3 ち、違うんです!
「――改造?」
GM:Ordisの目がすっと細くなった。
「い、いや! 悪い意味じゃないです! ただ、首が外れる仕様に合わせて……その、ちょっと配線をこう……」
「ちょっと、という割に、あなたのギアは《馬を勝手に召喚》し、《首を外せる仕様》にし、《街を炎上寸前》にしたのですが」
「…………」
返す言葉がなかった。
黒馬が、誇らしげにフンッと鼻を鳴らす。
(いや、お前のせいでもあるからな!?)
「……まあ、今のところ害は確認されていませんし」
GM:Ordisが小さくため息をつき、魔法の杖を掲げる。
「特例として、あなたのプレイを許可します。ただし」
ピコンッ、とシステムウィンドウが開いた。
《 監視タグ《特例観察対象》が付与されました》
「え、監視って!?」
「あなたの挙動は常に記録され、必要に応じて再び私が現れます」
「いやもう来ないでぇぇぇ!」
GMが淡々と光の柱に包まれ、空へと消えていく。
広場には沈黙が――……訪れなかった。
「今の、やばくない? 5分でGMにタグ付けされたぞ」
「監視タグとか伝説じゃん」
「動画撮った! 切り抜きにしてバズらせよ」
「やめてぇぇぇぇぇ!!」
Kanade(私)は頭を抱えた。文字通り、自分の頭を抱えた。
その後、プレイヤーたちにジロジロ見られながらも街を脱出。
私は黒馬と共に街道を歩いていた。
「……はあ。初ログインで、こんな注目浴びるなんて思わなかった」
「ヒヒン」
黒馬は当然のように横を歩いている。名前もまだない。
「……とりあえず、あんたの名前、いるよね」
悩んだ末、私はぽつりと呟いた。
「“クロ”でいいや」
「ブルルルッ」
黒馬が満足げに鳴いた。
(単純だな……)
さて、ゲームの基本を確認しよう。
《チュートリアルクエスト:街道沿いのスライムを3体倒そう!》
「……チュートリアル、今さらかーい!」
とりあえず剣を抜き、黒馬の横で構える。
スライムがぷよんぷよんと跳ねながら近づいてくる。
「よし、やってやる――!」
剣を振り下ろそうとしたその瞬間。
ドゴォォォォン!!!
クロ(黒馬)が前足を地面に叩きつけ、炎のようなエフェクトをまき散らした。
スライム、蒸発。
「おいおおおおおい!!!」
「ヒヒィィィィィン!!」
威嚇するクロ。残骸すら残らないスライム。
《チュートリアルクエスト達成:EXP+50》
「私、何もしてないんだけど!?」
黒馬がどや顔でこちらを見た。
(……チュートリアル、私いらないのでは?)
とはいえ、街道を進むとクエストが更新された。
《メインクエスト開始:森の奥に潜む盗賊団を討伐せよ!》
「おっ、ついに冒険っぽい!」
私はワクワクしながらクロにまたがり、森へと進んでいく。
――しかし、道中で出会うモンスターは。
ゴブリン「ギャギャギャ――」
ドゴォォォォン!!(※クロの前足)
ゴブリン:蒸発
狼「グルルル――」
メラァァァァッ!!(※クロの目が光って炎)
狼:消滅
「ちょっとぉぉぉ!! クロ!!!」
完全にラスボス級の火力を持った黒馬のせいで、
私の初冒険は無双ゲーと化していた。
でも、そんな中で――
森の奥から、ふと声が聞こえた。
「……助けて……!」
小さな廃小屋の前。
縄で縛られた少年NPCが、こちらを見ていた。
「やっと……プレイヤーが来てくれたんだね……!」
彼の後ろには、怪しげな盗賊団が十数人。
リーダー格がギラついた剣を構えている。
「おい、あの首なし騎士……報奨金が出るって噂の――」
「待て! 私まだ賞金首になってないから!!」
盗賊たちが一斉に襲いかかってきた――その瞬間。
クロの蹄が再び地面を踏み鳴らした。
炎と轟音。
盗賊団、全滅。
少年NPC「……(口ぽかーん)」
私「……」
クロ「ヒヒィィィィィィィィン!!!!」
「いやいやいや……」
私の頭(物理的に)を抱えつつ、ため息をつく。
「私、まだ剣一回も振ってないんだけど……」
「まさか……もうレベルが10になってる?」
Kanadeは画面のステータスを何度も確認した。
開始からたった10分で、スライム相手のチュートリアルを無双し、盗賊団も一掃。
そのおかげでEXPが爆発的に上がり、レベル10に到達していたのだ。
《レベルアップ!スキルポイント3獲得》
《特別スキル『黒馬の怒り』解放!》
「スキルポイント? なんだろうこれ……」
メニューを開くと、選択できるスキルの一覧がずらり。
その中に『黒馬の怒り』が光っている。
《説明》
「黒馬クロの力を一時的に解放し、周囲に火炎の嵐を巻き起こす」
「……やっぱりクロ、ただの馬じゃない……」
クロは鼻息を荒げ、地面を踏み鳴らした。
辺りに熱風が漂い始める。
「この子の正体……いったい何なの?」
そんなとき、画面に突然メッセージが現れた。
《警告》
「プレイヤーKanadeの行動が規定値を大幅に超えました」
「監視タグが強化されました」
《次回の監視者出現まで、残り3分》
「……ええええ!!?」
「まさか、運営が本気で来るの!?」
心臓がバクバクする中、目の前に見慣れないキャラクターがぽつんと現れた。
「私はGMランク3、NPCコード:ミラベル。あなたの行動を監視するために派遣されました」
「はじめまして……じゃないですよね!?」
Kanadeは深呼吸し、覚悟を決めた。
「もういっそ最恐になってやる! どんなトラブルもかかってこい! これが私の冒険の始まりなんだから!」
そして、クロの目が赤く光る。
「ヒヒィィィィィン!」
バランスブレイカーJKの超展開冒険譚、幕を開ける。




