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デュラハンJKのVRMMO活動記  作者: とあるアルパカ


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2/12

2 デュラハン人生初ゲームの世界へ

 ――ログイン直後。


 私の視界は、地面よりだいぶ高い位置にあった。

 なぜなら、私は黒馬に乗っていたからだ。


 いや、正確に言うと――


「……なんで勝手に召喚されてるの、この子」


 ゲームを始めたばかりの新人プレイヤーが、黒光りする漆黒の馬にまたがっている時点でおかしい。

 しかもこの馬、ただの馬じゃない。目が赤く光ってる。


「え、これチュートリアル馬? いや絶対違うよね?」


 首を抱えたまま(※抱えている首がしゃべるというシュールな絵面)、周囲を見渡す。

 ファンタジー風の街。初期装備の剣と盾を持った初心者たちが広場を走り回り、商人NPCが声を張り上げている――


 その中に、私と黒馬。


 ……そりゃ、目立つよね。


「お、おい……見ろよ……」

「え、あれ新ボスイベント? いや待て、名前表示あるぞ」

「首、ねえんだけど!?」


 広場にいたプレイヤーたちが、一斉にこっちを凝視する。


 そりゃそうだろう。


 首を小脇に抱えたプレイヤーが、真っ黒な魔馬にまたがって登場だ。

 RPG的には完全に中ボスのカットイン演出である。


「きゃああああああああああ!!」

「街中でイベント始まったぞおおおお!!」

「討伐PT組め! 早く組め!!」


 ……いや待て落ち着け!?


「ちょっ、ちがっ、私はプレイヤーだってば! NPCじゃない! イベントじゃない!!」


 慌てて馬を降りようとした瞬間――


ヒヒィィィィン!!


 黒馬が嘶き、炎のようなエフェクトを撒き散らす。

 見た目が完全に魔王軍。


「ぎゃああああああああ!! 街燃える!?」

「GMコールだGMコール!!」


「やめろおおお!!」


 私は自分の首を抱えたまま馬から飛び降り、必死に両手を振った。


「私はプレイヤー!! 九首見奏!! 高校二年生!! 趣味はゲームと――」


 言いかけた瞬間、後ろから声がした。


「――お姉ちゃん、かっこいい!!」


 振り向くと、小さなエルフの女の子(多分NPC)が、目を輝かせて私を見上げていた。


「ねえねえ、首、ほんとに取れるの!?」


 ……ああ、完全に「触ってもいい?」って目だ。


「と、取れるけど……」


 おそるおそる、首を持ち上げて見せる。


スポーン!


 ――外れる。


「うわあああああああああ!!」

「子供の前で首外したぞ!!」

「ホラー演出すぎるだろおおおお!!」


 広場は更なる大混乱に包まれた。


「やばい……これ、初日BANコースなんじゃ……」


 頭を抱える(物理的に)私の横で、黒馬がドヤ顔で蹄を鳴らしていた。


「――首、ほんとに取れるんだぁ!」


 無邪気なエルフ少女(NPC)が拍手をしている後ろで、プレイヤーたちは大パニック。

 私のログイン初日は、もはやお祭り騒ぎどころじゃなかった。


「おいGMコールしろ! これバグだろ!」

「いや、あれ隠しボスイベントだって!」

「うわ、俺の画面に《黒き首なし騎士降臨》ってシステムメッセージ来てねえけど!?」


 チャット欄は完全に修羅場。

 その時、私の視界に――赤い警告ウィンドウが出た。


《システム通知:あなたへの通報が多数寄せられています》


《運営が状況確認のためGMを派遣します》


「え、ちょっ……派遣って何?」


 次の瞬間。


ドォォォォン!!


 広場の真ん中に、青白い光の柱が降り注ぐ。

 そしてその中から現れたのは――


『GM:Ordis』


 白いローブを纏い、背中に羽まで生えている、

 いかにも管理者権限です!って見た目の男。


「――プレイヤー《Kanade》。ただちに行動を停止してください」


「うわあああああ!?」


 いきなり名前呼ばれた!?


「現在、あなたのアカウントに対して“ボスイベント偽装” “周囲プレイヤーへの恐怖演出” “ワールドバランス崩壊の可能性”という通報が殺到しています」


「いやいやいやいや!! そんなつもりじゃないです!! そもそも私、ただの――」


《システム通知:GMによる強制ログアウト処理を準備中》


「やめろおおおお!!」


 私は自分の首を抱えたまま、必死に叫んだ。


「私、チュートリアルも終わってないんです!!ログイン5分目なんです!! BANされるとか早すぎません!?」


 必死の訴えに、広場のプレイヤーたちがざわつく。


「5分でGM呼ばれたやつ初めて見た」

「逆にすごいよな」

「レジェンド誕生の瞬間を見てるかもしれん」


「うるさいわ!!」


 ツッコミを入れつつも、GM:Ordisは冷静だ。


「証明してください。あなたが“イベント用NPC”ではなく“プレイヤー”であることを」


「そ、そんなの簡単です! プライベートなこと言いますから!!」


 私は焦って、思わず叫んだ。


「高校二年生!! 趣味はゲームとホラー映画!! 将来の夢は……普通に生きること!!」


 広場が一瞬静まり返った。


「……生々しいな」

「本当にプレイヤーっぽい……」


 するとGM:Ordisが、淡々と呟く。


「なるほど……ログイン5分目で人生相談を始めるNPCは存在しません」


「だからNPCじゃないって言ったでしょ!!」


 その瞬間、警告ウィンドウが一つ消えた。


《強制ログアウト処理はキャンセルされました》


「…………よ、よかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 思わず黒馬の首に抱きつく(私が抱えてる自分の首はわちゃわちゃする)。


 でも、GM:Ordisはまだ険しい顔をしていた。


「しかし……プレイヤー《Kanade》。あなたが持ち込んだ《黒馬》および《首なし状態》は、運営データに存在しない要素です。今後、慎重に監視させてもらいます」


「いや、それ私もわからないんですよ! たぶん……VRギアをちょっとだけ改造したから……」


「――改造?」


 GM:Ordisの目が細くなる。


《システム通知:運営があなたのVRデバイスをスキャンします》


「まってまってまって! それやめて! なんか燃えるやつ!!」


 慌てふためく私をよそに、GMは光に包まれて消えていった。

 残された広場のプレイヤーたちは――


「……あいつ、本物のプレイヤーだったんだな」

「いやでも、黒馬の目光ってるし、やっぱりボスっぽい」

「GM監視付きプレイヤーって響き強いな」


 そんなひそひそ話の中、私は呟いた。


「……なんか、もうこの街歩くだけで事件起きそうな気がする」



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