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024:第13章「魔竜王ザヴィグリア」②

「フェルガはシルフィを守れ! ……行くぞ!」

号令とフェルガの聖なる遠吠えが重なり響いて合図となる。

同時に、魔竜王から放たれた巨大な黒焔弾を前に、クレムウェルが詠唱で魔方陣を描き出した。

それも一つではない。荒れ地すべてを覆うほどの、百近い魔方陣が敷き詰められて巨大な八角形を作り出す。八角形は最も守護の力を高めるとされる聖なる形だ。


「漆黒より暗き果てしなき闇よ、すべてを呑み込め。すべてを無に帰せ。我、クレムウェル・ロイド・エルダイヤの名において、地上に息づく者を黒焔の災厄より守り通せ……! 極暗黒(ラ・ディル・)無次元盾(ヴァニルード)!」


それぞれの魔方陣から闇が生じて融合し、一つの巨大な闇色の水鏡のような盾となる。

すべてを飲み込み、すべてを無に還す、虚無の闇。かつての魔王・クレヅェクルの闇魔法。

本来は敵を殲滅するための魔法だったそれを、クレムウェルは宙に生み出すことで最強の盾とした。

「消え去れ……っ!」

大地に迫ってきていた燃えさかる隕石のような赤黒い黒焔弾は、闇鏡の盾に次々と吸い込まれては無に帰していく。

地に伏して倒れた兵たちの上に、黒焔はひと欠片たりとも落ちることはなかった。

「我が黒焔よりも……我以上の闇魔法だと!? 人間ごときがっ!? そんな馬鹿なっ!」

「お前に世界を消滅させはしない! そのためなら、かつての力もすべて、ここで使いきる!」

地脈から取り戻した魔王クレヅェクルの膨大な魔力。

それを今、大切なものを守るため、守護の力として王子クレムウェルが顕現させた。


「――――今だ、ウィルフレッド! お前の光を、やつに叩き込めっ!」


「ああ! その命令、完遂してやるよ――――クレルっ!」


機を窺っていたウィルフレッドが空高く跳躍する。

両手で頭上高くに掲げたのは、幾度の魔王討伐を成してきた伝説の剣・祝福(ブレス・)の閃光剣(ギア・ブレード)


「天を貫く祈りよ! 轟き響いて眩しき剣となれ! 魔を滅する閃光よ! 我、ウィルフレッド・エメリス名の下に光を届けよっ! 極天雷(ラ・ギア・ライト)閃光斬(ニングスラッシュ)ーー!」


最大の黒焔を防がれて動揺していたザヴィグリアは一瞬だけ反応が遅れた。

その刹那、ウィルフレッドが放った渾身の一撃が閃光となって魔竜王の身体を袈裟懸けに切り裂く。

黒い血が噴き出し、ザヴィグリアの身体が内側から金色の光で膨れ上がった。



「グギャアアアアアアアアーーーーーーッッ!」



ウィルフレッドの光魔法を帯びた一撃が、確実にザヴィグリアの心臓に達する。

大音響の断末魔が荒れ地に響き渡り、音の重圧が伏した兵士たちにずしりとのしかかる中、瘴気から生まれた魔物たちは一斉に塵と化した。

もはや地に倒れた魔竜王に瘴気を生み出す力はない。

その命もじきに尽きるだろう。

怨嗟にまみれた黒き魂を残して。


「お……おのれ……っ、人間……め……っ!」


だが、戦いが終わったかに思えるここからが、シルフィーナにとっての最後の務めだった。

「今だ! シルフィ!」

クレムウェルの合図でシルフィーナは長き詠唱のすべてを唱え終え、魔力を極限まで高めた魔石の杖を高く掲げる。


「創世の女神よ、我が祈りに応えたまえ。彼の者を(かいな)に抱き、慈悲の光を与えたまえ――――極四元素(ラ・ルア・シェル)殻結界(ディション)!」


シルフィーナが発動させたのは、自然の四大元素、火・水・風・土すべての魔力を同時に扱う至高の結界魔法だった。

本来は最高クラスの司祭たち数名が何日もかけて生み出すもの。だが、今ここにいる王国軍の中でこの魔法を扱える可能性があるのは四大元素の魔力を持ったシルフィーナのみ。


「魔王ザヴィグリア! 私が今、あなたをここで――――!」


大地に巨大な魔方陣が刻まれ、立ち上がった白き光が魔竜王の身体を結界で封じた。

大きな、一つの卵のように。


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