8話 キマイラを換金しよう
5層に入るとそこは、広い洞窟のようになっており、地面や土壁から生えた色とりどりに光る無数の植物があたり一面を幻想的に照らしていた。周囲には木造の家やテント、畑や牛のような動物を育てている牧場などが見える。
「ワア……キレイ……不思議なとこだね……」
イルミは目を輝かせ、その様相に見とれていた。
「……あの時は心の余裕が無かった……それでも、ここに初めて来た時は僕も目を奪われたよ。こんな景色があるんだなと……。今は、あの時とは比べものにならないほど僕の心に染みる……」
僕は以前の気持ちを思いだし、少し力無くイルミにつぶやく。
「シオン……少し、元気ないね、大丈夫……?」
「はは……大丈夫だよ、そう見えるかもしれないけど、悪い気分じゃないんだ。さ、これをお金にしてもらいに行こう」
「ウン!」
僕たちはブローカーのいる建物に向かおうとする。
「あーあ……クラのせいでよ……」
「アンタ! やっぱりあたしのせいにしてんじゃない!」
「ああ! そうだよ! お前が全部悪いんだよ! どう責任とってくれんだ、コラ!」
ま、またガルドとクラがいがみ合いを始めた。
「ガルド……アンタぁ……モンスターがいなくなった途端急に大きく出て……」
「あれは演技ってヤツだ! あの状況では、しおらしくしとくのが最善だと思ってな。テメェとは頭の出来が違うんだよ! このバカクラ!」
「バカはアンタでしょうが! このクソバカガルド!」
「ガ……ガルドさん、クラさん、落ち着いて……」
ガルドとクラのいがみ合いがヒートアップしていく。このままじゃ、僕たちの方にも、とばっちりがきそうだ、さっさと行こう。
「シオン……あの人たち、放っといて良いの……?」
「い、良いんだよ……あれは……そう! あの三人なりのコミュニケーションなんだ! 決して仲が悪いわけじゃないんだよ!」
「ヘェ〜、ソウナンダ……」
いがみ合う3人を尻目に僕とイルミは改めてブローカーのいる建物に向かう。
「いらっしゃいませ、買い取りですか?」
ジャージ姿のメガネをかけた男性が少し気怠そうに出迎えた。
「シオン……この人が、ブローカーって人?」
「ああ、そうだよ、さっそくキマイラを買い取ってもらおう」
僕はキマイラを下ろし、査定をしてもらう。
「今から査定をしますので、それまで向こうの客間で待ってて下さい」
ブローカーは客間を指差し、気怠そうにキマイラを調べている。
なんか凄くダルそうだけど、大丈夫かなこの人? ブローカーって大半が元高ランクのオブリオンって聞いたんだけど、とてもあの人がそうだとは思えない。いや、そう見せかけて実は凄い実力を隠しているのかも。
とりあえず、査定が終わるまで僕とイルミは客間でくつろぐことにした。
「……変わった床ダネ……」
「畳っていうんだ。他には、あれは障子に襖というもので、この部屋は和室ってやつなんだ」
「和室……ナンカ……落ち着くかな……」
イルミは和室が気に入ったようだ。
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