社会はぼっちに厳しい
「ごめんなさい護。僕は君とは組めないんです」
「ガッデム!」
講堂で驚きの条件を突きつけられてから、教室に戻ってすぐに聞いたというのに‥‥。
「なにゆえ‥‥」
「僕と、あと何人か呼ばれたじゃないですか」
「ああ、星宮もいたな」
十数名程度の人間が、名前を呼ばれて講堂に残っていたのだ。
「僕たちはもう組むメンバーが決まっているみたいなんです」
「あそこにいるメンバーで組むのか?」
王人は苦笑いしながら首を縦に振った。
「はい。僕と他に数名、リーダーとして呼ばれた生徒を中心に、チームを組むそうです。他のメンバーはほとんどが外部生でしたね」
「そっか。内部生と外部生じゃ、慣れの差があるもんな」
「スリーマンセルを自由に組むと、それぞれのチームで実力差が出来てしまいますから、多少なりとも支援が必要という判断でしょう」
その辺は当然のように考えられているわけか。
ってことは、王人だけじゃなく星宮も駄目か。あの中にいたってことはリーダーとして呼ばれたんだろう。
「もう駄目じゃん‥‥」
俺の数少ない友人が既に二人ともチームを組んでしまっている。
「ぼっち殺し‥‥」
「プロの守衛魔法師も単独で動くことはほとんどありませんから、妥当ではありますね」
もう終わりだ。
沈んでいる俺に対し、クラスは大変な賑わいだ。こういう時に、クラスの中のパワーバランスが浮き彫りに見えてくる。
まず周囲から声を掛けられる生徒。これは実力的にトップクラスの生徒たちだ。王人もその一人であり、こうして俺がぶっ倒れている間にも、クラスメイトたちがひっきりなしに声を掛けている。
まあ王人と組めたら間違いないよなあ。
きっと星宮も隣のクラスで似たような状況になっているに違いない。
あー、どうしよっかなあ。
「なあ王人、俺の噂って」
「武藤君を倒せたのは特別な魔法のおかげだって話はよく聞きますね」
「良い感じ?」
「悪い感じです」
おっかしいなあ。
実力を見せれば噂はなくなるのではと思ったが、そんなことはなく。
むしろ特別な魔法で武藤を初見殺しにしたのではないのかと、卑怯者だと言われているらしい。
鬼灯先生の言った意味が分かった。
自分たちの同級生が、特別な魔法を持っているようで、更にそれが強いと分かったら。
妬み、羨望。
それらは簡単に悪意に変わる。
特に俺は外部生だ。王人や星宮のように積み重ねてきた実績があるわけじゃない。
そう簡単に尊敬にはならないのだ。
「これ、チーム組めなかったらどうなるんだ?」
「多分、残った人同士で先生がチームを組むんじゃないでしょうか」
「そうか‥‥そうだよな」
一人きりじゃないだけ気が楽だ。
気、楽かなあ。ほぼ初対面の相手と五日間、極限状態で過ごすなんて、相当厳しいだろ。
「どうするかね‥‥」
「適性試験の詳細と、決定したチームは明日から発表されるそうですから、それを確認してからチームを組んでいない人に声を掛けるといいと思いますよ」
「‥‥頑張ってみるわ」
そう言いながら、俺の気持ちはまったく浮上しなかった。
『どいつもこいつも、外野でピーピー騒いでんな』
あーあー、あんなこと言わなきゃよかったなあ。
悪いところだと自覚があるが、俺はコミュニケーション能力が低い。中学生の頃から不適合者だと馬鹿にされ、まともに友達らしい友達はいなかった。
その上噂と啖呵のせいで、評判は最悪。
戦うより声を掛ける方がよっぽどハードル高いって。
とりあえず王人の言う通り、明日まで待ってみるか。




