63話 ラクシィおすすめの喫茶店
次話は17時10分投稿予定です
有機械惑星セブン・水晶地帯を時空間転移に登録したあと、僕たちはいったん自宅へと帰ることにした。次の層が最後で、いわゆるラスボスとの戦いだ、ゆっくり休んで疲れをとったあと挑もう。
「ひとあばれしたら、おなかすいちゃったね〜」
「あ、ならさぁ、みんなでご飯食べに行こうよ。ボク、良い喫茶店を見つけたんだ〜」
「オオ……喫茶店……ドンナご飯が出るのか楽しみダヨ……」
「僕も賛成だ、よし、そこに向かおう」
僕たちはラクシィのキャンピングカーに乗り込み、喫茶店へと向かうことにした。
乗り込む前に僕は庭の祠に目をやったが、ウンブラはまだ帰ってきてないようだった。誘うのは、また今度かな。
今回は助手席にはイルミが座っており、僕はイルミの後ろの席に座る。必然的に僕の隣にはローザが座ることになり、事あるごとに僕にちょっかいをかけてくる。
「ねね、シオンくん、ほら、みてみて、カラスちゃんだよ〜、おおきいね〜」
ローザは車の窓を開け、カラスを指差している。
「あれは、ハシブトガラスっていうカラスだったかな、クチバシと体が大きくカアカア鳴くやつで……にしても、でっかいな……暖かくなって虫が増えたからエサが多くなったのかもなー」
「そうなんだぁ〜、わたしみたいにたくさんたべて、おおきくなったんだね〜、そだちざかりってやつなんだぁ〜」
「はは、案外そうかもしれないな」
僕はローザの陽気さに微笑ましくなる。どうでも良いことだけど、僕はカラスが好きである。鳥全般が好きだが、その中でもカラスは上位に入る。
あのクリッとした目と愛らしい挙動。カッコよさと可愛さを兼ね備えたカラスは、やはり良い……。
ということを高校で話したら嫌な顔をされてしまったことがある。ゴミを荒らすし真っ黒いから不吉で悪いイメージしかないのかもしれない。
「みんな〜、喫茶店に着いたよ」
ラクシィは華麗なハンドルさばきで喫茶店に到着する。
「ンショ、ンショ……ココガ、ラクシィおすすめの喫茶店……」
それは、小さめではあるが木に囲まれたお洒落な造りの喫茶店だった。少し道が入り組んでおり、一見では分かりにくい場所に店があるため、知る人ぞ知る隠れた店なのだろう。
「ペルって名前のお店なんだ。この店は40年も前から続いているらしく、近所の人からの評判も良いみたいだよ」
「そうなんだぁ〜、おいしいおりょうり、たのしみだね〜」
僕たちは喫茶店に入り、4人掛けのテーブルに着席する。入り口には花が飾ってあり、ケーキが並べられているショーケースのようなものも確認出来た。
カウンターにはコーヒーメーカーが設置され、フラスコのような入れ物でコーヒーがコポコポと作られている。
僕たちはオムライス、パスタ、ピザ、サンドイッチなどを注文し、みんなで食べることにした。
店内はランチを食べに来る人たちで席が半分ほど埋まっている。若干老人が多い印象で、穏和そうな人たちばかりといった感じだ。
少し待つと料理が運ばれてきたので、僕たちは食事を始める。
「お〜いし〜い! このチーズのトロッとしたかんじとトマトのすっぱさが完全なるエターナル・フォース・ブリザードってかんじで♪」
「な、何を言ってるのかは訳分からないけど、とても美味しいということだけは僕は理解したよ……」
ローザはリスみたいにピザを頬張り幸せそうにしている。
「コノ、ハムエッグっていうのも美味しいネ……」
「でしょう、このバターが塗られたフランスパンもおすすめだよ〜、ボクのお気に入りさ」
「ウン……香ばしくてサクサクして美味しい……」
イルミはフランスパンを一気に3つも平らげた。相変わらず食いしん坊だな。
「温かい状態で提供されるツナサンドって珍しいな、美味い」
「うん、シーちゃんもそう思うでしょう、こっちのタマゴサンドもいけるよ、どんどん食べてね〜」
僕はツナサンドを頬張り、ラクシィからすすめられたタマゴサンドを受け取る。パリッとしたパンとボリュームのある具が合わさり、とても美味しい。
「マダマダ、食べたりないかな……オカワリ、良い……?」
「うん、良いよ〜、すいませ〜ん、これ、もう一つくださ〜い」
「ま、まだ食べるのか……イルミの胃にはブラックホールでも入ってるんじゃあなかろうか……?」
「そだちざかりなんだよ〜、わたしも、まだまだたべるよ〜」
今更だが、3人ともなんて食欲だ。ラクシィもよく見たら僕の倍は食べてるし、よく太らないなあ。でも、たくさん食べれるってのは元気ってことだろうし見ててホッコリする。
「あれ? 本部から連絡だ、ごめん、ちょっと外に出てくるね」
「ウン、イッテラッシャイ……」
ラクシィはパスタを食べ終え、足早に店外へと出て行った。
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