第11話 デイビッドとリリーの決闘 前半
「な、何を言ってるの、リリー」
ただ一人、この状況を理解できずにいる人物がいた。ーーユースティシアだ。
「別に、そのような意味で言ったわけではないのよ。決闘だなんてするほどのことじゃ」
「ユースティシア様がそう思っていたとしても」
リリーがユースティシアの言葉を遮ったのは初めてのことだった。
「私には到底、許せることではないのです」
「っ、リリー……」
そう。これは、リリーとデイビッドの問題だ。ユースティシアを想うリリーには、愛する人を馬鹿にするような発言を許さない。
たとえそのような意味で発したものでなくとも、謝罪を要求する。
それがこの決闘をする意味だ。
「ユース、下がって」
「っ、デイビッド様も……! こんな大事にするようなことでは……」
「いや、ある」
デイビッドは断言した。
「メイド風情が王族に手を上げ、決闘を申し込んだんだ。平民のくせにな。前から思っていたんだが、こいつはユースに対しての距離が近い。力の差をわからせてやるためにもお灸を据える必要がある。……それに、一度戦ってみたかったんだ、こいつとは」
そう言うとデイビッドは真剣をリリーに投げ渡した。
「それでいいな、メイド」
リリーは何度か振ると、「はい。大丈夫です」と答えた。
「どちらかが降参したら終わりだ。どちらも殺すのは禁止とする。時間制限はない。条件の追加、変更は勝敗が決まった後は不可とする。その前だったらいくらでもしていい。……これでいいか?」
「はい。構いません」
「お前が勝ったら、僕は発言を撤回・謝罪することを誓おう。ただし、僕が勝ったらお前には、ユースのメイドをやめてもらう」
「!!? デイビッド様!」
「わかりました」
「リリー!」
話が淡々と進んでいく。
ユースティシアは追いつくことができない。
「ま、待ってください。決闘だなんて、今からでも取りやめるべきです!」
「「ユース(ティシア様)は口を挟まないで(ください)」」
「っ……」
二人にそう言われてしまったので、ユースティシアは諦めざるを得ない。納得はできないが、黙って後ろに後退して行った。
それを確認したリリーとデイビッドは距離を取り、剣を構えた。
「では」
「尋常に、」
「「……勝負っ!」」
二人の掛け声が聞こえたと同時に床を蹴った。軽い腕鳴らしから始まり、徐々にスピードも強さも上がっていく。
剣と剣が当たる金属音が響く。何度も、何度も、徐々にそのテンポは上がる。
「リリー、デイビッド様」
名を口にしても、二人には届かない。
心配するユースティシアに、先程デイビッドと稽古をしていた人物が椅子を持ってきた。
「長くなりそうですし、お座りください」
「ですが、攻撃がこちらに来たらわたくしは……」
「その懸念は必要ありません。そのようなこと、起こるはずございませんから。絶対に」
そう、確信した目で言われたため、ユースティシアはゆっくりと椅子に座った。
どちらを応援すべきかは、わからなかった。




