95話 3人のラブラブアタック
それから僕たちは店内を歩き回り、おみやげ品を買いあさった。
「ねね、これど〜かな〜?」
「水晶の置物かー、良いね。玄関に飾るのも良さそうだし」
「よっしゃ〜、ほめられたぁ〜」
「ン〜ト……チョコ饅頭と沖縄スナックにトロピカルドリンク……他ニハ……」
「こ、こんなに食べるつもりなのイルミ……? ボクが言えたことじゃないけど、よく太らないね」
「フフフ……たくさん動いてるカラネ……」
イルミは不敵な笑みを浮かべサムズアップを決める。これもお約束ってやつだな。
「ずいぶん買いましたけどー、お金は大丈夫なんですかー?」
ウンブラはちょっとだけ不安そうにつぶやく。
「大丈夫だよウンブラ、お金はたくさんあるからさ。このくらい使ったってバチは当たらないって」
「なら、安心ですねー」
僕はウンブラに軽く返す。贅沢のしすぎには気をつけてるつもりだから、たまには良いと思う。……ふと、トオルさんの顔を思い出した……元気にしてるのかな……今度会いに行ってみよう。
僕はお会計を済ませるためにレジへと向かう。
「すいません、これください」
「はい、全部で3万円になります。にしても、大きなカラスですねー、毛並みも良いし」
「あ、ありがとうございます……」
ウンブラを連れ込んだことを全く気にされなかったため、僕は面食らう。ペット同伴に寛容な店なのかな?
僕たちはホワイト号に戻り、ラクシィはお風呂のスイッチを入れると床がスライドして開かれていき浴槽が現れ、あっという間にお湯が張る。そしてラクシィは振り返る。
「大きくはないけど、ゆっくり浸かるには充分だと思うよ〜、誰から入る?」
「あ、わたしはいる〜、しかもシオンくんといっしょに〜」
「ダ、ダメだよっ!」
ローザのからかいに僕は顔を真っ赤にしてうろたえる。
「ウ〜ン、2人で入ると狭くてお風呂壊れるカモ……シオンを引っ張り込んでみたかったケド……今回はおあずけってやつダネ……」
「ひぃぃっ!?」
僕は思わず情けない悲鳴を上げながらたじろぐ。
「なにシオンくん、いまの声とかお〜、もっ、かわいい〜」
ローザは顔を赤らめ興奮している。イルミも僕を見ながら顔を赤らめ微笑んでるため、内心は少し興奮してるのかもしれない。
い、いかん、このままでは、また襲われる!
「し、しまった! つい、うっかり」
「いやー、シオンさん、相変わらず女の子たちにタジタジですねー」
ウンブラは紅茶を飲みながら楽しそうに僕を見上げる。
「ぬうう……このままでは、僕はいじられキャラとして定着してしまう、何とかしなくては」
「むしろ良いとボクは思うんだけどなぁ〜、ほら、シーちゃんっていじられて、なんぼだし」
「な、なんてこった!」
いつの間にか、ラクシィからいじられキャラ認定されてるとは……そんな様子を見ながらウンブラとローザは笑い、イルミとラクシィは微笑んでいる。ま、まあ……今はいじられキャラで置いておくとしよう。
お風呂にはローザ、イルミ、ラクシィの順番で入っていき、その間は僕はアース・レコードを操作しながら時間を過ごす。ウンブラはものの5分くらいで風呂から出てきた。カラスの行水とは、このことだな。
「あとは、シオンさんですよー」
「うん、今から僕も入るよ」
僕は浴槽のカーテンを閉め、服を脱ぎ、湯船に浸かる。
「思ったよりも入り心地が良いな、足も伸ばせるし」
上手に設計されてるからか、やはり居住性は快適だ。4人と1羽でも充分不自由無く暮らせる感じだ。にしても、あれだな、動く家って何か面白い。僕は妙にワクワクしていた。
多分、子供の頃とかによくある秘密基地って感じで、それを思い起こすのかもしれない。懐かしさのようなものも付随してくるのは、それが原因かもなー。
僕は風呂から上がり、スイッチを押し浴槽を片づける。するとラクシィはリモコンを操作し、後部座席を広いベッドへと形を変化させる。
「うおお、凄いな……あっという間に座席が大きなベッドになったぞ……」
「クスッ、凄いでしょ〜、あとはお布団を敷けばすぐに快適に眠れるよ」
僕の驚きにラクシィは楽しげにしている。時計は午後11時を差していた。今日もあっという間だったなぁ……僕は布団が敷き詰められたベッドにゴロンと横になる。
「んふ〜♪」
すると、ローザが満面の笑顔で僕の右隣に寝ころび、顔を覗き込んできた。
「ど、どうしたんだい、ローザ?」
僕は目を泳がせながら、とぼけた返答をする。すると、イルミとラクシィもベッドの上に寝ころんできた。
「さ〜て、ボクもそろそろ寝よ〜かな〜、シーちゃんの隣で」
「ンショ、ンショ……フ〜……」
ラクシィは僕の左隣に、イルミは僕の足下に寝ころび、僕の枕元にはウンブラが座り込んで大あくびをしている。
「ふわぁ……眠いですねー」
「うおおっ! しまった! 4隅を取られた! これじゃあ逃げれないぞ! シミュレーションゲームでお馴染みの戦法、4隅を取って相手の動きを封じる戦法が僕に実行されるとは思わなかった!」
それに気づいたときは時はすでに遅しというやつだった。
「クスッ、今日はボクも加わってシーちゃんを揉みくちゃにさせてもらおう」
「さあ〜、シオンくん、きょうこそは、たっぷり、かわいいかわいいしてあげるね〜」
ローザとラクシィは両手をワキワキさせながら顔を赤らめニコニコしている。
「くぅっ、絶体絶命のピンチだ……この状況をどう乗り切るか……僕の頭の見せ所だ……」
僕は立ち向かう意志を見せる振りをして自分を冷静にしようと試みる。するとイルミは僕に抱きついてきた。
「フッフッフ……今日は寝かせないヨ……タップリ遊ぼ……」
イルミは顔を僕のお腹にうずめると、その上で頬杖をつき、僕を見つめながら微笑む。
「よ、よーし、遊びか……まずは僕がイルミの頭を撫でる遊びをしてやろうー、よしよし……」
僕は偉そうにイルミの頭を撫でてやると、イルミは気持ちよさそうにしていた。
「ハフウゥゥゥ……」
「ふっ……可愛いねイルミ」
僕は何かのキャラをイメージしながらキザったらしくつぶやいてみせる。
「んん〜、シオンくん、そんなんでごまかせると、おもっちょるの〜? あま〜い、シオンくん、あますぎ〜」
「よ〜し、今度はボクたちがシーちゃんを可愛がってあげるよ〜、準備は良いかな〜?」
「ひぃぃっ! 良くない!」
僕はまたもや、情けない悲鳴を上げてうろたえる。
「良かったですねー、シオンさん、3人の可愛い女の子からのラブラブアタック、これは嬉しい状況でしょー」
ウンブラは僕の髪の毛をついばみながら楽しそうに僕を眺めている。
「嬉しいのは嬉しいけど、されるがままの情けない状況なんて僕は嫌だーっ! 助けてーウンブラー!」
いつもより賑やかに騒ぎながら今日も1日が終わるのだった。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます!
少しでも、面白そうだったり、先が気になると思っていただけましたら、
ブクマと★★★★★を入れていただけますと、モチベーションアップして励みになりますし、とても嬉しいです!
広告下から入れられますので、よろしければお願いします!




