76話 謎の縁
77話は29日の21時10分投稿予定です
「いや……確かに話を聞いたときシンパシーを感じたけど、僕とクニヒロさんは赤の他人だよ」
「うーむ、他人ですかー」
ウンブラは頭をかきながら考えてるようだった。ど、どういうことだ……? まずはウンブラの質問に答え、僕からも聞いてみよう。
「し、親戚と聞いてきたのは、何か理由が……?」
「はい、彼の話をしたあと、おれは興味本位でクニヒロさんの部屋や職場などを改めて覗いたりして調べてたんですよー、そしたらですねー」
「そ、そしたら……?」
「ドウナッタノ……?」
僕とイルミは切り株から立ち上がり、さらに前のめりになる。
「それがー……クニヒロさんとシオンさんの魂の波長っていうんですかねー、それが不自然なくらい一致してたと感じたんですよー、最初はおれも疑念しかなかったから言わなかったんですが、やはり何度感知してみても他人では有り得ないレベルで一致しててですねー」
「なっ……?」
僕は全身がザワつく感覚に陥る。ウンブラは真っ白な目と口を笑顔にしながら、さらに話を続ける。
「おっとー、少々お待ちを、仮に兄弟や親戚だったとしても、この一致具合はおかしいです。ですがシオンさんが赤の他人と言ってくれたことで、ある考察が可能になりましたー」
「こ、考察?」
「オオ……ドンナ……?」
イルミはさらに食い入るように話を聞いている。僕も無関心ではいられない。
「改めて確認したいのですが、シオンさんって19歳ですよねー?」
「ああ、19だよ」
そう、19年……つまり……。
「そして、クニヒロさんが富士の樹海で行方不明になったのも19年前でしてー、シオンさんはクニヒロさんが住んでいた家にやってきた、奇妙な偶然が重なりすぎてると、おれも思いますー」
ウンブラは少し興奮気味に真っ黒な両手を広げながら講釈を続ける。
「つまり、あれかな……僕はクニヒロさんが転生した存在だと……?」
僕は僅かに震えながら答えてみる。恐怖からの震えではない、なんというか、武者震いだの、好奇心からくる震えのような感じだ。嫌な感じではない。
「確信は無く、断定も今は出来ませんが、その可能性が高いのではと、おれは考えていますねー」
「転生……カ……ナンカ、ロマンっていうのかな……ソウイウのをワタシは感じるよ……」
生まれ変わり……そして再び巡り会う……そう、確かにロマンだ。
「だな、もしかしたらさ、僕とイルミが出会い、ジーベン・ゲバウトを得る資質があったのも、クニヒロさんのおかげなのかもしれないな」
僕は空想に思いを馳せてみる。
「おれとしては、それも可能性があると思ってますー、クニヒロさんの波長は悪霊のおれが言うのも何ですが、かなり異質でした。そして謎の消失を遂げ、シオンさんとして生まれ変わったとしたら、その過程で何らかの霊的な資質を魂に宿したとしても、おかしくないと考えますー」
「おお……面白い考察だ……なんか興味が出てきたな、もっと情報が欲しくなったよ」
趣味を探す前に、この謎を可能な限り知りたくなった。
「お、ではー、一緒にクニヒロさんの部屋を探索してみるのはどうでしょう? 新しい発見があるかもしれませんしー」
「探索……ワクワクしてきた……イイネ、ワタシもやってみたい……」
「確かに、僕も気にはなってたんだ、怖くて部屋には入らなかったけど」
「フフ……何かあったら……ワタシがシオンを守ってアゲルヨ……」
「おお、頼もしいな、それじゃ、頼むよイルミ」
「ウン……♪」
イルミは首を傾げながら上機嫌に答えてくれた。
「いやいやー、シオンさんも、幽霊デコピン一発でぶっ飛ばすでしょうに、怖いはないでしょー」
「き、気持ちの問題なんだよ、バケて出てきたら怖いのは怖いし」
僕はおどけながら頭をかく。
「ヨシ……シオン探索隊、出動ダネ……」
「シオン探索隊、それ良いな……では、出動!」
「ですですー」
僕たちは年甲斐もなく、はしゃぎながら家に入る。良い歳してどうだと言われそうだが、こういうのも悪くないと思った。僕たちはローザにも声をかけてみる。
「へ〜、なんか、おもしろそう〜、わたしもくわわろうっと〜」
「ではではー、パーティが揃ったところで、2階に向かいましょー」
僕たち四人は階段を上り、2階にあるクニヒロさんの部屋へと足を踏み入れる。
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