57話 46層、古代惑星ザウル
次話は11時10分投稿予定です
あれから数日後……僕たちはラクシィが到達していた46層に転移石で移動し、ダンジョンを攻略していた。
「見せてあげるよ、これがボクのモナド・ウェポン、光剣ジェネシスだよ!」
ラクシィは取り出した銀色の棒のスイッチを押すと、そこから長さ2メートル程の白く輝く光の刃が生成された。
「す、凄い! まるで映画で出てくる光線剣みたいだ!」
そして、大木をなぎ倒しながら、もの凄い勢いで突撃してくる7メートルはあるティラノサウルスそっくりのモンスターをすれ違いざまに一撃で真横に両断する。
「ラクシィちゃん、かっこいい〜! まるで主人公ってやつみたい〜」
軽やかなステップでティラノサウルスに向き直り、白とピンクのミニスカートとセミロングの銀髪が揺れ動く様は、ローザの言うとおり確かにカッコいい。相当戦い慣れしてるんじゃあないか。
「待って……アノモンスター、スゴイ勢いで再生しているよ……」
両断されたはずの胴体部分の切り口から骨や肉が生成され、あっという間にティラノサウルスが元通りになる。
41層以降の攻略が進まない最大の原因は、モンスターの強さもさることながら、この異常ともいえる再生能力を有しているからだという。先ほどラクシィから少し聞いたけど、これほどだなんて……。
確かに、こちらの攻撃力より再生力が上回っているんじゃあ倒しようがない。さすがのラクシィですらも46層で足止めを食らってたという。だが、僕たち4人なら……!
「エクスオール・レイキャリバー……」
僕はつぶやき、右手に黄金の持ち手と鍔を備え、柄には白く輝く宝玉。そして、蒼く透き通った幅広の刀身を持つ大剣を出現させる。
「食らえっ! ギャラクシオン・バスター!」
そして、僕はエクスオール・レイキャリバーの刀身に20メートル程の蒼く輝く巨大光刃を纏わせ両手で振り下ろし、ティラノサウルスを一刀両断にする。
「ちょっ……シーちゃんの剣の方がよっぽど強そうじゃないか〜! あとで持ってみても良い?」
「ああ、良いけど」
そういえば、他の人のモナドで創り出した武具って使えるんだろうか? 良い機会だから後で試してみよう。
「ン……? 一気に再生能力が落ちたね……10分の1くらいまでガクンと……」
「ホントだ、ボクの攻撃では、こんな現象起きなかったのに……」
「シオンくんの、なんとかバスターのおかげじゃないかな〜、このまま、いっきにやっつけよう〜!」
3人はティラノサウルスに攻撃を仕掛け、撃破する。後には素材やモナド結晶。さらには光る宝玉のようなものが残されている。それらを回収し、僕たちは先に進むことにした。
ギャラクシオン・バスターに再生能力を弱める付加効果があったとは分からなかったな。おそらく、ジーベン・ゲバウトにも記されていない隠し効果なのかもしれない。
何にせよ、ここからの戦いにおいては凄く有用な効果だ。有り難く使用させてもらおう。僕たちは襲ってくるモンスターを力押しで倒しながら先に進んでいく。
……このダンジョンは古代の地球を思わせる様相で、見慣れない動植物で溢れている。
それはまるで、図鑑で見た白亜紀やジュラ紀といった恐竜が生きていた時代のようであり、遙かなる過去にタイムスリップした感覚に僕は陥った。
襲ってくるモンスターもプテラノドンやブロントサウルス、トリケラトプスなど、お馴染みの恐竜にそっくりなものばかりだ。
ただ、草食恐竜も好戦的だったり口から熱線や電撃を平気で撃ち出してくるわ、再生するわと違いはあるが……。
今までのダンジョンは、どんな様相であろうと閉鎖空間であるという事実には変わりはなかった。だが、試しにみんなと上空まで飛翔し続けてみて分かった事実がある。
「大気圏を抜けると宇宙空間にまで出たぞ、太陽も2つあるし。まさか別の惑星なのか?」
「うん、たしか……まちがいないよ、シオンくん。46層からは……おなじ宇宙のべつのほしになってた……きがするかな……」
ローザはこめかみを指で押さえながら首を傾げている。
「少し曖昧だけど、合ってるんじゃないかな、ボクがアース・レコードで調べた結果、地球と同一次元上に存在している場所には間違いないみたいだよ」
「別の星ナンダネ……ドレダケ地球から離れてるのカナ……」
僕たちは宇宙空間から星を見下ろしてみる。大陸の形がまるで違い、緑がかった感じだが、どこか地球に似ていた。
試しに時空間転移に登録してみると、古代惑星ザウルという名前で登録されていた。やはり別の天体なんだな。
「さすがに酸素が無いと力が抜けるね、シーちゃん、そろそろ降りようか」
「ああ、そうだな」
僕たちは降下して元の場所へと向かうことにした。
「ラクシィ、自然についてきたけど、ヤッパリ飛んだり空気が無いトコデモ、ダイジョブナンダネ……」
「うん、ユニークモナドでブーストしてるとはいえ、ボクも相当モナドを荒稼ぎしたからね〜、さらに1日に数回までなら死んでも生き返れるモナドも習得してるし、そもそも、細胞頑強力や再生力も、ここのモンスターにも負けない自信はあるよ〜」
ラクシィは降下しながら腰に手を当てて自信満々にしている。
「ほえ〜、ラクシィちゃんも、じょうぶなんだね〜、わたし、すっごい、うれしいよ〜」
ローザは嬉しそうに羽根をバタバタさせながら飛び回っている。
「うん? ボクが丈夫だと嬉しいの?」
「だって、だって、死なないってことは、ずっと、いっしょにいられるってことだもの〜」
……ローザの言葉を聞いた瞬間、僕の心がざわめくのを感じた。
「……! そ、そうだね、ずっと一緒かぁ……発想しなかったけど、ボクも……それは良いなと思うよ……」
ラクシィは戸惑いながらも満更ではなさそうだった。
ずっと一緒……それは、不死身の肉体となりて永遠を手に入れた者たちの特権なのだろう……少なくとも、僕たちはそれを許されたんだと思いたい……。
「よし、みんな! このままダンジョンを一気に踏破してやろう! 僕たちなら、やれるさ!」
「ウン……行こう、シオン……」
「わたし、さらにだいかつやくしちゃうぞ〜、そして、シオンくんの心をわしづかみっ! えへへへ〜」
「そう簡単にいかないよ、シーちゃんの心を掴むのは、このボクもだ〜!」
「は、はは……」
僕は気を高揚させ、頼もしく賑やかしい仲間たちと共に古代惑星ザウルに降り立ち、次のゲートを探しにいく。
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