49話 お家へ帰ろう
次話は23時10分投稿予定です
「それじゃ、一緒にシーちゃんの家に行こうか」
ラクシィは僕の肩からスポッと抜け出し、休憩室の襖を開き、僕たちを先導する。
「そう言えば、交番の前に何か止まったみたいだけど、護送車両か何かなのか?」
「クスッ、シーちゃんは悪いことなんてしてないよ。ま〜、見たら驚くかもだけど」
あ、笑われた……少しネガティヴな発想が滑稽に見えてしまうのかな? もう少し前向きな発想は出来ないものか……。
「わかった! きゅうきゅうしゃだ〜!」
「ン〜、トラック……トカ……?」
イルミとローザも何が停まったかを想像している。確かに大型車両っぽかったが。
「ラクシィさん、お疲れさまです」
「うん、ありがと〜」
お、お巡りさんが敬礼してるぞ……どんだけラクシィの権限凄いんだ……。ちなみにガルドはいないようだ、もう追い返されたのかな? 文句を言いそびれてしまった。そして僕はラクシィと一緒に交番の外に出る。
「おおっ……! これは……!」
僕の目の前には、なんと白い大型のキャンピングカーが停まっていた。
高さは3メートル、長さは7メートルくらいかな。頑丈そうな装甲で強化され、内部には見慣れない機器が確認出来た。おそらく、カスタマイズされた特別仕様の車両なのだと思った。
「キャンピングカーだ!」
実物を見るのは初めてだ……なんだろう、少しワクワクするな。
「うわあ……おおきいね〜!」
「ン……? 中にベッドやキッチンが確認出来るね……モシカシテ、暮らせるのカナ……?」
「クスッ、驚いたかい? これがボクのホワイト号だよ。最新の科学技術でカスタムしたキャンピングカーで、これ1台で色んなことが出来る優れ物なんだ。もちろん長期の生活も可能だよ」
ラクシィは得意げに講釈を始め、自慢したそうにしている。
「す、凄いけど、名前がダサい……」
僕はうっかり口を滑らせてしまう。
「ああ〜、シーちゃん、今ボクのネーミングセンスがダサいって言ったね。ボクの服装のセンスがダサいとも〜!」
ラクシィは僕の手首を掴み、絡んできた。
「し、しまった! つい、うっかり口が滑った! でも、服装がダサいは言ってないし思ってないって! むしろ可愛いと思うんだが」
「え、ホント? ボクのセンスって可愛い? マジで?」
「あ、ああ……」
ラクシィは顔を赤らめ気を良くしている。実際、白とピンクの学生服風の半袖ミニスカートは明るく元気な感じがして可愛いと思う。丈が短すぎるのはどうかと思うが、個人的には好みではある。
ラクシィは手をタッチしてグラマトンを開き、色々確認してるようだ。あれ、地球では普通開けないはずだが、まさか……。
「アレ……? モナ……スキルは地球に持ち込めないはずだけど、ラクシィは持ち込むスキルでも持ってるのカナ……?」
イルミは鋭い疑問をラクシィに投げかける。
「そのとおり、これもボクだけのユニークスキルで、なんとダンジョンで入手したスキルを、そのまま地球で使用することが出来るんだ。デミ・アセンションってスキルだよ」
ラクシィは腰に手を当てて自信満々に胸をはる。
「わあ、すご〜い、わたしたちとおんなじだね」
「そうだよ、そしてこの事実は、ある重要な意味を持っていてね……おっと、帰りながら話そうか、さあ、みんな乗ってよ」
僕たちはラクシィのキャンピングカーに乗り込み、家へ帰ることにした。
車の内部は思ったより動きやすく、快適な造りだった。キッチンやベッドの他にコンピューターやトイレ、風呂なども完備されており、暮らすには不自由ないように見えた。
「ラクシィ、サッキ、意味を持つって言ってたけど、ドウイウ意味なのカナ……?」
イルミは助手席に座る僕とラクシィの間から頭をヌッと出し、会話に加わる。ローザはキッチンでコーヒーメーカーを動かして遊んでいるようだ。
「うん、単体で、しかも人間サイズでこれだけの能力を有しているってことは、本当に凄いことなんだよ」
「ど、どういう風に……?」
僕も気になったので、ラクシィを見つめながら言葉を待つ。
「まず、コストがほとんどかからない、さらに、すぐさま現地に移動でき、狭いところでも簡単に入り込め、危険地帯も何のそので重機を遙かに超えた膂力で活動出来る。非常事態や調査にとても効果的なんだ」
ラクシィは片目をウインクしながら誇らしげに喋り続ける。
「ウンウン……」
「地球には、まだまだ未発見の物質がたくさん眠っていて、その発見にもたくさん貢献出来たつもりなんだ。おかげで新しい技術や装置も開発されて、そのテストも任されてるんだ」
「装置?」
この車も、その一環なのかなと思った。
「プロトタイプの永久発電機、物質製造機、自動修復装置とかがホワイト号に搭載されていてね、今のところ順調に動いてくれてるよ。いや〜、すっごく便利でボクも感動してるんだな〜、これが」
「そ、それは凄いけど、今しれーっと僕の口調を真似しなかった……?」
「クスッ、気のせいじゃないかな〜」
ラクシィはいたずらっ子のような笑みをしながら舌を出す。これは確信犯だな……にしても、さらに賑やかになりそうだなー。ラクシィも話好きのようだし。
そうこうしてるうちに、僕の新しい家が見えてきた。
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