生きていると思えた。


「多分、私が見つからないからいっそのこと死んだことにしたんじゃないかしら」


「そんなこと......」


「するわよ。あの人たちは私に愛情何て持ってなかったんだから」


 私が見つからないから死んだことにする。

 母は娘を亡くした「可哀想な母親」として世間から扱われ、同情される。

 道具は無くなる最後まで道具として使われただけだ。


 そんな事を考えていると、彼女も私の手を握ってくる。

 彼女たちは悲しい表情を浮かべて私の手を握っている。


「ごめんなさい」


 何についてかは分からないが、私の口から謝罪の言葉が出る。

 多分、悲しい顔をさせたことに対してなのだろう。


「ママ、今日学校休んで良い?」


「そうね。休む理由は、友人の訃報を聞いて体調が悪くなったからで十分ね」


「ありがと」


「いいの?」


「うん、こういう時は誰かと一緒に居ないと。しののんなら尚更ね」


「ごめんなさい。あなたの行動を制限してばっかで」


「いいんだよ。助けるって言ったんだからさ」


「ありがとう」


「うん!」


 私達はもう冷めて硬くなっているパンを食べた。


「しののん、昨日言ってたアニメ見ようよ」


 歯を磨いていると彼女が提案してくれる。

 私は喋ることができないので頭を縦に振る。


「じゃあ、リビングで待ってるね~」


「敦那ちゃん、私はもう仕事に行くからね。茉莉とゆっくりすごしてね」


 急いで口をゆすいで、優子さんに言葉を返す。


「ありがとうございます。いってらっしゃい」


「いってきます」


「いってらっしゃ~い!」


 リビングの方から大きな声が聞こえる。

 それに対して優子さんは微笑んで仕事に向かった。


「しののん、早くソファに座って~」


「ちょっと待って。東野から電話が来てたわ」


「東野さんから?」


 多分、さっきのニュースの事だろう。

 スマホを部屋に置いたままリビングに来てしまったため、気付かなかった。


「ごめんなさい。先に折り返すわ」


「その電話、私も聞いて良い?」


「いいわよ。あなたに知ってほしいこともあるし」


 彼女は私の事について多くの事を知っている。知りすぎているくらいだ。

 いずれ私の計画の全貌を彼女と東野にはすべて話すつもりなので、これからの話も聞いておいてほしい。


「もしもし、東野?」


「おはようございます敦那様」


「おはよう」


「東野さん、おはようございます」


「おや、茉莉様も一緒に居らっしゃるのですか?」


 東野に今の状況を説明するのを忘れていた。

 電話をしてくれたのも私が知れる状況か分からなかったからだろう。

 私は今に至るまでの事を東野に話した。


「伝えるのを完全に忘れていたわ。心配をかけたでしょう、ごめんなさい」


「いえいえ、敦那様が安全ならそれが一番です。茉莉様もありがとうございます」


「しののんは私たちが守るから任せといて!」


 彼女は胸を叩きながら言う。

 カメラはついていないので、東野には見えていない。


「はい、任せました」


「東野、要件は朝のニュース?」


「そうです。おふたりとも見られたのですね」


「東野さん。あれは何だったの?」


 私ではなく彼女が問う。


「すみません、私にもわからないんです。ただ、私の考えでは......」


「私が見つからないからいっそのこと死んだことにした?」


 東野には言いずらいだろうと思い、代わりに私が言う。


「はい......」


「そうなんだ......」


 また、空気が重くなってしまった。


「ふたりとも聞いて。私はこのニュースを聞いて最初は動揺したけど、今は何とも思ってないわ」


 これは本心だ。

 別に最初からあいつらに期待なんてしていないし、むしろいつも通りで助かった。


「むしろこれは好機よ。あいつらは自分から付け入る隙を与えたの」


「しののん、何をするつもりなの?」


 彼女は言葉の意味が理解できていないらしい。


「話しましょう、私の計画について」

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