52話 くつろぎの時間と庭の畑
次話は6時10分投稿予定です
「そ、それじゃ、改めて……シーちゃん、イルミ、ローザ、ウンブラ、これからよろしくだよ」
「ああ、よろしくな」
「うん、よろしく〜」
「ラクシィ、ヨロシク……」
「ついでにおれも、よろしくでーす」
ラクシィは僕の手を取り、イルミとローザも僕たちの手を握る。さて、まずは一息つきたいな。僕はみんなと一緒に家に入る。
「うっわあ……ガラガラなんだね。もしかしてシーちゃん引っ越したばかりなの?」
「そうなんだよ、足りない家具を買いに行こうとしたらガルドのやつと鉢合わせしてさ、いやー、マジでまいった」
僕は紅茶とコーヒーを淹れながらグチをこぼす。
「でも、そのおかげで最高の再会を果たせたんだから、ガルドはボクたちのキューピッドなのかもね」
「あ、あんな大男のキューピッドなんて僕は嫌だー!」
「あっはは、確かにね〜」
僕は頭を抱え大袈裟に騒ぐ。もうラクシィはガルドのことを水に流せたのかな?
アイツのやったことは許して良いことではないにしろ、悪感情を抱き続けるメリットは無いと僕は思うから。
「今日は……コーヒーの気分かな……シオン、モラッテモイイ……?」
「ああ、良いよイルミ」
「アリガト……」
イルミは僕からコーヒーを受け取り、テーブルに座り砂糖をドバドバ入れて飲んでいる。うわ、甘ったるそう……。ローザの方は僕の淹れたコーヒーを横からかっさらっていく。
「シオンくん、にっが〜い! なんでコーヒーってこんなに苦いの〜?」
「そ、そりゃ、ブラックで飲めば苦いがな、無理せず砂糖入れなよ」
「んふ〜」
ローザはとぼけた笑顔で頬杖をついている。ブラックで飲んどいて苦いは無いわー、モンスタークレーマーもいいとこだ。
「クスッ、シーちゃんたちは、いっつもこんな感じなのかな?」
「ま、まあね、振り回されて押され気味だけど、賑やかには違いないから、これはこれで良いんじゃあないかと僕は思う」
雑談しながら、ふと時計に目をやると14時を回っていた。少しお腹が空いたので、蕎麦でも茹でてみんなで食べようかな。
僕は鍋に水を入れ火にかけ、遅めの昼食の用意をする。
「よ〜し、もういれるよ〜」
「ダ、ダメだよ! まだ沸騰してないだろ!」
ローザはぬるま湯に蕎麦を入れようとしたので、僕はそれを制止する。
「ン〜ト、シオン、海苔を刻むのは、コンナ感じカナ……」
「おお、上手じゃあないか。イルミは物覚えが早いから本当に助かるよ」
「エヘヘ……」
イルミは顔を赤らめ水色のツーサイドアップをいじっている。うん、可愛い。
「シーちゃん、ネギってある?」
「げっ、ネギが無い! 切らしてたんだ」
「ネギですかー? 庭の畑に生えてますよー」
「マジで? サンキュー、ウンブラ」
なんで庭の畑にネギが生えてんだ? 以前住んでた人が植えてたのか? 僕は庭に出て畑に向かう。
「これか……にしても雑草が凄いなぁ……」
長い間手入れされていない畑は雑草が伸び放題だ。よく見ると、枯れたスイカやらタマネギ、カボチャなどが雑草の隙間から顔を覗かせている。
「……どんな人が、住んでたのかな……」
僕は物思いにふけり、思わずつぶやいた。改めて庭を見渡すと、崩れかけた物置があり、中からスコップやらクワやらが散乱している。
普通、こういうのは家を売り出す際、処分しそうなものだが、幽霊が出る都合上、放置されてしまったのかもしれない。
僕は畑の前で膝をつき、ネギを数本ハサミで切断し持ち帰る。
「シオンく〜ん、おそば、ゆであがったよ〜、いっしょにたべよ〜、ねっ」
「ああ、今行くよー」
ローザに呼ばれ、僕は畑にもう一度目をやり、家の中へと戻ることにした。
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