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結婚式の夜、突然豹変した夫に白い結婚を言い渡されました  作者: 鳴宮野々花@書籍4作品発売中


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29. 手応えなし(※sideサリア)

 思惑通り、お義姉さまとラウル様の仲はどんどん拗れていってるみたい。よかったよかった。

 オールディス侯爵家で与えられた大きなお部屋にあるふかふかのベッドの上に寝そべりながら、あたしは悦に入っていた。


 さて、と……。あとはどうやってあたしが二人の間に割って入るかなんだけど、ここがどうも上手くいかないのよねぇ。

 男の人って、あたしみたいに可愛くて綺麗で、愛嬌のある女が大好きなはず。それなのに、ラウル様だけはなぜだかあたしに興味を示してくれないの。

 ご自分がまだ既婚者だからって自制してるのかしら。

 真面目すぎるってこと?


 職場にも、他に距離が近かったり心惹かれてる女がいるってわけじゃないみたい。()()()からの報告によると。

 ラウル様の周りには、()()()()いないはずよ。

 

(ああ、つくづく悔やまれるわ。せめてもっと、あと数ヶ月でも私がラウル様に早く出会っていれば、お義姉さまとの結婚自体を阻止できたかもしれないのに……!)


 もっと早くに紹介してもらって、あたしがラウル様の心を掴んでおけば、こんな回りくどいことする必要はなかったのよ。

 私とお母様がオールディス侯爵家にやって来てからたった三ヶ月後には、もうラウル様とお義姉さまは婚約しちゃったからなぁ。そしてそれからたった半年で結婚。ラウル様があたしを好きになるには時間が足りなさすぎたわ。あの人堅物っぽいから。

 ラウル様の口からオールディス侯爵に、「私はティファナ嬢ではなくサリア嬢と婚約したい」と言わせたかったわ!


 だけどもうお義姉さまと婚約しちゃった以上、あからさまに言い寄って奪っちゃったらあまりにもオールディス侯爵の心証が悪くなるでしょ? せっかく侯爵家の義娘になれたっていうのに、下手したらお母様と一緒に追い出されちゃうかもしれないもの。

 だから渋々()()()を使った。あの子なら、万が一にも億が一にも、ラウル様とどうこうなるなんてことないでしょうしね。ふふん。だって少しも冴えないブスなんだもん。

 私がやってもあまり効果なかったんだけど、あの子の地味さがかえってよかったのかしら、言うことに妙に説得力があるみたいで、ラウル様、お義姉さまの悪評を信じはじめたみたい。こないだわざわざヘイワードの大きなお屋敷にまで行って確かめてきたけど、あの二人ったら、めちゃくちゃに険悪なムードが漂ってたわ。ふふっ。あとはあたしが上手くラウル様の心に入り込むだけ……。


 の、はずなんだけど。


「あーあ。まさかこんなに手こずるなんてねぇ。んもう……。一体どうなってるのよ」


 初めて紹介された時、絶対この人がいい! って思ったの。


 莫大な資産を持つヘイワード公爵家の嫡男。しかも超絶美形のいい男。あのミステリアスな黒髪黒目も、可憐な愛らしさを持つピンクブロンドのあたしの隣に立てば、より一層この魅力を引き立ててくれるはずよ。……まぁ、ちょっと無口で暗すぎるしつまらなさそうな男ではあるけど……、そんなことどうでもいいわ。他の条件が良すぎるもの。


「……ったく。アイツ、ちゃんとあたしのことをアピールしてるのかしら。ほんっとに使えないんだから」


 サリアさんは見た目が美しくて可愛らしいだけではなくて、とても慈悲深くてお優しい方なんです。明るく朗らかで、一緒にいるととても楽しいし、こんな冴えない私にも声をかけてくれて、お友達になってくださいましたわ。いつも優しくて天使のようで……、って、とにかくラウル様にあたしを褒めまくれってそう言ってあるのに。

 全然手応えがないんですけど。


(近々もう一度会って、もっとしっかりやれって発破かけるしかないわね、あの小娘に)








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