第24話 その後の二人
「ユースティシア様」
「ん……リリー……?」
「はい。リリーです。おはようございます、ユースティシア様」
あれから半年。国内の情勢は目まぐるしく変化した。あの舞踏会から1ヶ月後、フェリックスは王に、デイビッドは王の補佐となり、国を支えている。
そうそう。レイノルズ家とアメリア家が手を結んで、領地と産業、貿易の発展を遂げているらしい。他国との関係が強固になったことを受け、レイノルズ家は領地拡大、アメリア家は伯爵から公爵家に昇格と、大きく力を伸ばしているとのことだ。
「ルーファス様とクレハ様からお手紙が届いております」
「えっ、本当! 見せて見せて」
「かしこまりました」
ルーファスからは「体を大事にするように」と書かれており、クレハからは「がっぽり稼いでおります」と報告が書かれていた。
「なんか、お兄様は心配性な感じが全面に出てて、クレハさんはいきいきとしてる感じが文面でわかるわ」
「本当ですね」
二人はくすくすと笑った。
リリーはいまだにユースティシアのことを敬称で呼んでいる。デイビッドやルーファスのように「ユース」や「ティシア」と愛称で呼んでもいいのに……と思いつつも、リリーらしいとユースティシアは思っている。
リリーが変化したのはユースティシアとの接し方だろう。前までは無表情を貫くリリーだったが、今はものすごく感情が表に出ていてわかりやすい。
「さすがですユースティシア様!」
「大好きです! 愛してます!」
と、リリーは躊躇いなく言う。
まるで構ってほしい猫のようだ。
「……それと、」
「?」
「デイビッド様からお手紙です」
「!」
デイビッドとは舞踏会から一度も会っていない。「デイビッド王子」と最後に冷たく突き放したような態度をとってしまったが、フェリックスの事後報告により、落ち込んでいるが、そんなに気にしなくていいと伝えられている。
(デイビッド様からの手紙……)
ユースティシアとリリーの居場所は、デイビッドに伝えられていない。だがデイビッドから手紙が来たということは……。
「フェリックス様が認められたのでしょう。もうユースティシア様と接触を図っても平気だと」
「ええ。そうみたいね」
実はフェリックスは二人に約束をしていた。今後の生活の援助をすること。そして、デイビッドが正気に戻ったと判断した時には、本人から手紙を出させると。
ユースティシアは手紙の封を開けた。
――――
ユースティシアへ
君には本当に悪いことをしたと思っている。王族であるにもかかわらず、守るべき民の一人であるユースを、私的な理由で縛っていた。本当にすまなかった。
本来なら直接会って謝罪すべきだが、残念なことにまだ僕はユースティシアに会う資格がない。時間をかけて、失った信頼を得ようと思っている。それまで待っていてくれるだろうか。
リリー。君にも謝罪と、そして感謝の意を伝えたい。僕がユースティシアに固執し、依存していることを突きつけたのは君だ。君のおかげで僕は今、正気に戻れた気がする。
君は一生僕を許さないつもりだろうし、僕も許されるだなんて思っていない。だからこれだけは言わせてくれ。ユースティシアを頼む。きっと承知のことだと返すのだろうな。
長くなってしまってすまない。いつかまた会える日が来ることを心待ちに、精進することを誓うと約束しよう。では、また。
デイビッド・グラント
――――
読み終わった二人は、顔を見合わせた。
「なんていうのかしら……昔のデイビッド様に戻った感じがするわ」
「同感です。そして何故か心が読まれている気がして少し怖いです」
「ふふっ、それはリリーがわかりやすいからよ」
「えっ、そうですか!? ユースティシア様だけならいいのですが……」
「あら。わたくしだったらいいの?」
「もちろんです。私がユースティシア様をどれだけ愛しているかがわかるでしょう?」
リリーは得意げに言った。
「はいはい」と軽く受け流して、ユースティシアはベッドから降りる。
「さ、朝ごはんにしましょ」
「今日はいつもより豪華です。昨日、村の人からもらった食材を使って作りました」
「ありがと、リリー。すごく楽しみ」
暖かな陽光が差し込む。
新たな地で、二人は幸せに暮らしを築いているのだった。




