第1話 UFOと衝突したら
初投稿です。よろしくお願いします。
ボクの名前は菊池星、この春高校生になったばかりの15歳だ。
今、ボクは人生最大の危機に直面している。
ボクの腹に、よく分からないモノが突き刺さっている。
通学中に異様な風切り音に気づいて振り返ったらコレだ。
辺りはまだ太陽が昇り切っていなくて、空はオレンジの空色のコントラストが綺麗だ。ボクが今立っている歩道橋の上は太陽の光が顔に直に当たって少し眩しい。
不思議な程に痛みがない。
だから呑気に景色について考えられるし、突き刺さったモノを観察することもできるんだけども。
ソレは着ているブレザーも意に介さないように胴体を貫通していた。中のワイシャツには赤黒いシミができている。
よく見ると血飛沫が歩道橋の端まで飛び立っていた。相当な速さで突っ込まれたんだろう。
全体を見ると紡錘形のやや角張った鉱物のようだった。少し亀裂が入っていて、そこから水色の何かが怪しく光ってるのが見える。
「何なの、コレ…。」
ゼッタイ地球上のモノじゃない。じゃあ空から落ちてきたとか?でも風切り音が聞こえたって事は飛んでたって事だよね。空を飛んでるよくわからない物体って、それってUFOって事?
考えても何もわからない。でも、とりあえず誰かに助けてもらいたい。
でも今はまだ朝方だ。周りに人影はない。
「そうだ、スマホ…。」
電話を掛けよう。119番?でもこんなの、ゼッタイ信じてもらえない。でも、何もしないよりかは幾らかマシだ。
さっそくポケットに手を伸ばそうとして、気づいた。
手がまったく動いてくれない。指の一つもマトモに動かない。試しに脚を動かそうとしても、何も起きない。
首から下が靄がかかったみたい何も感じる事ができない。
目だけを動かして自分の手を見てみると、皮膚の下にうっすらと水色の何かが枝分かれして這っているのが見えた。
「う、わぁっ…!」
何だコレ、気持ち悪い…!というか、マズい。自分の意識が薄れていくのを感じる。
この水色のが頭にも回っているのか…!
だんだん視界もぼやけてきた。もしかして、ボクはこれから死ぬのだろうか。それは……。
それは、嫌だ…!
まだ15年だ!たった15年しか生きれてない!
彼女だってまだデキた事ない!
ボクはまだ、生きていたい!
生きていたい!
生きて…いた…ぃ……。
心ではずっと叫んでいるのに、体はもう限界だった。消えかかった意識の中で、心の叫びはどんどん遠いモノになっている。
意識が消える最後の瞬間、腹に刺さったソレが眩いほどの光を放った気がした…。
ひどく硬いモノの上に横たわっていた。冷たい感触が背中から伝わってくる。瞼も重い。
ボクは、何をしていたんだっけ…。
そうだ、UFOに刺されて…意識を失って…。
じゃあここは何処なんだ?
重い瞼をゆっくりと開けた。
天井があった。おそらく木材で出来ているそれは、欠けて穴になっているトコロが所々にある。
視界の真ん中には黄色い暖かみのある明かりがあって、それが部屋全体を照らしていた。
ホントに何処だ、ここ…。
上半身を持ち上げて、周りを見渡した。
部屋の中に殆どモノは置いていなかった。椅子が一つに、歪んで開けられそうもない箪笥、そして、少しヒビ割れている楕円形の鏡がその箪笥の上の壁に掛けられている。
下を見ると、どうやらボクが今横たわっているモノが視界に入った。
それは細長いシンクのようだった。
といっても、深さは無く、申し訳程度の傾斜が排水口まで
続いている。
銀色のそれはこの部屋とはまるで合っていない異質さで、少し不気味だ。
赤い液体がその傾斜を伝っていた。
あれは、ボクの血だろうか?体を見てみるが何処か出血しているようには見えない。痛みも感じない。
ただ、違和感があった。ボクってこんなにも色白だったっけ?体も少し細くなったように思える。
シンクから降りる。少し動きがぎこちない。まるで初めてカラダを動かすみたいだ。
試しに箪笥の前まで歩いてみる。
一歩歩くたびに、ギィッと床が軋んだ。
箪笥の前に立ち、引き出しの取っ手を取って引いてみても、歪みが酷くてビクともしない。使われなくなって大分経つみたいだ。
空き家か何かだろうか。そう思いながら顔をあげて鏡を見て、ボクは動きを止めた。
知らない顔がそこにあった。
色素が抜けたような白い髪は短めに切り揃えられていて、瞳は黄緑色。カラダと比べると随分と日焼けをしている。
大分整った顔をしているけど、問題はそこじゃない。
鏡に映るソレは、紛れもなく女の人の顔だった。
「なんだ、コレ…。」
自分の声とは思えない、高い声だった。思わずノドを手で押さえてしまう。
「ボク、女の子になっちゃったのか…?」
いや、それはあり得ない。
ボクは今の体を見た時は、顔を見た時ほど動揺はしなかった。
それは、違和感を感じても、前の体と構造上は何も変わっていなかったからだ。
ボクのカラダは、男のままだった。