表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/183

踏み出せたら ―星宮―

    ◇   ◇   ◇




 ああきっと嫌な思いをさせてしまった。


 護の顔を見た時、有朱はそう思った。


 折角助けてくれたのに、話を聞こうとしてくれたのに、その手を振り払った。


 彼の心の奥底にあるのは善意だ。


 そんなことはよく分かっている。あの時怪物(モンスター)を前に有朱の手を握ってくれた時から。


 星宮として生まれ、この容姿と力を与えられ、努力を重ねてきた。そこに浴びせられる視線は羨望か、嫉妬か、打算か、悪意。


 本当に信頼できる友人はごく一部だ。


 それを嫌なものだと思ったことはない。人が人と関わる時、そこにフィルターがかかるのは当然のことだ。


 嫉妬や打算もまた、力ある家に生まれた者としての責務。


 だから護の混じりけのない善意が突き刺さる。何重にも纏った心のフィルターが意味をなさない。


 何もかもをさらけ出して、話を聞いてもらえたらどれほど楽だろう。


「良かったの~?」


 隣を歩く綾芽が前を向いたまま言った。


「当然でしょう。真堂君には真堂君の戦いがあるわ。私の話なんて聞いている暇はない」


「頑固ね~」


 綾芽の呆れた声を聞き流しながら、有朱は小さく息を吐いた。


 彼の優しさには甘えられない。


 ――私はまだ本当の意味であの時を踏み出せてない。


 黒鬼(ダークオーガ)が現れた瞬間、有朱は動けなかった。プロの守衛魔法師(ガード)さえも絶望に囚われていた。


 あの何もかもが真っ暗な中で、護だけが動いた。


 有朱はまだあの暗闇の中にいる。自分の力でそこから一歩を抜け出せなければ、守衛魔法師(ガード)になるなんて夢のまた夢だ。


 本当にあの時護を屋上に呼び出したのは、盲目と言う外なかった。


 自分の足で踏み出すことが出来たのなら、今度はちゃんと話に行こう。その時には今よりずっと魅力的な笑顔で笑えるはずだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ