7話 ガルドパーティの崩壊危機
「コノ門って、白いモヤがかかってて向こうが見えないんだね……」
イルミは6層へ繋がるゲートに人差し指を向けながら僕を見る。
「うん、そうだよ、僕も初めて潜る時は向こうが見えなくて、本当に通れるのか不安だったなー」
僕はイルミを見ながら軽い口調で話す。
「ダンジョンにはさ、一定区画ごとにゲートっていう門があって、そこから次の階層に行ったり戻ったり出来るんだ。その際、ダンジョンの形状が変わることがあって、仕掛けや宝箱も再配置されるってことらしい」
「ヘェ〜……ソウナンダ……シオンって物知りなんだね」
「え……あ、いや、教えてもらっただけなんだ」
イルミに褒められ僕は少し照れる。そして6層へ戻るゲートを全員で潜り5層目指して歩みを進める。
6層の様子は7層とさほど変わらず、白い大理石で作られた西洋風の迷宮だ。出てくるモンスターはミノタウロスや動く甲冑、ガーゴイルなど、ファンタジーのゲームでよく見る馴染みのある敵だ。それに混じって巨大なクモやアリとかも見かけた。
「ねえ、ガルド……」
「なんだ、クラ?」
ガルドとクラがひそひそ話をしている。
「戻ったら、どうすんのよ?」
「あん?」
「あん? じゃないわよ! あたしたち、スキルゼロよ、スキルゼロ! これじゃ、ダンジョンに潜って稼げないじゃない! どうする気よ!」
クラは苛ついた様子でガルドに詰め寄る。
「……戻ってから考えようぜ……頭ん中グチャグチャで今は何も考えたくねえ……金なら、まだあんだし」
ガルドは疲れ切った顔でクラをあしらう。
「は? アンタ、ふざけてんの? いつもそんな行き当たりばったりだから、こんなことになったんじゃないの!」
「お、俺は悪くねえ! 悪いのはク……そう、シオン、シオンのヤツだ!」
ヤバい……なんかいがみ合いを始めたぞ、しかもガルドのヤツ、しれーっと僕のせいにしようとしてるし。
「ガルド! アンタ! 今なんて言おうとしたのよ! 悪いのはク……なんだって? あたしが悪いって言おうとしたんでしょうが!」
クラはガルドに怒声を浴びせる。
「い、言ってねえだろうがよ! そんなこと!」
「じゃあ、腹ん中では、どう思ってんのよ!」
「……」
ガルドはクラから目をそらした。
「アンタぁ……やっぱり!」
クラは目をつり上げて激怒する。
「シ、シオンを生贄にしようって提案したのはクラだ! 俺はシオンのことはさっさと追放するつもりで……つまり、やっぱり俺は悪くねえ!」
「なに、責任転嫁してふてぶてしく居直ってんのよ! このクソガルド!」
「ク、クラさん、落ち着いてくれませんこと!?」
クラはガルドの胸ぐらを掴み、激しく揺さぶっている。エミはクラをなだめようとするが効果なしだ。
ガルドに対して、ざまあみろと思うのと同時に人の怒鳴り声は、やはり苦手だ。人智を超えた力を得た今でも少し怖いと感じてしまう。
「ア……次のゲートが見えてきたよ……」
「だな、あれを潜れば5層中継地点だ」
僕は色んな意味での安堵感を感じていた。
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