82話 ラクシィとの話し込み
83話は4日の21時10分投稿予定です
「ああ、良いよー」
僕が快諾すると、スライド式の木の扉が開かれ、ラクシィが部屋へと入ってきた。
肩まであるセミロングの銀髪、大きくパッチリとしたエメラルド色の瞳。幼い感じの整った顔立ちと白めの肌。白とピンクを基調とした学生服を思わせる半袖とミニスカート姿は、やはり可愛らしいと思った。
「おじゃましま〜す、布団の上に座って良い?」
「うん、構わないよ」
僕は枕元の方へ移動し、あぐらをかく。ラクシィは僕と向かい合わせになる形で体操座りで布団に座る。
「エヘヘ、シーちゃんと2人っきりで話すのは久しぶりだよ」
「そ、そうだな……」
僕は意識してしまい少し照れてしまう。おっと、落ち着けよ僕、クールに、冷静に。
「えっと、僕にどんな話があるんだい?」
「うん、ほら、今回50層のボスを倒して富士山の噴火を阻止したじゃない、上の人たち凄く感謝してたよ」
「ほ、本当かい、それは嬉しいな」
僕は褒められた事実に少し舞い上がる。
「その功績を称えられ、名目上監視という扱いが解除されて、特別民間協力者という肩書きがシーちゃんたちに与えられたんだよ」
「と、特別民間協力者……?」
確かに肩書きは、ちょっとカッコいいと思ったけど、何かしなきゃいけないんだろうか……? 僕は少し顔を強ばらせる。
「あ、そんな構えなくても大丈夫だよ、ぶっちゃけ、今までと何も変わらないから」
「そ、そうなんだ? それは良かった」
僕はホッと胸をなで下ろす。そんな僕の様子を見てラクシィは続ける。
「クスッ、それでね、今度はボクに関してなんだけど、今まで地球の地下とかの探索と機材のテストや特殊任務を任されてたんだ」
「うんうん」
僕はラクシィの話にうなずく。
「でも、最新のスーツが開発されて探索が常人でも可能になって、さらに今回のウルティウム・ドラゴンの件もあって、ボクには特殊任務に専念して欲しいって流れになったんだよ」
「そういえば、特殊任務って?」
内容は聞いたこと無かったから、ここで聞いてみる。
「人間の力では太刀打ち出来ない脅威が現れた際、ボクたちも人智を超えた力を振るい、人類と地球を守るために尽力するって任務だよ」
「おお、なんかヒーローみたいでカッコいい……でも、僕なんかには務まりそうにないなあ……」
僕は自信なさげに頭をかいてると、ラクシィは笑いながら僕の肩をポンポン叩いてきた。
「あっはは、だから大丈夫だって、そもそも今までだってボクだけで解決してきたんだし、あくまでボクの手助けをしてくれるだけで良いんだよ。安心していつも通り、力押しのゴリ押しで頼むよ〜」
「まあ、それなら安心かー」
また僕は難しく考えすぎてたみたいだな。すると、ラクシィは少しトーンを下げ微笑んできた。
「そういえば、まだ、お礼言ってなかったよ……ありがとね、シーちゃん……」
「きゅ、急にどうしたんだ!?」
何のことだろう? 心当たりがない。
「噴火の話を本部から聞かされた時は、本当は不安だったんだ……もし倒せなかったらどうしようって……ボクはやられても大丈夫だけど、普通に暮らしている人たちは、そうはいかない、噴火に巻き込まれたら死んじゃうんだよ……」
ラクシィは少し泣きそうな顔で吐露する。やっぱりか……ペルで何事もないようにしてたけど、内心不安だったんだな。
「でも、シーちゃんはボクを元気づけようと強気に振る舞ってくれた……それが嬉しかったんだよ……」
真っ先にやる気になってたのはローザだった気がするけど、そんなこと言うのは野暮ってやつだろうか?
「シーちゃんも内心穏やかじゃなかったろうに無理してカッコつけてて……あ、思い出したら、ちょっと笑いが出てきちゃった」
「バ、バレてるし!」
僕はバレてた事実に狼狽する。でも、笑ってくれてるってことは、まあ、悪いようにはなってないみたいで良かった。ラクシィは微笑みながら僕の顔を見つめてくる。
「クスッ、ま〜、つまり言いたいことは、ボクはシーちゃんのおかげでとても助かってるってこと。ありがとねシーちゃん、これからもよろしくだよ」
ラクシィは僕の肩を組みながら耳元でお礼を呟く。
「ぼ、僕で助かってるって言ってくれるの、凄く嬉しいよ。こちらこそ、改めてよろしく」
僕はドギマギしながら答える。そしてラクシィは肩組みを解き、離れようとした。その際、ラクシィの唇が僕の頬に少し触れた気がした。
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