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第12話 デイビッドとリリーの決闘 中編




 お互い、一歩も引けを取らない戦いだ。

 攻撃を入れればすぐさま防御し、また攻撃して防御……その繰り返しだ。

 身長差、性別差があるにも関わらず、両者の力量は同等と考えられる。


――つまり、決着がつきにくい。


「いつから稽古を?」

「デイビッド様に話すようなことではございません。……っ」


 こうでも話をして隙を作らなければ、永遠に終わらない。

 デイビッドの攻撃は一つ一つが重い。

 綺麗な太刀筋だ。正確に打ってくるため、隙を作りにくい。


――っ、なら……!

「!? ……っ」


 リリーは持ち方を変え、デイビッドに向けて剣を投げる。リリーの剣は真っ直ぐ速く飛び、デイビッドのこめかみを切った。

 デイビッドは当然、視界の焦点をリリーの剣に向ける。避けるのは容易ではないが、避けなければ死に直結する。

 殺すのは禁止とする。それは、殺さなければ何をしてもいいということだ。

 この攻撃が当たれば死ぬ危険性があった。

 それでもリリーが攻撃した理由は?


――良くも悪くも、デイビッドは避けると思っていたからだ。


 そして理由はもう一つある。

 それはーー。


「私、怒ってますから」

「っ!! ……〜〜っ!!!」


 リリーが急速にデイビッドに近づき、隙だらけの腹部に足蹴りを入れた。

 デイビッドはその衝撃で後方に飛ぶが、受け身を取り体勢を立て直す。痛みで悶えるも耐え、再び立ち上がる。

 リリーは投げた剣をもう一度持ち直し、デイビッドを見つめた。怒りで染まった瞳は美しくも危ない色をしていた。


「剣で視線を奪い、自らが攻撃しに来るとはな……。無謀で危険なことをするような奴だとは思いもしなかった」

「そうでもしないと、デイビッド様に不利となる状況を作り出せませんから。どうです? 痛かったですか、私の煮えたぎるような深い怒りの一撃は」

「〜〜よぉく効いたよ。だが、あんなずる賢い方法を取るお前がユースのメイドだと思うと、僕はどうかしてしまいそうだ。……早くお前に勝ちたい」

「それはわたしも同じことです。王族は言動に気をつけろと言われているはずなのですが、どうやらその理由を十分に理解できていないお方がいるようです。そんなお方がユースティシア様の隣で力をお借りしていると思うと……殺意が沸いてきそうです」


 実際に沸いているが、とは言わない。

 外野から「王族に対して不敬だぞ!」といった声が聞こえたが、全て無視した。ルールに「不敬な言葉を言ってはいけない」だなんてものはなかった。

 何も違反はしていない。

 本音を言っただけだ。


「「……絶対に勝つ」」


 ユースティシアの視界から二人が消えた。

 一瞬戸惑うも、すぐに見つける。

 二人は高速で移動しながら攻防を続けていた。両手は基本的に剣撃に影響が出るので使わない。デイビッドもリリーと同じように足を使うようになった。

 横の攻撃、ふっと体勢を比較し避けると足元を狙い一振り。飛んでかわし上から一閃。すぐに距離を取り、地面を蹴って狙いを定める。


「はぁ……はぁ……」

「ふー……ふー……」


 二つの荒い息が響く。

 ぴんとした空気が張り詰める。

 攻撃してもすぐに対応できるようにしているが、どちらも自分から行く気持ちにはなれなかった。

 リリーは呼吸を落ち着けると、目線を下にした。モノクロのクラシックメイドドレスが映る。


「……ルールの追加、よろしいでしょうか」

「なんだ」

「服の脱ぎ着、切除をしてもよい」


 デイビッドは疑問符を浮かべ、だがすぐに口角を上げて「いいだろう」と許可を出した。リリーはその言葉を聞くと剣を構え、そして、くるりと回った。

 軽い何かがリリーを中心に床に落ちた。

 それはモノクロの布だった。


「これでもっと動けます」


 リリーの太ももが見え隠れする。

 リリーが斬ったのは、長いスカート生地だった。



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