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80話 賑やかな取っ組み合い

81話は2日の21時10分投稿予定です

「では、さっそくですが、シオンさんの心残りってなんですかー?」


 ウンブラはいきなり僕に話を振る。


「きゅ、急にそんなこと言われても思いつかないな」


 心残り、か……仮に僕がクニヒロさんの生まれ変わりで心残りがあるなら、それに意識が自然に向きそうだが、今のところ、その気配は自覚出来ない。すると、ラクシィは笑顔で顔を寄せてきた。


「好きな子に告白出来なかったとか? ほら、ボクみたいな可愛い子に」


「ええっ!?」


 いきなりラクシィからからかわれ、僕は戸惑う。


「じつは〜、わたしは、おさななじみで来世で再会しようとやくそくしたとか〜?」


「えええっ!?」


 ローザもそれに乗りかかり、僕の腕を組み始めた。僕はドキリとし、理性が悲鳴を上げそうになる。


「モシカシタラ……ワタシに会いにきてくれるために……生まれ変わってくれたのかも……」


 イルミは僕を見ながら顔を赤らめている。ローザとラクシィは同時にイルミを見る。


「イルミは、手強いよ……ボクにとってのラスボスかも……」


「イルミちゃんがラスボスなら、わたしは裏ボスだもん! ここからいっきにシオンくんとのイベントをおこしてヒロインの座をいただく予定なんだから〜」


 ローザとラクシィはイルミに対抗意識をメラメラ燃やしている。そんな2人を見てウンブラは口を開く。


「いやー、ローザさんはギャグ枠でしょー、ヒロインの立場は無理があるというか何というかー」


「そ、そんなことないもん! わたしは、まだほんきになってないだけ。わかる? 本気だよ本気、本気と書いてマジとよむんだよ〜、なんちゃって」


 ローザは手と羽根をパタつかせながらウンブラにアホっぽく食ってかかる。


「あー、やっぱり、これはダメっぽいですねー、シオンさんといえど、ちょっと引くでしょー」


 ウンブラは両手を広げながら笑い、僕の方へ振ってきた。するとローザは僕の方を懇願するような目で見つめてきた。えっ、こんな時、なんて言えば良いんだろ?


「に、賑やかな子は、嫌いじゃあないよ」


 僕は耽美(たんび)なキャラを想像しながらキザったらしく言ってみる。


「やったあぁぁぁっ! シオンくん、にぎやかなわたしのことがだいすきだって〜! これはもう、わたしとシオンくん、けっこんするしかないよね、うへへへへ〜!」


 ローザは、はしゃぎながらうろつき回り、マシンガンのように四方八方に喋り散らかす。


「ちょっ! うへへへ〜は怖いから却下!」


 僕は思わず立ち上がり仰け反る。


「何を言ってるんだいローザ、シーちゃんと結婚するのは、このボクだよ」


「ちがうよ〜、わたし、このわたしだもん〜」


 ローザとラクシィは取っ組み合いを始め、相撲っぽいことを開始する。


「ひぃぃぃぃっ! このままでは家が吹っ飛ぶ! 何とかしなくては!」


 僕は情けない悲鳴を上げ狼狽える。


「ン〜……ミンナでシオンと結婚するってのは……?」


 イルミはローザとラクシィの相撲を見ながらつぶやいた。そのつぶやきに僕はさらに気が動転する。


「に、日本は複数の女の子と結婚することは出来なくてさー、イルミの申し出は僕としては嬉しいけど、とりあえず様子見ってことで……」


 僕は言い訳をしまくり、この場を切り抜けようとする。するとラクシィは取っ組み合いを止め、腰に手をあてて僕に向かって胸を張る。


「アース・セイバーズ特殊任務遂行部隊長のボクの権限で特例にするから、大丈夫だよ〜」


「職権乱用だーっ!」


 僕は思わずツッコミを入れる。そしてローザが畳み掛けてくる。


「どんなきまりも、愛でうごくわたしをとめることはできない〜、うへへへ〜」


「だから、その、うへへへは却下! これじゃあ、欲望で動いてるように見えるって!」


「愛も欲望もいっしょだよ〜」


 ローザは全く悪びれる様子なく、あっけらかんとしている。


「なんてこった! 一緒くたにしちゃったよ、この子! くっ、こうなったら、いったん出直して……」


 僕は酷い顔でツッコミ、自室でクールダウンをしようと考え後ろを振り返る。


「シーちゃん、ボクと結婚しよう」


 ラクシィは僕の右手を両手で包むように握ってきた。


「しまった! またもや退路を塞がれた!」


 10層の宿の二の舞だ。それに気づいた時は、時すでに遅しだ。


「シオンく〜ん、だいすき〜、わたしとも、けっこんしよ〜、ねっ」


 ローザは僕の右側から抱きつき、頬ずりをしてきた。


「うおわぁっ! 僕の理性が!」


 僕は叫ぶが、さらに追撃でイルミもやってきた。


「ワタシたちとシオン……ズット……一緒ダヨ……」


 イルミは僕を抱きしめ、僕の胸に顔をうずめる。こっちは、なんかキュンときた。


「あ、ああ、もちろんだとも!」


 僕は少し冷静さを取り戻し、またもキザッぽく言ってみる。


「しっかし、ホント賑やかですねー、毎回こんなやりとりして、よく飽きないなと感心しますよー」


「でしょ〜」


 ウンブラのツッコミにローザは元気良く返す。まあ、あれだ、僕は自分から喋るタイプではないから、これくらい賑やかな子たちが良いのかもしれない。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます!

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