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デュラハンJKのVRMMO活動記  作者: とあるアルパカ


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6/12

6 ギルド設立とかもうやめて…

それは、私が草原で一人スライムを眺めていた時に起きた。


「……平和だなぁ……」


 守護班の気配もない。

 監視アイコンも静か。

 首も外れていない。


 ――奇跡の数分間だった。


 その時。


《ワールドアナウンス》

『希少アイテム《盟約の紋章》が取得されました』


「……あ」


 嫌な予感しかしない。


《取得者:Noct_Rei(パーティ名:首なし監視者様守護班)》


「やっぱり!!」


 《盟約の紋章》。

 それはこのVRMMOにおいて、ギルド設立に必須な超希少アイテム。


 ドロップ率は限りなくゼロに近く、

 最前線攻略コミュニティですら

「理論上は取れる」

「でも人の心が先に折れる」

と評されていた代物。


「なんで取れてるの!?」


 答えは簡単だった。


 彼らは――

首なし監視者様を守るためなら、時間も正気も捧げる覚悟があった。


数分後:草原


 空間が歪み、黒ローブ集団が儀式みたいなエフェクトと共に現れた。


「首なし監視者様」


「いやその呼び方やめてって何回――」


 Noct_Reiが、恭しく跪く。

 両手には、淡く光る紋章。


「我ら、ついに成し遂げました」


「なにを!?」


「ギルド設立用アイテム《盟約の紋章》の獲得を」


「……え?」


「これにより、我らは一つになれます」


「いや一つにならなくていいから!!」


 だが、周囲のメンバーたちはすでに感極まっていた。


「最前線でも三ヶ月出なかったのに……」

「やはり首なし監視者様の加護……」

「存在がドロップ率を歪めている……」


「私なにもしてない!! 草見てただけ!!」


 Noct_Reiが立ち上がり、宣言する。


「よって――

 ここに《ギルド設立》を行います」


《システムメッセージ》

《盟約の紋章》を使用しますか?

YES


「ちょっ、待っ――」


ピカァァァァァン!!


 空に巨大な魔法陣。

 地面に刻まれる黒銀の紋様。

 どう見ても世界的イベント演出。


《ギルドが設立されました》

ギルド名:首なし監視者の眷属


「名前ええええええ!!!」


 そして、追撃のように表示された文字。


《ギルドマスターを設定します》

《条件:盟約の紋章と最も“因果値”の高いプレイヤー》


「因果値ってなに!?」


《Kanade が選出されました》


「やめろおおおおおおおお!!!!」


《Kanade はギルドマスターに就任しました》


 私の頭上に、

【GM】ではないが【Master】と書かれた称号が浮かぶ。


「……」


 沈黙。


「……おめでとうございます、首なし監視者様」


「祝うな!!!」


 私は首を両手で抱え、天を仰いだ。


「私、初心者クエスト……キノコ採取しかしてないんだけど……」


 Noct_Reiは、穏やかに微笑んだ。


「ご安心ください」


「なにを!?」


「ギルド運営は、我々がすべて行います」


「それはそれで怖い!!」


《【監視ログ】:Kanadeが“大規模プレイヤー組織の象徴”になりました》


「Ordisさあああああん!!もう公式で止めてええええええ!!!」


 だが、返答はない。


 ただ、ワールドチャットだけが静かに流れていた。


【ワールドチャット】

「首なし監視者、ギルド長になったらしい」

「初心者でギルド設立は草」

「もう物語の主人公だろ」


 私は呟いた。


「……このゲーム、普通に始めるルート消えてない?」


 ――ギルドホール。


 重厚な石造り。

 天井は高く、意味ありげなステンドグラス。

 初心者ギルドとは思えない荘厳さだ。


「……なんでこんな立派なの」


 答えは簡単だった。


「首なし監視者様の威光です」


「やめて!!」


 私は壇上に立たされていた。

 首はちゃんと抱えている。

 視界の端には、例のアイコン。


《【監視中】:GM:Ordis》


 そして眼下には、整列したギルドメンバーたち。

 黒装束率、九割超え。

 全員が無言でこちらを見上げている。


 ……怖い。


「では――」


 Noct_Reiが一歩前に出て、朗々と告げた。


「ギルドマスター《Kanade》様より、我らが進むべき道のご宣示を頂戴したい」


「宣示ってなに!?」


 ざわ……

 だがすぐに静まり返る。


「え、えっと……」


 私は完全に困っていた。

 ギルドの方針?

 知らない。

 ギルド運営?

 やったことない。


 そもそも私は――

 初心者で、首が外れるだけの一般プレイヤーだ。


(……どうしよう)


 適当に言えばいい。

 うん、軽い感じで。

 深い意味なんてない言葉で。


 私は考え、そして――

 口を開いた。


「……えっと……」


「無理は、しなくていいんじゃないかな」


 ――沈黙。


 …………。


「……あれ?」


 次の瞬間。


ザァァァァァ……!!


 ギルドメンバー全員が、

一斉に跪いた。


「な、なに!?」


 Noct_Reiの声が、震えていた。


「……“無理は、しなくていい”……」


「深い……」

「首なし監視者様は、効率至上主義を否定された……」

「命を削る最前線攻略への、明確な拒絶……」


「いやそんな意味じゃ――」


《【監視ログ】:Kanadeの発言が“ギルド理念”として記録されました》


「記録するな!!!」


 Noct_Reiが、胸に手を当てて宣言する。


「承知しました」


「なにを!?」


「我ら《首なし監視者の眷属》は――

 過剰な自己犠牲を是としない」


「してない!! そんな立派なこと言ってない!!」


「休息を恐れず」

「撤退を恥とせず」

「首を失う前に、立ち止まる」


「最後の例えやめて!?」


 誰かがチャットに書き込んだ。


【ギルドチャット】

 《第一神託:無理は、しなくていい》


「神託!? 今“第一”って言った!?」


 視界の端で、監視アイコンが一瞬だけ点滅した。


《【監視ログ】:ギルドに“宗教的傾向”が発生しました》


「Ordisさん!! 止めて!!これ以上増えたら本当に取り返しつかない!!」


 しかし、誰も止まらない。


「では、ギルド方針は決定した」

「無理をしない最前線攻略」

「効率より、継続を」


 Noct_Reiが、深々と頭を下げた。


「首なし監視者様。

 次の神託も、いずれ……」


「いらない!! 二つ目はいらない!!」


 私は壇上で叫んだ。


「お願いだから!

 普通にゲームさせて!!」


《【監視ログ】:Kanadeが“強い願望”を表明しました》


「それも神託にしないでえええええええ!!!」


 こうして――


 初心者ギルドは、

 ギルド長の一言によって

 独自の哲学を獲得してしまった。


 なお、私はまだ――

 二回目のキノコ採取クエストを終えていない。

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