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結婚式の夜、突然豹変した夫に白い結婚を言い渡されました  作者: 鳴宮野々花@書籍4作品発売中


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66. 怒涛の展開

 王宮で開かれた建国記念の祝賀パーティーの直後から、私を取り巻く周囲の人々の状況は目まぐるしく変化した。


 まずは先日まで私の夫だった、ラウル・ヘイワード公爵令息。彼はパーティーの後、ヘイワード公爵家から追放され貴族籍を失った。それと同時に社交界に知れ渡ったのが、夫婦だった頃の彼の私に対するひどい仕打ちや、ブライト男爵家の令嬢との不貞行為のこと。あのパーティーの場では私とアルバート様との婚約発表を狐につままれたような心地で聞いていたはずの人々も、今ではすっかり納得しているらしい。

 ヘイワード公爵は我がオールディス侯爵家へのけじめとして多額の慰謝料を支払ってくれたのと同時に、ラウル様との親子の縁をばっさりと切ってしまった。ラウル様は実の父親から捨てられたのだ。


()()のことは、もう息子とは思っておらん。本来ならば()()に市井で働かせ、ティファナ嬢を傷つけオールディス侯爵家に無礼を働いた慰謝料を自身で支払わせるべきだが……どうせ奴にそんな甲斐性はない。文官の仕事も解雇されておるし、私の後ろ盾なくして一から人生を立て直し軌道に乗るまで何十年かかるか知れたものじゃない。いや、下手をすればこのままどこかで野垂れ死にだろう。我々ヘイワード公爵家の者も、もう奴とはきっぱり縁を切る道を選んだ。……辛い思いをさせて本当にすまなかった、ティファナ嬢』


 ヘイワード公爵は私の前でそう謝罪してくれたのだった。公爵家は次男のベネディクト様が、その後を継ぐことになりそうだ。


 そして義母イヴェルと義妹サリアは、このオールディス侯爵家から去ることとなった。もちろんサリアを編入させていた名門リデール王立学院は、すでに父が退学の手続きを済ませてある。今二人は泣く泣く荷造りをしながら、どうにか父の気持ちを変えられないかと何度も縋りつき謝罪を繰り返しているようだ。父は全く聞く耳を持たないみたいだけれど。

 後から聞かされ驚いたことに、ラウル様にロージエさんをけしかけたのは、なんと義母のイヴェルだったのだ。ロージエさんが王宮勤めをするようになるまでの経緯を父から聞かされた私は、あ然とした。


「で……では、お義母さま……いえ、イヴェルさんは、ガラッド子爵が存命のうちに様々な書類を偽造していたと……?」

「偽造と言えば、偽造だな。子爵の頭がはっきりしなくなってきた頃に適当なことを言っては、後々自分が使えそうな書類に無理矢理サインをさせていたらしい。恐ろしい女だ。当然そんな書類で採用されたブライト男爵令嬢ももう王宮での職は失っておる。それどころか職員から尋問され、執務室でラウル殿と不貞行為を繰り返していたことまで白状したらしいぞ。……社交界にその醜聞が広まるのも時間の問題だな」

「……」


 ラウル様が勘当されたと知って焦ったブライト男爵は、ヘイワード公爵家を訪れ「娘のことはどうしてくれるのか」と公爵に直談判したらしい。けれど公爵は「アレはもううちの息子ではないのでこちらは関係ない。当人同士で話し合ってくれ」と追い返したのだとか。

 父は苦々しい表情で言う。


「イヴェルはブライト男爵と長年の愛人関係にあるらしい。うだつの上がらんブライト男爵を世話してやるために、これまでも裕福な男たちと関係を持っては援助を受けていたようだ。そして貴族の男たちの後妻にまでなった」

「……そ……そう、ですか」

「私も間抜けな男だな」

「…………」


 どんな慰めの言葉も今の父の心を抉ってしまいそうなので、私は黙っておいた。


 ブライト男爵とイヴェルさんは、これからどうするのだろう。父はブライト男爵家にも容赦なく多額の慰謝料を請求している。互いに一文無しとなった今、市井の片隅で支え合って生きていくのだろうか。サリアやロージエさんも一緒に……?


(その組み合わせで生活を共にするなんて、なんだか地獄絵図だわ……)


 もしかしたら、そこにラウル様も加わったりして。

 




 しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。


 なんとカトリーナとダミアン王太子殿下の婚約が破棄され、その件でサリアがエーメリー公爵家から訴えられたのだ。

 イヴェルさんとサリアがこのオールディスの屋敷を出て行ってから数週間後、突然父からそんな追加情報を与えられた私は、しばし呆然とした。


「……分かるように説明してくださいませんか、お父様……。サリアは一体何をしでかしましたの……?」


 父は特大のため息をつくと、眉間の皺を指先でグリグリと揉みほぐしながら語りはじめた。


「建国記念の祝賀パーティーの夜、ダミアン王太子殿下とサリアは関係を持ったらしい」

「……っ!! な……」


 嘘でしょう……?

 父のその言葉だけで、私はすでにめまいがした。

 父はさらに続ける。


「それ以来二人は秘密裏に逢瀬を重ねていたようだ。だが先日、よりにもよってエーメリー公爵家のカトリーナ嬢が二人のその現場を目撃してしまった。カトリーナ嬢は穏便に済ませようとしたらしいが、ダミアン王太子殿下の方から婚約破棄を申し渡してきたと。国王陛下に通すことなく、王太子殿下の一存ですでに手続きも済ませてしまったそうだ」

「……そんな馬鹿げた話……信じられません……」


 目の前が暗くなっていく。

 私もカトリーナも、そして他家の令嬢たちも、皆幼少の頃から必死で王太子殿下の婚約者の座を競い合った。それぞれの家にとっても、家名を賭けての戦いだったのだ。その中でも特に、カトリーナは血の滲むような努力を続けてきた。

 それなのに……









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