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86話 新しい農具

87話は8日の21時10分投稿予定です

 時間もちょうど良くなったため、僕とイルミとウンブラの3人で近所の花屋に出かける。雲一つ無い快晴の空を見上げ、イルミはつぶやく。


「ウ〜ン、良い天気ダネ……チョット暑いかもダケド……」


「だな、6月にしては暑すぎると僕も思うよ」


 テレビのニュースでは、ここ毎年、真夏の最高気温が更新されていると言ってた。これ以上暑くなるのは、ちょっと嫌だな。


「暑いときはー、クーラーをガンガンかけて冷たいジュースでも飲みながらテレビゲームに没頭しましょー」


「それ、思いっきり夏バテコースまっしぐらじゃん。しかも、家から一歩も出られなくなるパターンだ」


 そんな生活にハマってしまったら、もう2度と灼熱地獄の真夏の外に出られる自信がない。


「良いじゃないですかー、別に減るもんはないですしー」


「な、なにかが減りそうで、めっちゃ怖い」


「ダイジョブダヨ……ナニカ減ったら、ワタシが穴埋めしてアゲル……」


「気持ちは嬉しいけど、堕落しまくりそうで、やっぱり怖い!」


 しょうもないやりとりをしながら、僕たちは花屋に辿り着き、クーラーの聞いた店内へと入る。


「オオ……涼しいね……」


「ああ、外とはまるで別世界だ、さて、クワやじょうろを探そう」


 僕たちは目当ての農具を探すため店内を物色する。


「お、シオンさーん、おれ、これが欲しいですー」


 ウンブラは花柄のじょうろを指差し、ソワソワしている。


「よし、まずはこれをっと……」


 にしても、花柄のじょうろとは、またファンシーなのを選んだなー。でも、これはこれで悪くないデザインだと思う。すると今度はイルミも農具を眺めながらつぶやく。


「ン〜ト……コノ、クワとスコップとか、ドウカナ……?」


「おおー、良いですねーイルミさん。おれもこれが欲しいですー」


 イルミが選んだクワとスコップも明るい持ち手のデザインで、楽しく畑いじりをするには良さそうな物だった。


「じゃあ、これも買ってと……他には欲しいものあるかい?」


「ですねー、あとは肥料とか栄養剤をお願いしますー」


「ンジャ、コレト……コレダネ……サ……お会計シヨ……」


 イルミは肥料などをレジに持って行きお会計を済ませる。そして僕たちは花屋を出て家に帰ることにした。


「いやー、ホント、ありがとーございますー、これで畑いじりがはかどるってもんですよー」


 ウンブラは嬉しそうに空中を8の字に飛び回っている。


「はは、喜んでもらえたようで良かった。また必要なものがあったら遠慮なく言ってくれよ」


 僕はクワやスコップを担ぎながら調子の良いことを言う。グレート・アトラクターは人目があるため今回は使わなかった。


「ホントですか? いやー、シオンさんって、気前が良いですよねー」


「お、おだてても何も出ないって」


 お金がたくさんあるから、そう振る舞えるだけだろうけど、それでも褒めてもらえると嬉しいもんだ。頭をかきながら照れていると、イルミは遠くを見つめながらつぶやいた。


「ン……?」


「どうしたんだイルミ?」


 僕はイルミの視線を追うと、そこには大きなハシブトガラスが倒れていた。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます!

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