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【Click→】エンゲブラ的短編集

【4分ドラマ】はじまりの朝、あるいは最後の朝

作者: エンゲブラ

朝、目を覚ますと、いつもと何かが違っていた。

何が違うのかはハッキリとは言えないが、とにかく身体に違和感があった。

身体の調子が悪いのかといえば、そういったわけでもない。

いたって普通なのだが、やはり何かが違う。


毎朝のルーティーン通り、PCに電源を入れ、眠っている間のニュースをチェック。モニターを眺めながら歯ブラシをくわえる。


私は朝食を摂る前に歯を磨く人間である。

先に歯を磨くことにより、歯に汚れが付きにくくなる。

そのうえ「食後30分は歯を磨くべきではない」という近所の歯科医からの指導も守ることが出来るという、朝には合理的な習慣だ(食後はうがい程度で済ませている)。


ネットニュースの見出しを眺めていると、私と同じ「左利き」に関する記事タイトルを見つけたのでマウスをクリック。


ん、クリック……?

私は普段、左利き用のマウスを使用している。

が、いま私の手元にあるのは、どういうわけか右利き用のマウス。

その割には操作がスムース……これはいったいどういうことだ??

そういえば、歯ブラシも右手で……


階下に響かないように片足ケンケンを左右両方の足で試してみた。

これに関しては、そもそも普段だったらどういった結果になるのかも不明なので、無意味であることに気づき、途中でやめた。


鏡の前でネクタイを締める。

やはり逆手だ。



家を出て、メシを食い忘れたことに気づき、近所の喫茶店へと入る。


「あれ、平日なのに珍しいですね」

顔なじみのウエイトレスがやって来た。

「ああ……家を出てから朝食を食べ忘れたことに気づいてね」

「アハハ、なんですか、それ」

「とりあえず、モーニングセットBで」

「Bですか、珍しい」


あれ、普段の私はAセットの方を頼んでいたんだったか?


5分でセットを食べ終え、ホットコーヒーを飲み干す。

いつも始業30分前には出社しているので、まだ時間には少々余裕があるのだが、早く会社の様子も見てみたいので早々とレジへ。


「それにしても×××さん、なんかいつもと雰囲気が違いますね」

「えっ、どう違う?」

「んー、なんていうか……普通?」

「普通ってなんだよ、普段はまるで普通じゃないみたいじゃないか」

「いやー、なんか普通ですよ、良い意味で?」



ウエイトレスが持った違和感の正体は、やはり左利きが右利きになっていることに関係するのだろうか?


そんなことを考えながら、駅の方へと向かっていると――


「「ドッペルゲンガー!?」」


―― 地下鉄への階段入り口前。私とは反対方向から現れた私そっくりな男。

そっくりを通り越し、鏡映しとも言えるその姿。

お互い、最初のひと言以降、絶句したまま立ち尽くす。

駅に来たほかの通勤客たちも、驚いたり、ニヤニヤしながらコチラをチラ見。


「あ、あんた、いま……()()()だ?」

声を振り絞って、もうひとりの私に問いかける。

「へっ?いや、その……左利きだけど?」

「違和感はないのか?」

「違和感?」

「普段のあんたは()()()ではないのか?」

「いや、()()()()左利き……だけど?」


―― ど、どういうことだ?

私はこの男と「入れ替わった」のでないのか?

私だけが「裏返った」とでもいうのか?

ドッペルゲンガーを見た瞬間、私はほぼ入れ替わりを確信していた。

普段とは左右が反転したような朝とドッペルゲンガーの登場。

安直に結びつけるなら、入れ替わりの可能性が一番高いと考えたからだが、どうやら違ったらしい。


「それにしてもアンタ、俺によく似てるね」

もうひとりの私が、余裕ありげに逆に訊き返してきた。

「似てるも何も……」

「今からどちらへ出勤なの?」

「どちらへって……」

「まあ、どのみちどこへも行けないんだけどね」

「……えっ、どういう意味だ?」


ニヤリと笑い、私からはもう興味をなくしたかのように背中を向け、地下鉄への階段を下り始める男。それまで私そっくりだったドッペルゲンガーが、私自身とは到底思えないような表情で笑った後、この場を立ち去ろうとしている。

私は慌てて、男を追いかけ――


「……いつつ」

階段の中腹にある踊り場にまで一気に転がり落ちた。

が、思っていたよりも痛くはない。後から激痛が来るのだろうか?。


一気に落ちたことにより、一度追い越したドッペルゲンガーが、また上から下りてきて


「もう、存在が消えかけているよ、アンタ」

「存在がって……」


ふと、着地するときにひねった左手に目をやると、手の後ろにある景色が透けて見えた。しかも手だけではなく、目に映る身体全体が透け始めている。


「んー、ちゃんと撮れるかな? まあ記念だし、ダメ元で1枚撮っておくか」

ジャケットの右ポケットからスマホを取り出し、レンズを私の方へと向ける男。


よく見ると、男はスマホを右手に持って構えている。

もちろん、普段の私は左手でカメラを撮影する。




短編小説を書く練習中です。


古典的な題材「ドッペルゲンガー」を使って、素人料理。


オチとしては、何らかの手段でドッペルゲンガーに本体を奪われてしまった主人公が、オリジナルとしての立場を失い、消失するというところまでのお話?

或いはパラレル・ワールド? 

或いは――


感想、アドバイス等を頂けましたら、うれしいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章がきれい。読みやすい。個人的に内容よりもこれが重要で、なんなら全てではないかと思っているほどです。 多くの作品が、作者のアイデアにたどり着くまでに読みにくさで断念してしまうなか、きち…
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