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6話 焦燥疲弊のガルド。スキル消失の災難

 キマイラを倒して少し経つと扉が開かれ、部屋から出られるようになった。


「あ、開きましたわ!」


「た、助かった、わけ……?」


 エミとクラは僅かに安堵の表情を浮かべる。


「……どうなって……やがんだ……一体……?」


 ガルドは呆然としながらつぶやいた。目の前で起こったことが信じられないといった感じだ。無理もないよな……立場が逆だったら、僕も同じ反応をしただろうし。


「えっとさ、とりあえず、5層の中継地点にみんなで戻らないか?」


 黒ずくめの長袖Yシャツ長ズボンを整えながら僕は三人に提案をしてみる。


「あ……あたしたちを殺さないの……? あんなことをしたのに……」


 クラは怯えた表情と震えた声で僕を見据える。


「僕を生贄にしたことは許せない。でも、それとこれとは話が別なんだ」


 僕は言葉を選びながら話す。


「助けたのは……気まぐれで、5層の中継地点に戻ったら、その……もう、これっきりにしよう」


 とにかく、変な情報は与えたくなかった。面倒なトラブルはゴメンだし。


「た……助かりましたわ……蘇生石も帰還石も消滅しましたから、もうどうしようかと……」


 エミが胸をなで下ろし、完全に安心した様子を見せる。

 ……蘇生石が無い状態でダンジョンで死んだら、二度と生き返れないって聞いてたから、危なかったな……。

 僕はキマイラの足を掴み、持ち上げた。


「お……おい……シオン……テメェ、何してんだ……?」


 ガルドは仰け反りながら震え声で僕に対して警戒体勢をとっている。その顔は、まだ青ざめたままだった。


「あ、いや……5層まで、まるごと持って行って換金しようかと」


「換金? シオン、コレッテお金になるの……?」


「うん、ブローカーっていう名前の仕事をしてる人がいて、その人たちが買い取ってくれるんだ」


 イルミの疑問に簡単に説明する。


「す……数トンはあるキマイラを……片腕で……持ち上げましたの……?」


「嘘でしょ……スキルを無くす前のガルドより怪力だなんて……」


 クラとエミは唖然としながら立ち尽くしていた。

 僕とイルミは5層に向かって歩き始める。


「ま……待てよ……待ちやがれ……待ってくれぇーっ!」


 ガルドは情けない声を上げながらヨタヨタと力なく僕たちの後ろをついてきた。クラとエミもそれに続く。


 白い大理石で作られた床をイルミと会話しながら歩いてく。

 道中、モンスターを見かけたがキマイラを背負っているおかげか警戒して逃げていったため戦わずに済んだ。


 ……通常、モンスターを倒すと素材の一部を残し、霧散して消滅する。

 だけど、まれに消滅せずに残る場合があり、運搬は大変だがその分高値で買い取ってくれるらしい。


「シオン、お金を貰ったら何に使うの?」


「まず、アパートっていう僕が住んでいる家があって、そこの家賃を滞納してるから、それを払いたい」


 もうすぐ追い出されるところだったから、心底ほっとしている。まるごとのキマイラはいくらになるんだろう? 高値で買い取ってくれると嬉しいな。


「そして、その後は美味しいものを食べたいかな、お金がなくて最近カップ麺ばかりだったから」


「美味しいもの! ワタシも……食べて良い……?」


 イルミは目を輝かせ、少し興奮しているようだった。意外に食いしん坊なのかな?


「もちろんさ、そもそも全部イルミのおかげなんだから、遠慮なんていらないって」


「フフ……ソウ言ってくれて嬉しいよ……」


 イルミは僕に笑いかける。


「ね、ねえ、ガルド……あの女、誰なの? シオンとやたら仲が良さそうだけど……」


「お、俺が知るかよ……そもそも、何が何だか分け分からねぇし」


「悪魔かしら……? シオンは悪魔との契約をしたんではないでしょうか?」


「あ、悪魔? 確かにあの人外じみた雰囲気……あり得るぜ……」


 ガルドたち3人はなにやら勝手な噂話を始めている。

 そうこうしている内に僕たちは6層へ繋がるゲートへと辿り着いた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

もし少しでも、面白そうだったり、先が気になると思っていただけましたら、

ブクマと★を入れていただけますと、嬉しいです。


広告下から入れられますので、よろしければお願いします。

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